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第301話 ピラミッド、うごめく触手の塊


 第1ダンジョンの第20階層、大空洞に到着し、次の階層への階段を目指して、大空洞の中心方向に移動して3日目。


 そろそろ前進を止めて屋敷に帰ろうというところで、前方に金色のピラミッドが見えてきた。


「ピラミッドだ。

 ダンジョンの入り口のピラミッドに比べればよほどこっちの方がデカいぞ」


 ゴーレム白馬に乗って先頭を走っている俺は前を向いたまま、かなりの大声でみんなに告げた。


「ピラミッドの近くまでいって、入り口がないかだけ調べてから帰ろう」


 俺たちは、ゴーレムを駆ってピラミッドの正面までやってきた。


 ピラミッドは一辺が100メートルほど。高さは50メートルくらい。


 俺たちが近づいたピラミッドの底辺の中央にへこみがあり、金色に輝く両開きの大きな門扉が付いた門らしきものがあった。他にも入り口があるかもしれないので、一周してみたが、そこしか入り口はなかった。


 俺たちは門の前でゴーレムから降りて、門をよく眺めてみた。門扉1枚の大きさは高さ5メートル、幅3メートル。扉を開けば6メートルほどの幅になる。


 取っ手が付いていないので押し開く扉なのだろう。そう思って押してみたが、俺の力などではびくともしなかった。


「だめだ。びくともしない」


「お父さん、ゴーレムに押させてみたらどうでしょう?」


「その手があったな。やってみよう」


 アイテムボックスからフィギュアゴーレム1型を取り出して、門の前の地面に投げてやったら、フィギュアは青い光の中メタルゴーレム1型に戻った。


「メタルゴーレム1型、そこの扉を押し開けてくれ」


 俺の命令を聞いたメタルゴーレム1型は、金色の大扉の前に立って体重をかけて両手で押したが、扉はびくともしなかった。メタルゴーレム1型は腰を落としてさらに力を加えたが、やはり扉はびくともしなかった。


「エレメア」


 ゴーレムでの力押しは諦めメタルゴーレム1型をフィギュアに戻してアイテムボックスに回収しておいた。


「見た感じ鍵穴はないようですねー」


「いずれにせよ、この大扉を開くためには、何かアイテムが必要そうだな。しっかし、この大空洞の中から何だかわからないアイテムを探すとなると大変だぞ」


「この階層にくる前に手に入れたのは、角笛と砂時計じゃったな。

 砂時計を使ったところで自分が速く動けるようになるだけじゃから、角笛を吹いてみてはどうじゃ?」


「試してみてもいいが、モンスターが集まってこないかな?」


「モンスターはこの階層にはいないようじゃし、もし集まってきても、華ちゃんが蹴散らしてくれるじゃろ?」


「じゃあ、華ちゃん、キリア、モンスターが現れるかも知れないから警戒だけはしておいてくれ」


「「はい」」


 俺はアイテムボックスから如意棒を左手に、角笛を右手に取り出して、


 ブッ、ブーー。


 角笛の音が鳴り響いた。


 何も起こらないまま、1分ほど経った。やっぱりダメだったか。


 と、思ったのだが、目の前の金色の二枚の扉が手前に向けて動き始めた。押し開く扉ではなく引いて開く扉だったようだ。とは言っても、扉には取っ手などついていないのでどうしようもなかっただろう。


 目の前の扉がこっちに向かって開いてきて、中の様子が少し見えるようになった。


「中に何かいる。

 みんな少し下がろう」


 門の前から20メートルほど後ろに下がって、扉の中を注意して見ると、中から何かが出ようとして扉を押し開いている。そいつの形状はまだわからないが外から見える部分の色は真っ黒だった。


