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第202話 指輪


 俺は石室の中に隠されたものがないかと如意棒を使って地道に床や壁を突いていったのだが、どこにも変わった所はなかった。


「おかしい」


「ご主人さま、ご主人さまの足元で何か光っています!」


 キリアの声で足元を見ると、銀色に光っている3センチくらいの丸い何かが魔神の眷属の砕けたカケラと一緒に転がっていた。拾い上げたそれは、


「指輪だ」


 これは怪しい。見た目はプラチナだが、ゴツイ指輪の割にそんなに重くないし、王水にも反応していないようなので、特殊な金属、おそらくミスリルなのだと思う。


 この指輪は、悪の化身(リッチ)が身に着けていただろう指輪だ。今みたいに触る程度なら大丈夫だろうが、呪いのアイテムの可能性が高いのでうかつに指にはめれば何が起こるか分からない。指にはめたくはないが、何かの手掛かりになるかもしれないので、どういったものかは知っておく必要がある。


「華ちゃん、この指輪を鑑定してくれるか?」


「はい、鑑定。

 冥王めいおうの指輪。だそうです」


冥王めいおうの指輪?」


「ゼンちゃん、おそらく冥王めいおうというのは魔神『冥界のアルシャファク』じゃ。

『冥界のアルシャファク』は太陽王とも呼ばれる太陽神『天空のシャムアズール』によって封印されたという。

 おそらくじゃが、魔神の眷属はその封印を解き、魔神を蘇らせるために鳳凰フェニックスの羽根を探していたのではなかろうか」


「なるほど、それもあり得るな。

 で、その魔神に至る鍵がこの指輪ってわけだな」


「そうじゃ」


「アキナちゃん、この指輪なんだが、リッチがはめていた以上マトモな指輪じゃないと思うんだよ」


「それはそうじゃな」


「例えば、アンデッド以外がはめると呪われるとか」


「十分ありえるな」


「アキナちゃん、呪いを解くことできないかな?」


「できん。呪いが解けるなら、わらわとて、みすみす石になっておらん。

 石にされるときのあの痛みは今思い出しても身震いする。

 エリクシールがあれば、何とかなるかもしれぬが、わらわのためにゼンちゃんが使ってしもうたしな」


「エリクシールは追加で作ったから、今あるぞ」


「なんと! それなら簡単じゃ。

 エリクシールは、あらゆるものを癒す薬じゃ。呪いもしかり。物に掛けられた呪いも消えてしまうはずじゃ」


「本当なのか?」


「わらわとて試したことはないからもちろん分からんが、そう言われておるのも事実じゃ」


「じゃあ試してみよう」


 俺はエリクシールを一瓶出して蓋を開け、左手に持った指輪に一滴垂らしてみた。


 ポーション瓶から光の糸を引いてエリクシールが一滴指輪に触れた。


 そのとたん、指輪が青く光り、その光が少しずつ消え、指輪についたエリクシールもどこにも見えなくなっていた。


「いかにも解呪したって感じだな。

 これで指輪をはめてみて何かマズければエリクシールを飲めばいいから」と、自分に言い聞かせ、右手にエリクシールのポーション瓶を持ったまま、指輪を左手の中指にはめてみた。


 はめた感じではなにがしかの呪いが働いているようではなかった。


「生まれて初めて指輪をはめたんだが、中指だとちょっときついな。

 薬指だとおこがましいと思って中指にしたが、やっぱり薬指にはめ直そう」


 俺が指輪を抜こうとしたら、指輪が伸びたのか、ピッタリ中指にフィットした。指輪には俺たちのヘルメット同様の機能がついていたようだ。ということで、魔法の指輪確定だ。


「指輪をはめてみたが、指にぴったりはまったくらいで、ほかに何も起こらないな」


「魔法のランプのようにこすってみたらどうでしょう」と、華ちゃん。


 アキナちゃんは当然として、キリアもおそらく魔法のランプの話は知らないだろうが、説明も面倒なので、俺は左手にはめた指輪を右手の人差し指でこすってみた。


『いでよ! 指輪の魔神!』


 魔神とか口にして勘違いされてはいけないので声には出さなかったが、指輪の魔神どころかホコリも出てこなかった。指輪の魔神が冥界のなんちゃらってことはないだろうがここで魔神に出てこられても困るしこれはこれでよかった。


「どうも違うようだな」


「指輪に何かヒントになるようなものは書いてありませんか?」


 指輪の表側はツルツルで何も書いていないが、裏側を俺はまだ見ていなかった。華ちゃんの言葉に従って、指輪を抜き取って裏側を見たら、模様だか文字だかわからないが何やら彫り込まれていた。


「華ちゃんの言った通り、何か彫り込まれてた。

 アキナちゃん、指輪の内側に書いてあるこの字?が読めないか?」


 神さまの生まれ変わりのはずのアキナちゃんに指輪を渡して見てもらった。


 アキナちゃんが指輪を手に取り、指側の裏側を見て、


「読めるぞ」


 さすがだ。


「で、なんて?」


「わらわの口ではうまく発音できんのじゃが、意味は『冥界への道』じゃ」


 指輪を手にしたアキナちゃんが『冥界への道じゃ』と言い終わったと同時に、どこかで見たことのあるような台座が石室の床の真ん中からゆっくりとせり上がってきた。


「楽園にあった台座と同じだ。

 ということは、この上に大金貨を置けばいいってことだな」


 アキナちゃんから指輪を受け取り、何かのご利益があるかもしれないと思って、左手の中指にはめておいた。


 指輪をはめ終えて、台座の上にアイテムボックスから取り出した大金貨を1枚置いたとたん、階段の正面の壁が消えて、その先に洞窟が現れた。現れた洞窟は緩やかな下り坂だった。






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