第352話 アスカズ、DIY
翌日午前。
ホームセンターから石油ファンヒーターと石油タンクがマンションに届いた。と、10時過ぎにアスカ3号に知らせてもらった俺は、さっそくマンションに移動し、玄関の横に置かれた荷物をアイテムボックスに収納した。
「アスカ3号、これから今日届いた荷物をセットしていくから手伝ってくれ」
「はい、マスター」
手伝ってくれも何もほとんどアスカ3号が作業するのだが、俺とアスカ3号にはれっきとした主従関係があるからな。
まずは灯油タンクだ。200リットルのタンクなので結構大きい。置き場所はプロパンガス置き場の隣りにした。
そこにタンクを出して、包装を取り外したら図面付きの説明書が出てきた。連れてきたアスカ3号がその説明書を読んで、
「マスター、地面が柔らかいため安定性が悪そうです。
添付の図面にあるようにコンクリートで灯油が漏れ出した時のためのマスを作ってその上にタンクを乗せて、アンカーボルトで留めた方が良くないですか?」
確かに。
「となると、モルタルとボルトを買ってきた方がいいな。その前に地面を少し固めておこう。
アスカ3号、華ちゃんが居間にいると思うから呼んできてくれ」
「はい、マスター」
1分ほどで華ちゃんがやってきた。
「華ちゃん、ここにそこの石油タンクを置こうと思っているんだけど、地面を奥行き1メートル×横1.5メートルで固めてくれないか?」
「了解。グラヴィティー」
あっという間に転圧が済んでしまった。
「サンキュー」
「どういたしまして」
華ちゃんはすぐに屋敷の中に戻っていった。オリヴィアのピアノの追い込みだな。
華ちゃんのおかげで簡単に転圧が終わったので、
「じゃあ、アスカ3号、一緒に店にいって資材を買ってこよう」
アスカ3号を連れて俺は昨日のホームセンターに跳んだ。
そこでカートを押して、必要なものをアスカ3号がカートに入れていく。
アスカ3号は砂利と砂とセメント、20センチほどのボルトとそれ用のナット。コンクリートかき混ぜ用のプラスチックの平箱、型板用のベニヤ板と角材と釘、それに小型のスコップとコテをカートに入れた。どれもコピーするので量はそれほどでもない。
精算して、荷物を載せたままのカートを押して駐車場に向かうふりをして、荷物をアイテムボックスに収納していき、空になったカートを返してから、アスカ3号を連れてタンクの脇に転移した。
俺はアイテムボックスから、コピーした砂利袋と砂袋とセメント袋を多めに積んでおき、他の工具などを一揃い出したあと、バケツに水を入れて出しておいた。
アスカ3号はまず華ちゃんが転圧してできた窪みに砂利を敷き、それから、プラスチックの平箱の上に砂利と砂とセメントを袋から空けて、バケツの水も平箱に入れ、小型スコップでコンクリートをこね始めた。
そしたら巡回中の自宅警備員、アスカ1号が現れたので、設置図面を見せて、のこぎりを渡して木枠を作らせることにした。のこぎりは以前そのうち使うかもと思ってホームセンターで買っていたものだ。
「マスター、釘と杭を何本か打って木枠を固定しますので、釘と杭になるものをお願いします」
と、アスカ1号に言われたので、先ほど買った角材を一度コピーして、片側を尖らせた長さ50センチの簡単な杭を10本ほど作って釘とハンマーと一緒に渡しておいた。
ハンマーは普通の金づちをコピーして杭打ち用に大型化しただけのものなので、少し持ちにくいかもしれないが、アスカ1号は黙って受け取り、図面を見ながら杭を打ち、のこぎりで板を切って枠組みを作った。長さと鉛直、直角は目で見ただけで正確に測れるようだ。
「マスター、枠ができ上がりました」
アスカ1号の作業が終わったところで、こね上げたコンクリートをアスカ3号が砂利の上に流し込んでいった。一回のコンクリートでは足りなかったので、もう一度アスカ3号がコンクリートを練り始めた。
