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第19話 水汲みと風呂とレストラン


 俺は井戸から水を汲んで台所に運んだのだが、一度では足りなかったので、再度水を汲み始めた。風呂の水のことを考えると、あと全部で300リットルは欲しい。無駄になるものでもないので目標は500リットルにしよう。桶100杯分だ。


 そこから俺は必死になってポンプのハンドルを上下して水を汲んだ。いい運動になったが、汗もかいたしすっかり疲れてしまった。


 リサの案内もそのころには終わっていたのでみんなが俺のところに集まってきていた。


「台所の水は汲んでおいた」


「本来は私の仕事でしたのに、申し訳ありません」と、リサ。


「風呂に入ろうと思ってついでにやったことだ。気にしなくていい」


「お風呂に入られるのでしたら、私がお湯を沸かします」と、リサ。


「俺は火を使わずに水を湯に変えることができるからお湯を沸かさなくてもいいんだ」


「そうなんですか」


「おいおい教えてやるといったろ? これもその一つだ」


「俺はこれから風呂に入って、1時間くらいしたらみんなで街に食事に出るから、そのつもりでいてくれ。居間に集合な」


「「はい」」


「食事が終わったら順に風呂に入れ。またお湯は沸かしておいてやるから」


「私たちもお風呂に入れるのですか?」


「入ったほうがいいだろ?」


「そ、そうですね。ありがとうございます」


「家の者の面倒を見るのは、主人として当然のことだ。気にするな」


「はい」


『ねっ、リサ姉さん。ご主人さまに買われて良かったでしょ?』


『そうね』


 子どもたちとリサの小声で話す言葉が聞こえてきた。


 これからもそう思ってもらうようにしないとな。


 みんなを解散させ、俺は風呂場にいって湯舟に錬金工房で作ったお湯を張った。


 いったん脱衣所で服を脱いで浴室に。


 何日も風呂に入っていなかったせいで頭も痒い。


 湯舟にそのまま入って頭までお湯に浸かったら、周りにお湯が溢れてしまった。


「ふー。いい湯だ」


 しまったな。ボディーソープとシャンプーを買い忘れてた。明日銀行で現金を下ろしたら買いにいかないとな。


 しばらくお湯に浸かっていた俺は、本格的な入浴は明日ということにしてそろそろ湯から上がることにした。


 日本で買ったタオルを使って体を拭いて、アイテムボックスから着替えを出して着替えたのだが、体をしっかり石鹸で洗っていなかったのでなんだかすっきりしない。これは我慢するしか無いな。そもそもこの世界の連中はどうやって風呂に入っているんだろ? ボディーソープとは言わないまでもなにがしか体を洗う石鹸や頭を洗うシャンプーのようなものがあるんじゃないか? 日本とこの世界を行き来できる今、この世界でそんな物を探す必要も買う必要もないがな。



 身支度を整えて、しばらく居間のソファーに座って休憩していたら子どもたちとリサが居間に入ってきた。外は日が暮れてだいぶ暗くなってきている。


「それじゃあ出発だ。

 みんな俺の手を持ってくれ」


 全員の手が俺の手を持ったところで、転移。


 前回食事した食堂の脇の小路に俺たちは転移した。


「前回の店だが、もう少しいい店がどこかあればそこがいいんだが。

 だれか、いい店を知っていないか?」


「値段は少し張りますが、良い店がその先にあります」と、リサ。


「じゃあそこに案内してくれ」


「はい」


 俺たちはリサの案内で、彼女の言ういい店とやらに移動した。


 リサに案内された店は、これまで俺たちが適当に入っていた食堂とは入り口からして造りが違っていた。見るからに高級なのだ。しかも入り口の脇には立派な服を着たおっさんまで立っていた。いわば奴隷商会のレストラン版といったところか。よく考えなくても何の例えにもなっていなかった。とはいえ、ここが奴隷商会だと言われれば素直にそう信じるような見てくれだった。


「6人だけど、入れるかな?」


 俺は客だ、エライんだぞー! と気合を入れて、店の前に立っていたおっさんに一応声をかけてみた。


「はい。今すぐご案内できます」


 おっさんに案内されて、俺たちはぞろぞろと店の中にはいっていった。


「こちらでございます」


 観葉植物の鉢植えがそこかしこに置かれた広めのロビーを抜けて、扉の並んだ廊下をしばらく進んだところで、おっさんが扉の一つを開き俺たちを招き入れた。


 部屋の中には女性が二人。天井からはシャンデリアが下がって大きなろうそくが何個も灯っていた。電灯の照明に慣れた目からするとろうそくの明かりではかなり暗いのだが、その暗さがいい雰囲気を出している。


