第228話 ピョンちゃん3
防衛省での会議のあった翌日。
会議でやる気を貰った俺は、一心同体のメンバーを引き連れ、朝からダンジョンの未探索部分の探索をすることに。いつものように楽園の中央に跳んでピョンちゃんを連れだしたのだが、先日華ちゃんが言っていたようにピョンちゃんの羽は確かに青みがかっていた。
あらためてピョンちゃんをよく見ると、最初見た時より明らかに大きくなっている。楽園内ではどこにでも食べ物があるので、華ちゃんがいつも何か食べさせているからということはないと思うが、何か原因でもあるのだろうか? つがいなら卵を産むかもしれないが、楽園オウムはピョンちゃんしか見かけないし。このまま大きくなったら、さすがの華ちゃんでも肩が凝るんじゃないか?
不思議に思いながらも、ピョンちゃんを連れて俺たちは前回最後に掃除したダンジョンの位置に転移した。そこから華ちゃんのライトから始まる一連の魔法で前方を確認し、探索を再開した。
布陣はいつも通り、先頭が如意棒を構えた俺、俺の後ろの左側がピョンちゃんを肩に乗せた華ちゃん、右側がフレイムタンを持ったキリア、その後ろを手ぶらのアキナちゃん。アキナちゃん以外と一羽は同期して緑に点滅している。
「それじゃあ、開けるぞ」
華ちゃんが罠を解除した扉を俺がゆっくり開けた。
扉の先はいつもと変わらない一辺が10メートルほどの四角い部屋で、部屋の真ん中に宝箱が置いてあった。
部屋に入る前に華ちゃんがデテクトアノマリー、デテクトライフをかけたところ、宝箱が緑に点滅を始めた。ミミックだわな。
「華ちゃん、やっちゃってください」
俺が叩き潰すより、華ちゃんの細いファイヤーアローというかファイヤーニードルの方ができ上りがきれいなので、このところ、大抵のモンスターは華ちゃんに任せている。
「ファイヤーアロー」
華ちゃんの右手から細目のファイヤーアローがミミックに向けて放たれ、ミミックの真ん中あたりに命中した。
見た目は全く変わりはないのだが、これでミミックは死んだはずだ。
俺は、いつも通り死骸をアイテムボックスに収納しようとしたのだが、
「あれ? 収納できない。こいつ今のじゃ死ななかったんだ」
俺の声に反応したのか、ミミックが蓋を開けて俺に向かって飛び上がってきた。
俺は、ミミックに向けて如意棒を叩きつけてやったら、ミミックは部屋の反対まで飛んでいった。叩き潰した手応えはなかったので、ミミックはまだ生きている。
華ちゃんが再度ファイヤーアローを放った。今度のは先ほどのファイヤーアローより太いファイヤーアローで、左右の手から連続して4、5発放たれた。1発目では何ともなかったミミックだが2発目以降擬態した宝箱が少しずつ壊れていき、5発目でバラバラになってしまった。
「今までのミミックなどよりよほど頑丈だったな。しかも5メートルは飛び上がってきたし」
「そうですね。でも最後の1発は余分でした」
「足りないより多い方がいいからあれでよかったんだよ。
ただのミミックとは思えないから、バラバラになったけれど華ちゃん鑑定してくれるか?」
「はい。鑑定
グレーター・ミミック。だそうです」
「ほう、一段階レベルの高い上位種だったんだ。
これから先、レベルアップしたモンスターが現れるかも知れないから気を引き締めていこう」
「「はい」」「じゃな」
アキナちゃん効果で50パーセント増しの威力を持った華ちゃんのファイヤーアローを数発耐えたわけだから、いつぞやのバシリスクなどよりよほどタフなモンスターだったわけだ。
そのグレーター・ミミックを斃して以降、苦戦するというほどではなかったが、遭遇するモンスターは、ほとんどグレーターなりなんだりの形容詞の付いた上位種だった。
「そろそろ、昼にしようか」
「「はい」」「おう」
いつものようにブルーシートを敷いて、4人してハンバーガーを食べた。ピョンちゃんは華ちゃんの右肩の上に止まっている。朝見た時と比べ青みが増した気がする。
「華ちゃん。ピョンちゃんだけど、青みが増してないか?」
華ちゃんが右を向いて右肩のピョンちゃんを見て、
「そうですね。少し青くなった気がします」
「尾羽も長くなってきたような。
ひょっとして、ピョンちゃん、俺たちの防具みたいにモンスターを斃すことで、強くなってるんじゃないか。
俺のラノベとゲームの知識から言って、進化の兆しかもしれないぞ」
「進化ですか?」
「そう。今日のモンスターたちがグレーターがついて上位種だったのと同じように、ピョンちゃんが楽園オウムからその上位種に進化するかも知れないぞ」
「楽園オウムの上位種というと、極楽オウム?」
「進化してどんな名前になるかは分からないけれど、極楽オウムはかわいそうじゃないか? 極楽とんぼみたいで」
「たしかに」
みんなハンバーガーを食べ終わったところで、各人の要望にそってアイスを配った。アキナちゃんの要望には個数も含まれていたので2つ配っている。
「ピョンちゃんが進化するとして、楽しみが増えたな。
これでいつまで経っても進化しなかったら残念だけど、進化しないと断言できるまで希望はあるからな」
しばらく食後の休憩して、
「さて、ピョンちゃんの進化に期待しつつ、次いくか」
「「はい」」「楽しみなのじゃ」
食後の後片付けをして、俺たちは探索を再開した。




