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第233話 グリーンリーフ5、第1ダンジョン第15階層へ


 グリーンリーフは特別ではあるが、彼らの他に、ダンジョン一般開放までに本当の意味での一般チームが2つ作られた。いずれも選抜テストを正規せいきに通過した20代から30代の猛者もさたちで構成されたチームである。


 その二つのチームは、鈍器代わりの刃引きされた刀が2名、盾とメイスが2名、クロスボウが1名のレッドウルブズと、鈍器代わりの刃引きされた刀が2名、盾とメイスが2名、洋弓が1名のブルーダイヤモンズ。


 二つのチームで飛び道具の種類が異なるのは、どちらが有効なのか検証するためである。ダンジョン開放後は各自の武器は保管施設に預けなければならないため、自分で手入れすることはできず、業者にメンテナンスを委託することになる。


 従って、ダンジョンで生計を立てるためには出費を抑えることも重要であり、メンテナンス費用の掛からない武器は必須である。その点、矢を消耗する可能性の高いクロスボウや弓はコストがかかるのだが、接近する大型モンスターに対して遠距離から攻撃を浴びせてその勢いを削ぐことはこれまでの検証で重要であると考えられたため、あえてコストには目をつむりクロスボウと弓を導入している。


 グリーンリーフを加えた3チームはこの春一般開放が予定されている順に第1から第3ピラミッド=ダンジョン専属ということで、ダンジョンに潜ることになっている。


 グリーンリーフの面々は既に第1ピラミッド=ダンジョンの第12階層まで到達している。もちろん、各階層をくまなく探索しているわけではない。第12階層までは洞窟型のダンジョンが続いていた。


 遭遇するモンスターは第1階層で出現したモンスターと変わらなかったが、一度に現れる数が少なくとも3匹、多いと7匹にまで及ぶようになっていた。各人の防具は緑色だったが、少し黒ずんできている。汚れを取ってもこの黒ずみは取れなかった。武器については、治癒師である鈴木茜の杖のみ黒ずんできていたが、元が黒っぽかったので目立ってはいない。



 入り口から第12階層まで進むには、階段を含めて直線距離に換算して、25キロを超えており、途中でモンスターに遭遇もするため、休憩を含めれば8時間はゆうにかかってしまう。今回の探索で、グリーンリーフの面々は第15階層まで進む予定だ。そのため3人は1泊野営するための装備をバックパックとして背負っている。


 野営用の装備と言っても水と毛布と自衛隊のパック飯だが、水は結構重たいためかなりの重量になっている。そこは、鈴木茜の願いでしのいでいる。



 時刻は午後4時。


 グリーンリーフの3名は午前8時に代々木公園内の第1ピラミッドからダンジョン第1階層に侵入し、そこから寄り道することなく各階層の下り階段に向けて進み、第11階層からの階段下の第12階層の最初の空洞に到達したところだ。


 空洞からは3本の洞窟が奥に延びていた。前回の探索では、この空洞で1時間30分の食事と休息をとった後、8時間かけてピラミッドまで帰っている。その時はかなりの強行軍だったが、鈴木茜の願いのおかげで、負荷はそれほど高くはなかった。


 今回の探索については、事前の打ち合わせで、第15階層まで今日中に到達し、そこで野営後、折り返すことにしていた。


 小休止を終えた3人は、他の2本の洞窟と比べ明らかに断面の大きな中央の洞窟に進んでいった。


 彼らはそこから何度かモンスターを斃しながら、40分ほどかけ2キロほど進んだ先の空洞で下り階段を見つけた。


「一葉さん、ここも予想通り階段があったね」


「日本にできたダンジョンはどこもそうみたいだけど、親切な作りだからありがたいわよね。

 階段を下りてから休憩しましょう」


 3人は階段を下りていき、その先の空洞に下り立った。


 これまで通り、最初の空洞の壁の中からアイテムが見つかった。


「これは鍵?」


「鍵だろうけど大きいよね」


「鑑定してみよう。

 鑑定。宝物庫の鍵。

 このダンジョンのどこかに宝物庫があるんだ」


「先に宝物庫を見つけてたら嬉しいけど、先に鍵だと逆に困るわよね」


「確かに。

 いつ宝物庫を見つけてもいいように、大事にとっておくしかないわよね」


「そうね。

 それじゃあ、先に進みましょうか」


「頑張っていこう」「ファイトだね!」



 そこから先も順調に3人は進み、13階層、14階層でもアイテムを発見した。


 目的地である15階層への階段前まで彼らは到達していた。


「この階段を下りれば、今回の目標達成ね」


「下で野営する? それともここまで戻って野営する?」


「予定だと、下で野営することにしていたけど、どっちでもいいものね。

 茜さんの願いのおかげで、疲れが溜まっていないから、できたらここに戻って野営しましょうか」


「賛成」「そうしよ」



 3人は階段を下りていき、ついに第15階層に下り立った。これまで洞窟型ダンジョンだったが第15階層は石組型ダンジョンで、彼らの下り立った石室には前方の壁に扉が付いていた。


 石室の大きさは20メートル四方。右の壁にはおそらく何かが隠されているのだろうが、左の壁の真ん中には直径4センチほどの丸い穴が空いており、その下の床の一部が一段高くなって、その高くなった部分の上面は逆に深さ50センチほどの窪みになっていた。窪みの上の方、壁に向かって横8センチ、上下4センチほどのスリットが空いていた。


「一郎くん、まずは右の壁のあの辺りを調べてくれる?」


 やはりこの部屋でも、アイテムが見つかった。


「今度も鍵だ。

 鑑定、

 水場の鍵」


「水場って、そこの壁際の窪みのことじゃない?」


 3人で左側の壁を調べてみたところ、水場の鍵がはまる鍵穴が見つかった。鍵穴に水場の鍵を入れて捻ったら、壁の穴から水が流れ落ちて、くぼみに溜まっていった。放っておいたらくぼみから溢れそうに見えたが、壁に空いたスリットから水が流れ出て、窪みから水はあふれ出なかった。


「この水飲んで大丈夫かな?」


「罠じゃないみたいだから、毒ではないんでしょうけど、それでも飲んでみて大丈夫じゃなかったらマズいから、持って帰って調べてもらいましょう。

 何か入れ物があればいいけど」


「空になった水筒があるからそれに入れておこう」


 今回、2日間にわたる探索のため、各人は1リットル入りの水筒を2つ腰のベルトに下げ、3リットル入りの小型タンクをバックパックに入れている。他にバックパックの中には、毛布、パック飯4食分、チョコや栄養バー、ゼリーなどの補助食、下着やタオルなどが入っている。



「この鍵はどうする?」


「持って帰って分析してもらった方がいいよね」


「そうだね。

 引き抜いておこう」


 一郎が水場の鍵を引き抜こうとしたが、引き抜けなかった。


「抜けない」


「放っておくしかないわね。

 この水が飲めるとして、将来的にはこの部屋が冒険者の拠点になるんでしょうね」


「そうなってくると、この広い部屋も狭くなるよね」


「ここまでくることができる冒険者の数はそれほど多くないでしょうから大丈夫じゃない?」


「それもそうか」


「正面の扉を開けてみる?」


「ようすだけ見て、上の階に戻りましょう」


「「了解」」





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