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第286話 第10階層宿舎。


 イワナガ運送のメタルゴーレム列車は好評で、少しずつ利用者が増えていった。


 そのため、3両編成から後ろに1両付け加え、4両編成にして、1列車で12マスとなっている。



 第10階層に水場があれば、冒険者用の簡易宿舎を作りたかったが、あいにく水場はない。外から持ち込むことも可能だが、ゴーレムはダンジョン内限定なのでダンジョン外作業が膨大になる。それで結局断念している。



「お父さん、残念でしたね。」と、エヴァ。


「そうだな」


「ダンジョンの中に井戸があればよかったのに」


「ダンジョンに孔を掘っていったら水が湧くかな? 水が湧くくらいなら、下の階層が水浸しになるはずだから湧くはずないか。

 とはいえ、楽園には泉があるし、その下の階層で水がしたたり落ちているわけでもないところを見ると、上の階層と下の階層は階段とか落とし穴では繋がっているが、直接の関係はないのかもしれないぞ。たかだか50段、高さ的には10メートルくらいしか下りていないのに次の階層だものな。

 第10階層の仕事場はこの格好でいっても危なくないから、このままいって試しに掘ってみよう」



 ということで、俺はエヴァを連れて北のダンジョンの第10階層に跳んだ。


 いつも、それなりではない(・・)格好で現れるので、作業していたイワナガ運送の3人も気にした様子はなかった。列車の出発を待つ冒険者たちは俺たちの方を見ていたが、俺が誰だか認識した後は気にしても仕方ないと無視してくれた。



「邪魔にならないところで、試してみよう。

 直径10センチで10メートルほど床面ゆかめんの岩を収納だ」


 もちろん簡単に穴が空いた。上から穴の中を見たが暗くて何も見えなかった。以前ホームセンターでハンドライトを買っていたので、それを使って穴の底に向かって光を当てたら、光が水面で反射していた。水面の位置は今のところ8メートルくらい。少しずつ水位が上がっている。


「エヴァ、水が湧いてきたみたいだ」


 俺がライトで照らす穴をエヴァが覗き込んだ。


「ほんとだ。水が見える。

 お父さんやりましたね」


 しばらくして覗いたら、水面は上から5メートルほどの位置まで上がってきてそこで落ち着いた。


「水が湧いたのはラッキーだが、使った水を流すところが必要だぞ」


「そうですね。

 別の場所に穴を掘ってそこに流し込めば、使った水は入っていかないかな?」


「どうだろう? 試してみるか」


「どうやって?」


「水は沢山アイテムボックスに入っているから、新しく穴を空けてそこに水を入れていくんだ。沁み込まなければ溢れるし、沁み込めばしめたもんだ。

 排水の穴と飲料水の穴が近いとマズいから、ある程度離して2本目の穴を作るか。今はテストだから適当でいいけどな」


 最初の穴から10メートルほど離れたところに俺はさっきと同じ直径10センチ、深さ10メートルほどの穴を作った。できた穴の中にアイテムボックスに溜めていた水を注いでいった。計算が間違っていなければ100リットルも水を入れれば穴の口から水が溢れるはずだが、そんなことはなく200リットル入れても水は溢れなかった。上から覗くと、最初の穴の水位と同じあたりに水面が見えた。


「これなら大丈夫だな」


 穴が空いていると危ないから、穴の上から砂利と砂の混ざったものを入れて穴は塞いでおいた。それでも水はこぼれ出なかった。


 実際使う時は、取水井戸と排水井戸の距離は100メートルも離しておけば十分だろう。ダンジョンの路面にこぼした水は沁み込まなくて乾燥を待つよりほかないのだが、不思議なものだ。




 水場と、排水の目途が立ったことで、翌日エヴァはマーロンさんに第10階層の冒険者用宿舎を発注した。


 イワナガ運送の従業員宿舎の第2棟は建築中だったが、更に第10階層に宿舎の建設が始まった。




 最初、俺がアイテムボックスと転移で運搬係をしてやろうと言ったのだが、エヴァは俺が直接作業を手伝うことを断り、その代わり、資材の運搬用にゴーレムを改造して資材の運搬車両を作ってくれと俺に頼んだだけだ。資材の運搬車両は、横幅1メートル長さ3メートルの1マスだけ。その中に資材や作業道具を載せる。


 それで、作業員の移動と資材の運搬用には運搬車両を組み込んだ臨時列車を第1階層から第10階層へ仕立てることにした。



 作業初日、臨時列車が、マーロンさん、作業員、作業器材と資材を積んで第10階層に到着した。


 マーロンさんは簡単な作業指示をして、折り返しの列車に乗って帰っていった。


 まずは、いつも通り測量員が機械を覗きながら、助手に指示を出し、チョークで印を付けていく。


 その後土台が組まれていき、柱が立っていった。屋根は不要なので、天井だけしっかりしたものになる。


 冒険者用宿舎の間取りは、3メートル×5メートルの4人部屋が10部屋。6メートル×5メートルの8人部屋が5部屋。食堂と台所、トイレと洗面台。食堂で提供する料理はスープとパンだけだ。外部で委託して作ったスープとパンをダンジョンに運び入れて、第10階層に列車を使って運び込み、宿舎の台所では調理することなく皿に移し、下げられた食器を洗うだけだ。



 通気装置など何もないダンジョンの中に人がこれほど出入りしていながら酸欠が起こっていないところを見ると、ダンジョンには二酸化炭素を吸収して酸素を作る謎の合成機能があると思ってまちがいない。ならば、多少火を使っても良さそうだ。


 酸素は大丈夫だろうが、ダンジョン内で火を使って煙を盛大に出しては大ヒンシュク間違いなしなので、火の使用は諦め、冷たいスープの提供もやむを得ないと思ったのだが、木炭を使ってスープを温め直すことになった。今度は一酸化炭素中毒が怖いので、エヴァにそこらあたりを説明して、台所のかまどは一種の露天で、第10階層の空洞内にむき出しにすることになった。



 水は井戸から手押しポンプでくみ上げ、排水は空洞の壁伝いに側溝を掘って、排水穴まで流す。ダンジョンの岩はつるはしで壊すことはできるがきれいに成型することは難しいので、側溝は俺が作ってやろうと思う。





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