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第302話 回り階段1


 うごめく触手の塊を斃してその日のダンジョン・コア探索ミッションを終了した俺たちは屋敷に帰った。


 いつもより少し遅くなったので俺は防具を脱いだらすぐに風呂の準備をして、そのまま風呂に入った。



 湯舟の中で、今日の最大のイベントだった触手の塊のことを考えた。


『俺は、ああいった力技を使ったが、普通あんなのが出てきたら斃せないよな。干からびた太古の神さまになられても嫌だと思って太陽に飛ばすのは控えたが、もしまた出てきたら、王水攻撃だと面倒だから、贅沢は言わずに太陽に飛ばしてやろう』


 触手の塊はそれくらいにして、次に大空洞のことを考えた。


『丸三日、一日あたり6時間ほどゴーレムで走っていたわけだから、大空洞に出た階段前から350キロは進んでいる。途中湖などもあった関係で直線ではないが、ピラミッドの位置が大空洞の真ん中だとすると、大空洞の直径は700キロほどになる。700×700×3.14÷4、えーと、50万弱×3.14÷4だから、150÷4、……、38万平方キロくらいか。日本の面積は37とか38万平方キロだったハズ。いいのか?

 日本のダンジョンを下に潜っていくと、日本と同じ広さの土地が広がっているかもしれないって来週防衛省で発表したらみんな魂消るだろうなー。

 明日、ピラミッドの中に入ってそれからだな。触手の塊はコアを守る最終ボスとして力不足だったが、もしかしたら、ピラミッドの中心にダンジョン・コアがあるかもしれないし、明日はワクワクだ』



 風呂の中であまりゆっくりしていると夕食の時間が遅くなってしまうので、俺は頭は洗わず体だけ洗って、もう一度湯舟に浸かったあとお湯を張り直して、風呂から出た。


 子どもたちも俺に続いて風呂に入り、すぐに夕食になった。


「「いただきます」」


 この日のメニューは、メインは久しぶりに白身の肉のステーキだった。ステーキにかけられたソースはこげ茶色のソースだ。何のお肉かは聞いていないけれど、牛肉ではないようだ。名まえをあえて知る必要はないからな。それに、カニのサラダとカボチャのスープ。そして白飯だった。


「リサちゃん、この肉はずいぶん柔らかくておいしいが何の肉なのじゃ?」


「それは、ダンジョン・ボアです。少しあっさりしているのでソースは濃い目のワインソースにしました」


「ダンジョン・ボア? ケイブ・ボアーじゃなくて?」


「ケイブ・ボアーはイノシシに似たモンスターですが、ダンジョン・ボアは大蛇に似たモンスターです」


 その説明で俺と華ちゃんとはるかさんのナイフとフォークを持つ手が一瞬止まったが、すぐに再起動した。モンスターにはそれっぽい名まえは付いているが、生物的に何の関連もないので気にする必要はない。ダンジョン・ミミズであってもミミズとは形が似ているだけでミミズではないのだ。俺は絶対食べないけどな。


「リサちゃん、ステーキの横に添えられている長細い野菜?はなんなのじゃ? わらわは初めて見たのじゃが」


「それは、野菜じゃなくてダンジョン・ミミズ。味は薄いんだけど歯ごたえがいいから付け合わせに入れてみたの」


「ほう。なかなか」。二、三匹?アキナちゃんがフォークに突き刺してむしゃむしゃ食べた。


 今度もはるかさんと華ちゃんのフォークを持つ手が止まった。俺の手も当然止まっている。


 他の子たちもアキナちゃんを真似てフォークにダンジョン・ミミズを突き刺して口に運んだ。


 気にしたら負けだ。さっきは食べないと言ったが、偏食やお残しは教育上良くないので俺は目を瞑ってダンジョン・ミミズにフォークを突き刺して口に運んだ。


 ダンジョン・ミミズは確かに歯ごたえはよかった。


 子どもたちはワイワイと今日の出来事を話しながら食事していたが、俺と華ちゃんとはるかさんはあまり話すこともなく、黙々と食事を続け、3人とも完食だけはできた。


「ごちそうさまでした」


 食後のデザートはあっさり系が食べたくてアイスではなく桃のシャーベットにしておいた。




 翌日。


 一心同体の4人+ピョンちゃんで昨日のピラミッド前に跳んだ。


 ピラミッドの前に立ったところ、ピラミッドの門は開いたままだった。


 門の外から中を覗くと、昨日と同じで、金色の通路の突き当りに金色の扉が付いているのが見えた。


 華ちゃんがライトを灯し、いつもの手順で通路に向けて魔法を発動させたが、珍しく通路にも突き当りの扉にも異常はなかった。


 俺を先頭に、ピョンちゃんを肩に乗せた華ちゃん、キリア、そしてアキナちゃんの順で通路を金色の扉のある突き当りまで進んでいった。


「開けるぞ」


 扉に手をかけて、力を込めて扉を押し開けたら、扉は拍子抜けするくらい軽く開いた。


 扉の向こうは直径30メートルほどの大穴が空いていた。扉のすぐ先は大穴の周りを下っていく回り階段の踊り場になっていた。


 大穴の壁もその踊り場も階段も全部金色だ。


 踊り場にも階段にも手すりが付いていたのでラッキーだった。手すりが付いていなければ高所恐怖症の俺は足がすくんで動けなくなってしまうところだった。


 手すりをしっかりつかんだ俺は、勇気を振り絞って大穴の下をのぞいたところ、はるか下の方に穴の底のようなものが見えたが、本当にそこが穴の底なのかははっきりしない。その気になれば転移してそこまでいけそうだが、果たしてそこがしっかりした床なのか地面なのか分からないので冒険は控えて、地道に階段を下っていくことにした。


「下りていこう」


 ピョンちゃんは華ちゃんの右肩に乗っかっている。


 これまでの順番通り一列になって俺たちは回り階段を下りていった。もちろん華ちゃんがところどころでデテクトアノマリーをかけている。幸い今のところ異常は見つかっていない。


「この階段は相当長いぞ」


「この縦穴も底がはっきり見えませんでしたから、何段あるか見当も尽きませんね。

 適当なところでわたしがスタミナかけますね」


「アキナちゃんには華ちゃんがスタミナの魔法をかけるタイミングでスタミナポーションを渡すから」


「よろしく頼むのじゃ」



 階段を下りながら華ちゃんが自分と俺とキリアにスタミナをかけたところで、俺はアキナちゃんにスタミナポーションを渡した。


「華ちゃん、サンキュウ。何段くらい下りたかな?」


「今150段です」


 150段と言えばずいぶん下に下りたハズだが、上を見上げたら、俺たちが立っている位置のちょうど反対側の壁に踊り場が見えた。1段20センチとしてまだ30メートルしか下っていない。


 下を見ると上の踊り場の真下あたりに踊り場が見えた。踊り場の壁側には扉が付いていた。あと半周するとその踊り場だから、そこまでもう150段あるということになる。上の踊り場から下の踊り場まで300段。どこかで聞いた階段の数だ。


 よく見ると、2つ目の踊り場の真下、回り階段が1周したところにも踊り場があり、その下にも同じように踊り場が見えた。






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