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第204話 魔神!


 魔神の消毒も華ちゃんの力技で何とかなりそうだったので、俺たちは『冥界への道』を下っていった。


 石室の中から見た冥界への道は緩やかな下り坂だったが、洞窟を歩いていると、下っている感覚は無くなってしまった。だいたい20メートル進むたびに華ちゃんが威力を抑えた殺菌ファイヤーボールを撃ちだし、100メートル先を消毒する。しゃがんで爆風に耐えた後、華ちゃんが同じく威力を抑えたアイスボールを同じ場所で爆発させて辺りを冷やす。


 100メートル進むとこれにデテクトアノマリー、デテクトライフが加わる。


 地道な作業を40分ほど続けて、2キロ近く進んだはずだ。


 華ちゃんが前方に向けファイヤーボールを打ち込んだ後、


「今のファイヤーボール、広いところで爆発しました。100メートル先は、通路の出口みたいです」


「通路の出口があるなら、そこまでいって、そこから先を消毒しよう」


「はい」


 アキナちゃんとキリアは黙ってついてきているが、華ちゃんの地道な作業のことは理解できていないようだ。病原菌の説明は素人の俺では難しすぎるし、仮に説明できたとしても目で見えるわけではないので、実感がわかないのだろう。華ちゃんは何か分からないが儀式をしていると思ってくれていればそれで十分だ。



 俺たちはそこから殺菌済みの洞窟を進み、洞窟の出口に到着した。


 通路の先は真っ暗なのでその先がどうなっているのかはわからないが、少なくとも華ちゃんのライトで照らされている範囲は空洞が広がっていた。その空洞の地面からは高いもので5メートル、低いもので3メートルほどの奇妙な形をした岩が何本も上に向かって生えていた。天井はどこかにあるのかもしれないが暗くて見えない。


 華ちゃんが、


「ライトを一度消して、新しくライトを作って上に上げてみます。

 ディスペルマジック」


 華ちゃんの頭上のライトが消え辺りは全くの闇に包まれた。


「ライト!」


 すぐに華ちゃんがライトを唱え、辺りが明るくなった。そのライトがどんどん上に上がっていって、空洞を広く照らし出した。


 俺たちのいたのは、大空洞への入り口のようだ。天井はそれでも見えなかったので、少なくとも4、50メートルの高さに天井はない。楽園と同じように天井はないのかもしれない。


「華ちゃん、ここ全体を殺菌できるかな?」


「楽園ほど広くないようですから、100発もファイヤーボールを撃ち込めば殺菌できると思います。その前に、邪魔な岩を掃除しましょう」


「華ちゃん、ちょっと待ってくれ。粉々にすると残骸が転がって歩きにくくなるから、俺が収納していくよ」


「それはいいですね。片付いた端から消毒していきます」


 そういうことで、俺は片端から岩を収納していき、華ちゃんはきれいになった場所に殺菌ファイヤーボールを撃ち込んでいった。少し熱くなったと感じた時は、アイスボールを撃ち込んで冷やしている。


 空洞の周辺にはまだ岩が残っていたが、俺たちは先に進むことにした。ライトは上空20メートルあたりで華ちゃんについて移動しているので、そこまで明るくはないが、周囲はよく見える。


 そうやって空洞の中を100メートルほど進んだところで50メートルほど先に空洞の終わり、壁が見えてきた。


 そして、その壁の前には巨人が立っていた。そいつが魔神なのだろう。


「魔神じゃ。『冥界のアルシャファク』じゃ」


 魔神の背の高さは20メートルはあった。のっぺらぼうの真っ黒い巨人だ。デテクトアノマリーでもデテクトライフでも反応もないので巨人像と言った方がいいかもしれない。


 目標が見えたので、俺たちは岩を収納しながら消毒し、巨人の前に立った。


 巨人そのものもすでに消毒済みだが、さすがに消毒ファイヤーボールではびくともしていない。



「動かないならちょうどいい。まずは俺が如意棒でこいつに一撃を加える」


 俺は両手に如意棒を握りしめ、斜め上に振り上げて、胸の高さぐらいにあった巨人の足首に向けて叩きつけた。


 ゴン!


 鈍い音が響き、俺の両手は反動でしびれてしまった。巨人の足首にダメージが入ったようには見えなかった。


「だめだな。硬すぎる」


「魔神の眷属と同じように物理、魔術無効で同時攻撃有効かもしれませんから、試してみましょう」


「そうだった。

 華ちゃん、この辺りを狙ってファイヤーアローを連続で打ち込んでくれ、そしたら俺が如意棒を叩きこむ」


「いきます! ファイヤーアロー!」


 華ちゃんの両手から連続して白いファイヤーアローの糸が魔神の足首に命中し何の効果もなく消えていった。これは想定済みだ。


 俺は再度、先ほど度同じ個所に如意棒を叩きこんだ。



 ゴン!


 鈍い音と、両手のしびれは全く同じ。魔神の足首にも傷一つ付いていないところも同じだった。


「だめだな。

 どうしようか?」


「ご主人さま」


「なんだ、キリア?」


「ご主人さまがこの像を収納してはどうでしょう?」


 確かに、目の前の巨人像はデテクトライフで反応していない以上生き物ではなく物だ。


「収納!」


 魔神像の全体を意識してアイテムボックスへの収納を試みた結果、


「収納できてしまった」


 さっきまで目の前にあった巨人像が消えてなくなり、今は俺のアイテムボックスの中にいる。キリアの指摘通り収納できたことは大成功なのだが、果たして魔神なんかをアイテムボックスの中に入れたままにしてていいものだろうか? すごーく不安だ。


「でかした!

 さすがはわらわの見込んだゼンちゃんじゃ」


「岩永さん、すごいです」


「さすがご主人さま!」


 3人とも喜んでくれているのは結構なのだが、俺のアイテムボックスに入っているのは魔神だよ。


 どうすんのこれ?


 アイテムボックスの中に入っている以上いかに魔神とは言え蘇ることはないだろうが、すごく不安だ。できればどこかに捨ててしまいたい。


 指〇物語の主人公の心境だ。あれは指輪だったけど、こっちは20メートルもある魔神だよ。


 何度でも言おう。どうすんのこれ?



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― 新着の感想 ―
[一言] 魔神を複製出来るのだろうか?
[一言] どこぞの火山に捨てにいく?地球に戻って宇宙区間に廃棄する?アトムのように太陽に投棄?
[良い点] へんじ が ない ただの せきぞう の ようだ・・・ キリアちゃん、ナイスアイディア♪(笑) 動かない石像は、ただの石像だからね~ [気になる点] 善次郎さんの【収納】能力、【錬金工…
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