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第368話 オリヴィア、ピアノコンクール結果発表


 甘い台湾パイナップルを食べて、しばらくして、


「アキナちゃんの様子を見にいってみようかな。夕方に迎えに行くって言ってるけど、用事が終わればいつ連れ帰ってもいいし」


 俺はアキナちゃんたちの宿のロビーに跳んだ。いつも通り誰にも見とがめられなかった。


 かなり待つことになると思っていたら、アキナちゃんがアキナ神殿の巫女と一緒にロビーに置いてあった椅子に座っていた。


「ゼンちゃん、先ほど式典が終わったところじゃ。ゼンちゃんのことじゃから、わらわをすぐに迎えに来てくれると思って、ここで待っておったのじゃ」


 アキナちゃんと一緒にいた巫女さんが、急いで椅子から立ち上がって、


「アキナさまをよろしくお願いします」と、俺に頭を下げた。


「はい。

 じゃあ、アキナちゃん、帰ろうか」


「先に帰っておるから、爺に伝えておくのじゃ」


「はい。アキナさま」


 アキナちゃんが俺の手を取ったところで、屋敷に転移した。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 一夜明けて。


 ニューワールドでは年末の5連休に入った。今日からはるかさんの学校も休みに入る。学校の休み明けは4日としている。


 今日はオリヴィアのピアノコンクールの結果がwebで発表される日だ。おそらく発表は昼前後だ。これまでは俺が張り付いてスマホを見ていたのだが、今日はアスカ3号に任せているのでちゃんと知らせてくれるはずだ。


 3体というか3人というかアスカたちは寝る間も惜しんで24時間働いている。まさに労働者の鑑だ。そのせいもあって、屋敷のなかにいるのか、マンションの方にいるのかはよく分からない。


 それでもアスカ1号は屋敷と学校の敷地内を巡回していることが多いしアスカ3号はマンションの管理人なのでマンションにいることが多いので比較的発見は容易だが、アスカ2号はどこにいるのか居場所がよく分からない。


 電力に余裕ができたので、学校にケーブルを延ばして、LED照明でも取り付けてくれと、うちの電気屋さんのアスカ2号に言おうと思って探したのだが、屋敷内にもマンションにも見当たらなかった。


「おかしいなー、どこにいったかなー?」


 もしかしたら電気屋さんだから、コアルームの隣りに作った発電所にいっているかもしれないと思って、屋敷とマンションを繋ぐダンジョンの小部屋を通って、拡張した連絡通路にでたら、俺の知らぬ間に発電機室の並びに扉が1つ新しくできていた。


 扉を開けた先はかなり広い部屋で、天井まで高さのある物品棚が壁を巡っていた。部屋の真ん中には作業台らしきものがあり、そこでアスカ2号が何やら作業していた。棚には何だかわからない機械部品のようなものから、巻かれたケーブル、鋼材などが並べられていた。


