第287話 まとめ
イワナガ運送の宿舎の第2棟も第10階層の冒険者用簡易宿舎も、少しずつではあるが順調にでき上っていった。
冒険者用簡易宿舎については、もう少し形ができ上ったところで図面と一緒にイオナに見せて、宣伝用ポスターを描いてもらうことになっている。これは金貨20枚でエヴァがイオナに発注したものだ。ここのところ、イオナの肖像画の相場は縦横60センチ×50センチくらいで金貨50枚らしいので、エヴァがイオナに金貨50枚を提示したところ、イオナがお金は要らないと言ったため、それではということで、金貨20枚に落ち着いた経緯がある。
現在、イオナは俺たち一心同体が白馬に乗って颯爽と楽園を駆けている壁画を神殿の大ホールの壁に描いている。白馬に乗っている姿に差し替えてもらうことを失念して危うくゴーレム白馬に跨っている姿になるところだったが、紙に描いた下絵を見せてもらった時に気づき、修正してもらった。
アワビの踊り食いの『いつもの晩餐』については、実際にアキナちゃんがアワビの踊り食いを食べてからということになっている。
防衛省との定例会議に出て聞いたのだが、第1、第2、第3ダンジョンの第1階層のうち、最も探索の進んだ第3ダンジョンで、探査されて地図に記載された洞窟の総延長が400キロを超えたそうだ。いまだに探査が続けられているという。第1、第2ダンジョンも同様で、第1階層が延々と広がっているらしい。
俺たちのダンジョンについては、延べ何キロ探索したのかは分からないが、第1階層の探索は依然として先は見えない。
これまで見つけていたアイテムも合わせて、アイテムは、
フルフェイスヘルメット×1
金属製ブーツ×1
ダガーナイフ×1
長剣×2
短剣×1
メイス×3
ハンマー×1
杖×1
籠手×2
弓用籠手×1
短弓×2
長弓×1
タワーシールド×1
スキルブック
体術×1
弓術×1
アイテムボックス×1->0(華ちゃん)
剣術×2->0(キリア)
杖術×1->0(俺)
そのほかに金貨多数だ。大金貨は見つかっていないし、宝物庫も見つかっていない。
神殿の鑑定球でなくてもスキルのレベルは俺の人物鑑定でできるのでスキルブックを折ったところで鑑定している。でき上がりとして、今の俺たちのスキルレベルは、
俺、
職業:錬金術師、転移術師
錬金術LvMax、アイテムボックスLvMax、転移術LvMax、杖術LvMax(Lv3からLv4)、人物鑑定、第2職業選択、オートマッピング、両手武器Lv4
華ちゃん、
魔術Lv6、錬金術Lv1、鑑定Lv1、片手武器Lv1、打撃武器Lv2、アイテムボックスLv1
俺はアイテムボックススキルを一気にレベルマックスまで上げてしまったので、アイテムボックスLv1がどの程度の物なのか分からなかったのだが、華ちゃんが試したところ、手で触った物をアイテムボックスに収納でき、容量的にはおそらく1立方メートルではないかとのことだった。重さについては制限があるのかもしれないが、今のところ分からないそうだった。アイテムボックスからの排出は、足元や手元に排出できるということだった。華ちゃんのアイテムボックスの容量を多少食うことになるが、もしもの時のため、かなり高級なヒールポーションを10本ほど収納してもらっている。
キリア、
剣術Lv3(Lv1から)、斬撃武器Lv3、盾術Lv1
キリアの剣術レベルのLv3は勇者と同じ剣聖クラス。剣術スキルのマックスも俺の杖術と同じLv4の可能性が高いので、キリアは斬撃武器Lv3と相まって、剣ではおそらく第一人者になっているだろう。
なお、アキナちゃんはさすがに神さまの生まれ変わりらしく俺の人物鑑定では全く鑑定できない。
これとは別に、大神官の許可を得て鑑定球のコピーを試したが、コピーできなかった。世の中世知辛い。
ダンジョンの石室の内で宝箱から見つけた杖術のスキルブックを折って杖術Lvマックスとなった俺は、休憩中、華ちゃんたちパーティーメンバーに如意棒を振ってみせたのだが、キリアでさえ如意棒の先端の動きとなると目で追えないと言っていた。
俺がその気になれば、如意棒の先をどんな小さなもの、高速で動く物も捉えることができるような気がしたので、試しにキリアに小石を渡して俺に向けて投げてもらい、どの程度俺の実力が上がったのか試してみることにした。
キリアとの距離を7メートルほどとって、
「それじゃあ、キリア、その辺りから投げてくれ」
「お父さん、いきます」
シュッ! と、音がして俺に向かって小石が飛んできたが、簡単に弾くことができた。
「キリア、もう一度」
「はい」
今度も簡単に弾くことができた。
調子に乗った俺は、華ちゃんに、
「華ちゃん、俺に向かって一番軽いファイアーアローを撃ってみてくれないか?」と、頼んでみた。
「そんなことして、大丈夫ですか?」
「防具もきっちり着てるから大丈夫だろう。エリクシールもあるしな。
さっきのキリアと同じで7メートルくらい離れたところから撃ってくれ」
7メートルほど離れたところで、華ちゃんが右手を軽く前に出し、
「じゃあ、いきますよ。ファイアーアロー」
華ちゃんの右手から橙色の光の矢が俺に向かって放たれた。と、思ったら俺の腹の辺りに命中していた。全く反応できなかった。おかしい。ただ、俺の漆黒の革鎧は華ちゃんのファイアーアローを受けてもなんともなかった。こっちは嬉しい。
「華ちゃんのファイアーアローはまるでレーザー光線だな。全く反応できなかった」
「でも、岩永さんの鎧もなんともなかったところは、相当強化されてるってことですよね」
「今まで試してなかったから気付かなかったけど、そこらの魔法の鎧なんかよりよほど丈夫みたいだな。
これから先、魔法の鎧を見つけても乗り換える必要はなさそうだ」
「そうですね。真っ黒なうえに艶まで出てきたから、見た目はエナメルですものね」
「確かに。磨かなくてもテカテカのところがいいよな。
アキナちゃんの鎧は真っ白のままでそれはそれでカッコいいけど、全く黒ずんでいないところを見ると、その鎧はそれなりの魔法の鎧なんだろ?」
「爺によると、これを着ていればケガをしても少しずつ治っていくそうな」
「なるほど、ヒールの魔法が自動で発動しているんだな。かなり優秀な魔法の革鎧だ」
「ゼンちゃんがいる以上あまり意味はないのじゃがな」
「そうかもしれないが、俺だって何かあるかもしれないからな」
「わらわがいる限り、そんなことは絶対ないのじゃ」
「俺もそうあってほしいけどな」




