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第207話 グリーンリーフ2


 グリーンリーフの3人はリーダー、田原一葉を先頭に、ピラミッドの揺らぎを通り第1ピラミッド=ダンジョンの中に入っていった。


 進入と同時に3人は目元を覆っていたバイザーを上げた。その後、魔術師、斎藤一郎が手順通りライトを唱えた。ライトの明かりが眩しく周囲を照らす。


 次に治癒師、鈴木茜が、彼らに遅れてダンジョンに侵入した自衛隊員たちを含め全員に(・・・)力が湧くように願った。荷物の重量が軽くなったわけではないが、全員荷物が軽くなったように感じた。



 自衛隊員たちは邪魔にならぬようグリーンリーフの3人から距離を置き、うち2名はグリーンリーフの3人を撮影し、残りの4名は周囲を警戒している。魔法・魔術の存在は、今のところ一般には公表されていない上、一般から集められた冒険者のハズのグリーンリーフがいきなり魔法を使用しては問題があるため、今回撮影された動画は公開前に編集されることになっている。とはいえ多くの国民は魔法・魔術の存在を信じていた。いや、願っていた。



 ライトの光で明るくなった出入口の空洞を田原一葉が見渡すと、岩壁の一部に違和感を覚えた。そこに何かある。


「一郎くん、そこの壁が怪しいわ。トラップではないと思うけど、ディテクトトラップをかけてみてくれる」


「了解。ディテクトトラップ!

 罠じゃないみたいだよ。それじゃあ念のため、ノック!」


 壁の一部が崩れ、中から空洞が現れた。空洞の中から鞘に入った一本の剣が現れた。


「剣だ!」


「一郎くん、いちおう鑑定してみて」


「了解。鑑定!

 長剣だって」


「見たまんまね。

 抜いてみたら、どんな感じ?」と、鈴木茜。


 斎藤一郎は手にした長剣を鞘から抜いたら、剣身がライトの光でキラリと輝いた。


「うわっ! これ切れそー」


「ほんとだ。勇者だった山田さんの剣よりこっちの方が切れそう」と、鈴木茜。


「モンスターが出てきたら、使ってみるわ。

 一郎くん、わたしに貸してくれる?」


「はい」


 斎藤一郎が剣を鞘に戻して、田原一葉に手渡した。


 田原一葉は受け取った剣を、ベルトの小物入れから取り出した紐で右の腰に括り付けた。一葉は両手で剣を扱うため、どちらから剣を抜こうとそれほど違和感はない。


 最初の成果を手にした一行は、第2階層へ続く階段のある中央の洞窟に進んでいった。


 彼らは洞窟を進みながら、階段へ到達する前に2度ほどモンスターに出くわした。一度目は大コオモリ、二度目は大蜘蛛でどちらも田原一葉が先ほど手に入れた剣の切れ味を試すために一振りで斃している。


 冒険者として生計を立てていくためには、こういったモンスターの死骸は大切な収入源のため回収しなければならないのだろうが、初日である今回は無事にダンジョン内を探索することが目的のため回収せず放置したままだ。


 田原一葉が手にしている剣は、大コウモリ2匹、大蜘蛛1匹を切り飛ばしていたが刃こぼれ一つしていない。それどころか剣の刃は何も切っていないように全く汚れてはいなかった。


「この剣、ただの剣じゃないみたい」


「魔法の剣?」


「おそらくそうだと思う」



 入り口から30分ほど進んだところで、洞窟の先に空洞の広がり見えてきた。さらに進むと空洞の真ん中に下り階段が見えてきた。



 下り階段を下った先には、下り口と同じように空洞が広がり、空洞から洞窟が2本延びていた。


 まず、田原一葉は壁に張り付いていたスライムを2匹発見した。


「一郎くん、あそこと、あそこにスライムがいる」


 一葉の指摘で、一郎はファイヤーアローで2匹のスライムを簡単に斃した。



 そのあと田原一葉は壁の一カ所に違和感を覚えた。


 ダンジョンの出入り口の空洞の時と同様に、一郎が一連の魔術を発動したところ、壁の一部が崩れ、また空洞が現れた。


 中から現れたのは、黒い板。一郎が鑑定したところ、


「スキルブック:剣術、すごいのが出てきた。

 これは、バックパックに入れとくよ」


「一葉さんの探検スキルすごいよね。

 なんだか、アイテムは入り口?に隠れてるみたいじゃない?」と、鈴木茜。


「第3階層の下り口は見つかっていないけれど、そこに下りてまた何か見つかったら、そういうことかも知れないわね」


「階層一番乗りのご褒美ってことなんだろうな」


「ここのダンジョンで、もしそういうことなら、他の31個のダンジョンでもそうなんだろうから、第2階層まで下りてしまえばあと62個もアイテムが手に入る計算になるわよ。入り口から第2階層までなんてどこも大したことないでしょうから、楽勝じゃない?」


「ここの第3階層への階段を見つけて、下に下りてまたアイテムが見つかったら、川村局長に伝えておいた方がいいわよね」


「そうだね。

 それで、一葉さん、目の前の洞窟は2つあるけどどっちに進む?」


「わたし賭けは弱いのよね。茜さん、決めてよ」


「わたしが決めるの? 外れても恨まないでよ。

 それじゃあ、左側」


「「了解」」


 3人は、自衛隊員たちを引き連れて、左側の洞窟に入っていった。



「前方から何かくる!」


 最前列を歩く一葉が左手で剣を抜き両手で中段に構えた。一郎と茜も杖を両手で構えている。一郎はどこかで見た映画かアニメのように杖から攻撃魔術を発現したかったのだが、今のところその希望はかなえられておらず、攻撃を発現するためには、対象に向かって手のひらを向ける必要があった。従って、攻撃魔法を発現する時には片手で杖を持つことになる。


 もちろん、一葉の警告に後方を進む自衛隊員たちも緊張し、撮影役の2名はカメラを構え直し、護衛役の4名は小銃を構えた。


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