 俺は右手に持っていた角笛をアイテムボックスにしまって、両手で如意棒を構え、何かがピラミッドの中から外に出てくるのを待った。


 扉の隙間が開いていき、その隙間から真っ黒で気味の悪い何かが何本ものたくり出てきた。


「触手だ! 華ちゃん、頼む!」


「はい。ファイヤーアロー!」


 華ちゃんの右手から白い光線が放たれた。その光線が当たった触手はちぎれ飛んでいった。地面に落っこちた触手の破片は気味の悪いことにしばらくのたうちながら、扉の方に移動していき、そのうち他の触手に吸収された。


 扉が3分の2ほど開いたところで、真っ黒い触手の塊が扉を押し広げながらゆっくり門から現れた。


 そしていきなり、俺たちの方に向かって4本の触手を伸ばしてきた。


 感覚的にそれほどのスピードがなかったので俺は如意棒で4本とも叩き落としてやったら、触手はするすると元に戻っていった。


 触手を俺が相手にしている間に、後ろから華ちゃんの声が響いた。


「グラヴィティー!」


 華ちゃんの重力魔法はおそらく最大限で発動されたのだろうが、触手の塊は幾分縦に潰れた感じがしたが、動きを止めることなく触手を動かしながら少しずつ俺たちの方に近づいてきている。


 触手の塊が近づいてくる速さに合わせて俺たちは後退していく。


「グラヴィティーノヴァ!」


 グラビテーノバは、重力魔法と超強力ファイヤーボールの複合魔法だ。華ちゃんのその声と一緒に、触手の塊を中心とした真っ白に輝く球が一瞬だけでき上った。


 光の消えた後には黒い塊が地面の上に潰れて小山になっていた。


「やったか!?」


 黒い小山はゆっくりと丸く固まっていき、塊のいたるところからうごめく触手が生えてきた。


「だめでした」


「再生力が強すぎる。

 太陽送りもいいけど、こんなのが宇宙空間に浮いていたらそれこそ太古の神さま認定されかねないから、最終手段としてとっておこう。

 ならば、再生できないように王水で溶かしてやれ。

 王水攻撃を掛けるから、みんなガスを吸わないよう後退しよう。俺の手を取ってくれ」


 俺は3人とピョンちゃんを伴って200メートルほど後方に転移して、そこから王水シャワーを触手の塊にかけてやった。


 1分ほど王水シャワーを降らせたあと、


「華ちゃん、俺たちの方にガスがこないように、ドライヤー魔法か何かでガスを吹き飛ばしてくれ」


「はい。ドライヤー」


 華ちゃんの右手から結構な風がピラミッドに向かって吹き始めた。これなら俺たちがガスを吸うことはないだろう。



 遠くから見ていた感じだと、小さくなっていったように見えたのだが。5分ほど待って、触手の塊がどうなったかみんなで歩いて近づいていった。


 ドライヤー魔法でガスを吹き飛ばしながら進んでいったら、ピラミッドの門の手前に、黒いタールの池ができていた。池からはうっすらと湯気が立ち上っていたがドライヤーの風で吹き飛ばされた。


「お父さん、池の中で何かうごめいています」


 タールの池の中をよく見ると何かがうごめいていた。少しずつ動きが遅くなって、そのうち動かなくなった。


 そんなところに変なものを放置していると何が起こるか分からないので、真っ黒いタールはアイテムボックスに収納しておいた。これで一安心だ。


 1分ほど華ちゃんがドライヤー魔法でガスを吹き飛ばしたところで、わずかに残っていた化学臭もなくなった。


「今日はもういい時間だからここまでにしよう。

 その前に、中がどんな具合か少し覗いてみてからな」


 大扉の外からピラミッドの中をのぞくと、中はいつものダンジョンと同じように薄暗かったが真っ暗ではなく、左右の壁、床に天井、全て金色の通路が30メートルほど続いていて、その突き当りに金色の扉が付いているのが見えた。


「突き当りの扉の先に何があるのか楽しみだな」


「なんなのかな?」「宝物庫じゃないかな」「明日が楽しみなのじゃ」





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