 部屋の中で待機していた女性に「どうぞ」と言われ椅子を引かれたのでそこに座った。子どもたちにも俺と同様席が引かれ、戸惑いながらも子供たちは席についた。リサだけは落ち着いて引かれた席についた。俺たちを案内しただけあってリサはこういった店に慣れているらしい。


「リサ、この店が初めてではないようだから適当に料理と飲み物を頼んでくれるか。値段は気にしなくていいから」


 いくら高くても、金貨100枚ということはあるまい。


「お任せください」


 そう言って、リサがテーブルに置いてあったメニューを開いて注文を始めた。部屋にいた女性が注文のメモを採っている。


 リサが注文している間、子どもたちは、部屋の中を見回して、小声で話しているのが聞こえたきた。


『夢みたいね』


『わたしたち、こんな所でほんとに食事するの?』


『さすがはご主人さま』


 リサの注文が終わったところで係の女性は部屋を出ていった。


 すぐに飲み物がやってきた。子どもたちにはグラスに入ったジュースで、俺とリサにはテーブルに置かれたグラスにワインクーラーに入っていたボトルから白ワインが部屋付きの女性によって注がれた。もちろんワインクーラーにはちゃんと氷が入っていて、その白ワインはちゃんと冷えていたし、子どもたちのジュースも冷えているようだった。魔法的ななにかで氷を作ったのかもしれないがそれ相応のお金は取られるのだろう。


 先に飲み物がきたので『いただきます』とはならない。


「いただきますは料理がきてからだな。先に飲み物を口につけてていいぞ」


 そう、子どもたちに言ったら、みんな安心してジュースを飲み始めた。


「冷たくておいしー」


「納得の美味しさです!」


「さすがはご主人さま」


 俺になんの関係があるのかわからないが、美味しいのなら良かったよ。相変わらずイオナは黙ってジュースを飲んでいる。


 飲み物を半分程度飲み終わったところで、料理が運ばれてきた。


 最初はグリーンサラダとコンソメスープだった。


「それじゃあ『いただきます』」


「「いただきます」」


『リサ姉さん、食事の前には「いただきます」って言わなきゃいけないの』


 そう黒髪おかっぱ頭のエヴァが小声でリサに教えてやった。


 遅れてリサも「いただきます」


「それじゃあ、いただこう」


 その後は順次料理が運ばれてきた。グラスのワインが5分の1くらいになるとすぐにお注ぎしますかと部屋付きの女性が聞いてくるので、気持ちよくうなずく。


 そんな感じで食事が進み、お茶とケーキで最後となった。


「ご主人さま、美味しかったです。でももうお腹いっぱいです」


 大人と同じ量食べたわけだから、そりゃあお腹いっぱいになるだろう。


「美味しさに納得です」


「美味しかったー。さすがはご主人さま」


 この店が美味しいことと俺がどう関係するのかは分からないが、確かにこれまでこの世界で食べてきた定食は何だったのかというほど、この店の料理は美味しかった。これからちょくちょく利用することになりそうだ。


 支払いは端数は切り捨てで結局金貨8枚だった。とくにチップのようなものは無いらしい。一人頭金貨1枚と飲み物代プラス部屋代ってところだろう。確か金貨1枚は銅貨1000枚だったはず。最初は銅貨1枚は100円くらいかなと思っていたが、少し修正して50円くらいがいい線なので、金貨1枚の価値は日本円で5万円。そうすると今回の支払いは40万円ということになる。結構な金額だが、この世界の金はかなり持っているのでこの程度の贅沢は構わないだろう。



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― 新着の感想 ―
子供たちに贅沢(この世界の範囲で)を覚えさせるのは可哀想だと思う 一生面倒みるならともかくそんな事出来ないわけで後の人生が苦痛になるじゃん
[一言] 子供大人ん?って面白いね
[良い点] どんどん衣食住などの環境などが充実していく。 [一言] 国外移動不可というあたりが特殊な魔法や器具がないならありそうな話ですね。 大抵は一つの町かその国内での活動がほとんどでしょうから比較…
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