3分ほどでコンクリートは練り上がったので、再度コンクリートを流し込んだ。アスカ3号がコンクリートを流し込んでいるあいだアスカ1号は杭を持ってそれをコンクリートの中に突っ込んでいた。
「アスカ1号、何しているんだ?」
「杭を振動させて、コンクリートから気泡を除いていました」
どうしてアスカ1号がそういったことを知っているのか謎だが、まあ、超高性能美少女ゴーレムなのだからその程度の知識は言語学習時にオマケで学習したのかもしれない。
2回の練りでもコンクリートが足らなかったので、3回目の練りをアスカ3号が始めた。今回の量はこれまでより少ないようにみえる。
これは3分弱で練り上がり、型枠の中にもちゃんとコンクリートが一杯になり、平箱の中は空になった。
その後、アスカ3号がコテできれいに表面を均して、所定の位置にボルトを突き刺した。これで作業は終了した。
余った資材や工具はちゃんと収納している。コンクリートを練った平箱はセメントなどで汚れているので素材ボックスに入れている。平箱自身は使う前にちゃんとコピーしているので新品が1つ残っている。
今回のコンクリートには速乾セメントを使ったのだが、24時間は置いた方がいいそうなのでここでの作業を終えた俺たちは屋敷に入り、石油ファンヒーターの設置を始めた。
エアコンのある部屋は不要なので、2階は俺の部屋を除いて7つ。屋根裏部屋は広いので4つ置くことにした。
俺は石油ファンヒーターを箱ごとコピーして全部で11個作って各部屋に置いていった。その時壁にパイプ用の孔を空けている。アスカ1号とアスカ3号で石油ファンヒーターを箱から出して組み立てるわけだが、ついでにアイテムボックスに待機中のアスカ2号も出してやって3体で作業にあたらせてやった。
11カ所の孔空けは10分もかからず終わったのだが、石油ファンヒーターの取り付け作業も1カ所10分ほどで終わった関係で、1時間ほどで終了してしまった。
「アスカ1号、2号、3号、ご苦労さま」
「「はい、マスター」」
3つ子の美少女が一斉に答えると壮観だ。余った部品や段ボール箱などは全部俺の素材ボックスに突っ込んでおいた。
アスカたちを使えばたいていのことはDIYでこなせるな。ゴーレム発電機ができ上ったら何台か貰ってコアルームに設置して、そこからケーブルを引いてやろう。電気工事はアスカたちにやらせればいいからな。アスカたちが手に入ったことが俺がダンジョンマスターになったことの一番の収穫かもしれない。
アスカ2号もアイテムボックスの中ではかわいそうだし、有効利用だ。
「アスカ2号、お前に新しい任務を追加する」
「はい」
「電気工事についてとりあえず勉強するように。
たいていのことはネットで調べればわかるから、その辺はアスカ3号に聞いてくれ」
「はい」
「必要なら本を買ってもいいし、他にも必要なものがあればどんどん買ってくれ。
代金はアスカ3号にお金を管理させるからアスカ3号からもらってくれ。
アスカ3号、そういうことだからよろしくな」
「はい、マスター」
アスカ3号に追加で100万円の束を渡しておいた。
「アスカ1号も必要と判断したものがあれば、アスカ3号からお金を支給してもらって購入するように」
「了解」
「アスカ3号はお金が足りなくなるようなら早めに俺に報告しろよ」
「はい、マスター」
「ほかに何かあるかな?」
「マスター」とアスカ1号。
「何だ?」
「警備範囲ですが、隣の学校も含めて警備しましょうか?」
「ああ、そうだな。そうしてくれ」
「了解しました」
自分でちゃんと考えられるところは、さすがは超高性能美少女ゴーレムといったところだ。これならアキナちゃんの言うように10体くらいいてもいいかもしれない。




