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第370話 またまた焼肉屋


 5時前には全員風呂に入り終えて、お出かけの準備も整った。


「それじゃあ、いこうか」


 みんなが俺の手を取ったところで、転移。


 隣町の商業ビルの横あたりに俺たちは現れ、建物に入ってエレべ―ターで焼き肉屋の階まで上った。年の瀬のせいか、かなり人が多い。


「しまったな、予約しとけばよかった」


「ゼンちゃん、心配無用なのじゃ。個室は空いておるのじゃ」


 自信があるようなのでここはアキナちゃんにお任せだ。


 焼き肉屋に入って店の人に個室を頼んだら、ちゃんと1室空いていた。


 部屋に案内されながら店の中を見たら、結構混んでいた。いつもながらではあるがラッキーだった。


 お酒を飲む俺の向かいにはるかさんとリサが座り、後は適当に席に着いた。


 メニューを見るとアキナちゃんが言っていた通り、ダンジョン牛とダンジョン豚のメニューがあった。ダンジョン牛とダンジョン豚のミノとホルモンはメニューになかった。どちらも心臓と肝臓くらいしか内臓がないはずなので仕方ない。


 肉類の注文はいつものように華ちゃんに任せて、俺はビールだけ注文しておいた。


「はるかさんとリサ、なまでいいかな?」


「はい」と、はるかさん。


「なま?」と、リサ。


「生ビールのことでジョッキに入ったビールな。生ビールと生じゃないビールでどこがどう違うか知らないが、いちおう生らしい」


「はい。わたしもそれで」


「生3つ、お願いします。

 あと、センマイを3人分」


「はい」


 華ちゃん以下はジュースや炭酸水を頼んでいた。


 飲み物が最初にやってきたところで、まずは乾杯だ。


「それでは、オリヴィアのピアノコンクール1位と特別賞受賞をお祝いして、カンパーイ!」


「「カンパーイ!」」


「アハハハハ」「エヘヘヘヘ」「楽しいのじゃー!」


 ビールをごくごく飲みながらみんなの笑顔を見ていると『ぼくは幸せだなぁー』って感じるよ。


 プファ!


 缶ビールだとこうはいかないが、これこそ生のだいご味だ。


 俺は、ビールと一緒に運ばれてきたセンマイを箸で摘まんでカラシ酢味噌に付けて一口。


 ビールにはこれだよ、これ。



 乾杯が終わったらすぐに野菜サラダと一緒に肉が運ばれてきた。俺はダンジョンアニマル系の肉は端からコピーしている。


 ダンジョン牛には霜降りタイプと赤身タイプがあるので、ちゃんと両方のカルビを頼んでいる。まずはカルビで食べ比べだ!


 俺は何も言っていないのだが、リサがどんどん網の上に2種類のカルビを乗っけていってくれた。俺の視線を感じたのだろうか? それともリサはひそかに一心同体のメンバーを目指しているんだろうか?


 華ちゃん以下は、最初に野菜サラダを食べてから肉を食べるようだ。お腹にはその方がいいと聞いたことがある。


 とはいえ、ビールには野菜サラダよりセンマイなので、肉が焼ける間、センマイを摘まんでビールを飲みながら網の上のカルビを睨んで、焼けろ、焼けろと念じていたら、すぐに焼けた。


 まず、ダンジョン牛の霜降りカルビを食べてみた。タレをちょっとつけて口の中に。


 少し脂がしつこいかもしれないが、肉は舌の上でとろけてしまった。極上の大トロは食べたことはないのであくまで想像だが、極上の大トロ並だ。これは、緑の葉っぱでくるんで食べた方がいいな。