「マスター、どうしました?」


「発電小屋経由で学校にケーブルを延ばして、LED照明でもつけてくれと言おうと思ってアスカ2号を探していたんだ」


「了解しました。

 ケーブルはケーブル用保護管に通して地面に埋めます。アスカ1号とアスカ3号にも手伝ってもらいます」


「穴を掘るんだったら俺も手伝うぞ。その時は呼んでくれ」


「よろしくお願いします」


「ところで、アスカ2号」


「はい」


「棚の上の物は何だ?」


「物品の製造をコアに依頼する時の目安にするための試料です。3号に頼んでネット注文して取り寄せました」


 なるほど。ここにある棚は俺の錬金工房で言えば『複製ボックス』にあたるわけだな。ここにある物をコアが複製したり、変形させたりするんだろう。よく考えたものだ。


 俺とちがって、コアが作るわけだから材料はほぼ無尽蔵だろうし羨ましいぞ。


「俺は屋敷の居間にいるからな」


「はい。

 それではわたしは、現場を測量してきます」


 アスカ2号も俺と一緒に屋敷の玄関ホールに戻り、そこで別れて俺は居間に、アスカ2号は測量に玄関から外に出ていった。


 アスカ2号は手ぶらだったし、たった一人で出ていったのだが、超高性能美少女ゴーレムだから長さくらいなら歩くだけでロボットみたいに正確に測ることができるんだろう。


 俺が靴を脱いでコタツに入ろうとしていたら、アスカ2号がもう帰ってきた。早い。


「マスター、測量終わりましたので、ケーブル類と保護管を揃え、配電盤などを製作します。

 マスター、昼食のあとお呼びしますので、ケーブル埋設用の穴掘りをお願いします。

 遅くても明日の朝までには、全館照明を付け終えます」


「LED照明なんかもう用意しているのか?」


「まだですが、ひな形はありますので、コアに依頼して必要数揃えます」


 頼もしい。


「じゃあ、よろしくな」


「はい」


 アスカ2号が居間を出ていったところで、俺はオリヴィアの結果が気になってマンションにいってアスカ3号に結果発表はまだか聞いてくることにした。居間でピアノをいつも弾いている当のオリヴィアは珍しくどこにいるのか見当たらなかった。華ちゃんも見えないので、華ちゃんの部屋で一緒になってパソコンを見ながら結果発表を待っているのかもしれない。


 コタツから出て、靴を履いて居間を出て、玄関ホールのゆらぎからダンジョン経由でマンションに。マンションの玄関で靴を脱いでマンションの居間に回ったら、アスカ3号がパソコンをみていた。


「ピアノコンクールの結果はまだか?」


「発表はまだのようです」


「早いところ発表すればいいものを、もったいぶるよな」


「……」


 俺の無意味な愚痴に返答のしようはないものな。


「俺は居間にいるから、結果が分かったら知らせてくれ」


「はい、マスター」


「そういえば、アスカ2号に隣の学校まで電線を延ばして学校の中に照明をつけてくれと頼んでるから、そのあとアスカ2号を手伝ってやってくれ」


「はい、マスター」


 俺はアスカ3号に後を託して屋敷の居間に戻りコタツに入ってじっとしていた。


 何だか落ち着かない。


 ミカンを入れているカゴの中身が少なくなっていたので、カゴからミカンを取り出してからミカンを補充し、取り出したミカンを上に乗っけておいた。


 時刻はまだ11時。昼までに発表ないのかなー。


 暇だなー。


 俺のヒマヒマオーラをブラウさんが見たら、何か言われるかもしれないが、見られる可能性はゼロなので問題なし。そういえばシュレーディンガーの猫は、箱の中で何を思っているんだろうね? 俺みたいにボーっとして、箱の蓋が開くのを待っているのだろうか?


 俺がくだらないことを考えていたら、華ちゃんとオリヴィアが居間に入ってきた。そしてその後に続いて子どもたちがぞろぞろと居間に入ってきた。どうもみんなで結果を待っていたようだ。そして最後にアスカ3号もやってきた。


「岩永さん、やりました」


「お父さん、一般部門1位でした。それと特別賞を取りました」


「やったじゃないか!」


 状況を察したのかアスカ3号は何も言わず一礼して居間を出ていった。


「1位は分かるけど特別賞? そんな賞あったっけ?」


「特別素晴らしい演奏だったため、審査員が賞を提案してオリヴィアのために作った賞だったみたいです」


「じゃあ、1位以上ってことなのか。凄いな。

 それで、1位や特別賞を取ってあと何か貰えるのかな?」


「一般部門の1位は賞状がもらえるだけです。特別賞についても何も記載がなかったので、賞状だけと思います。でも、これで箔が付いたことは確かです。

 まだ第一歩です。

 目標はポーランドで開かれるピアノコンクール1位です」


「おお、それいいな。

 何にせよ今日はお祝いだ。

 今日の夕食は寿司にしようかな」


「わらわは焼き肉が良いのじゃ。わらわが焼肉を食べれば、オリヴィアが何とかというピアノコンクールに出て1位になるのは確定なのじゃ」


 アキナちゃんの意見ばかり聞くわけにもいかないので、いちおうみんなに焼肉でいいか確かめた。


「焼き肉の他に食べたいものがある人?」


 はるかさんとリサはこの場にいないが、意見が出なかったので、


「じゃあ、いつもの焼き肉屋だな」


「「わーい!」」


「これで、オリヴィアはポーランドにいって1位確定だ」


「その通りなのじゃ」


 アキナちゃんのニマニマ笑いを見ているとその気になるよな。


 しっかし、叙〇苑がいつもの焼き肉屋とは、われながらリッチになったものだ。今回の支払いはクレジットカードでしちゃお。


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― 新着の感想 ―
[一言] 絵とかぽっとでの新人が優勝とかは違和感ないのですが、才能+長い間の努力の人達が戦う音楽の場で一般の部でやり始めてすぐ優勝というのはちょっと違和感を感じました。あと一味才能以外の理由が欲しい。…
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