「この葉っぱは何て言ったっけ?」


「それは、サンチュだったと思います」と、はるかさん。


「サンチュ。霜降りカルビはこれと一緒に食べた方がいいかも知れませんよ」


 試してみたら、脂っぽさがなくなって、結構食べやすい感じになった。


 次は、赤身のカルビだ。


 その前に、ビールのお替わりだ。


 店員さんを呼んで、


「生ビールお願いします」


「わたしも」


「わたしもお願いします」


「少々お待ちください」


 はるかさんもリサも結構ピッチが速い。華ちゃん以下はまだジュース類を飲み終わっていないようで飲み物の声は上がらなかった。


 火の通ったカルビを摘まんで少しだけタレを付けて、口に入れてみた。こちらはあっさりしているが、もさもさしているわけでもなく、案外肉汁が詰まった感じだ。霜降りと同じように肉が舌の上でとろけるように柔らかかった。


 これはいかん。うますぎる。これは人が食べていいものじゃない。一度食べてしまうと、習慣性があるんじゃないか? こんなのを毎日食べないといけない体になってしまうと、一般家庭なら破産するかもしれない。だがしかーし俺はクレジットカード支払いだから、アイテムボックスの中の1億ちょっとの現金が減ることを心配しないでもいいので、今日はダンジョンアニマル三昧だ!


 カルビを十分堪能したところで、今度は、タンを焼いてもらった。


 ふと気づくと、例のごとく、みんな一心に肉を食べているせいで、肉の焼ける音だけ聞こえてすごく部屋の中が静かだ。


 タンに続いてハツとレバー。


 ビール再度頼んだところで、


「そういえば、アキナちゃん。聞き忘れていたけど、記念式典でアキナ神殿の代表として祝辞を述べたんだろ? どんなこと言ったのか教えてくれよ」


「いや、祝辞を頼まれていたのは確かじゃが、爺に代わってもらったのじゃ。爺に代わってくれと言ったら嬉しそうに二つ返事で引き受けてくれたのじゃ」


 大神官の爺さん、大勢の前で演説することに快感を覚える人種だったんだな。


「代わってくれたのは、ありがたかったのじゃが、話が長かったので、あれならわらわが自分でやっていた方がよほどよかったのじゃ」


「もしアキナちゃんが祝辞を述べていたなら、どんな話をしたんだ?」


「それはお祝いじゃから、当然、おめでとうなのじゃ」


「それから?」


「うん? それだけじゃよ。

 ホールにおった連中は、わらわの声を直接耳にするわけじゃから、それだけでも幸せにむせび泣いたはずなのじゃ」


 確かに一声だろうと女神さまの声を直接聞けるということは、そうそうないことなので、アキナちゃんの言葉ももっともだ。と、思うのはこの焼き肉屋の個室にいる本人を含めた9人だけかも知れない。


「俺たちはアキナちゃんのお言葉をいつも直接聞いているから、相当な幸せ者だということだな」


「その通りなのじゃ。ヒャッヒャッヒャ」



「そういえば、岩永さん」。今日は少し離れたところから華ちゃんが俺に。


「なに?」


「オリヴィアの最終目標のポーランドでの演奏曲なんですが、ショパンのピアノ協奏曲って決まっているんです」


「協奏曲って、後ろに楽団を従えたやつのことだったけ?」


「そうです。

 それで、後ろにオーケストラを従えて何回か練習した方がいいと思うんです」


「そりゃそうだろうな」


「まだ、先ですが、どうしましょうか?」


「日本の中を探せば、適当な楽団があるんじゃないか。その楽団を雇うなりすればいいだけだよ」


「そ、そうでしたね」


 その後も、たわいもない話をしてその日のオリヴィアピアノコンテスト1位、特別賞受賞おめでとう焼肉大会は終了した。部屋を出る前に、いつも通り、全員ヒールポーションを飲んで体調を整えている。


 支払いは、予定通りクレジットカードで支払った。



[あとがき]

『君といつまでも』https://www.youtube.com/watch?v=B6To1-N40LI


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― 新着の感想 ―
[一言] またメンデルスゾーンみたいな贅沢を(笑)
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