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第179話 新3人組3、遭難。

ここから、神殿編となります。


 こちらは神殿の新3人組。


 斎藤一郎と鈴木(あかね)はこれから初めてダンジョンの中に入ることになる。ダンジョンの中まで神殿兵は付き添わず、揺らぎの前で馬車と一緒に待機することになっている。



 その日の山田圭子は、田原一葉が神殿に残していたメモがあったので、そのメモを元に、第2階層(・・・・)に降りて最後の探索個所に向かいそこから探索を再開するつもりだった。もちろん、残り二人の了解を取っているわけではない。


 最初に山田圭子がダンジョンの揺らぎに入っていき続いて残る二人も揺らぎに入っていった。


 ダンジョン内部は薄暗くはあるが周りが見えないほどではない。それでも斎藤一郎は手順通りすぐにライトを唱えた。


 新パーティーには田原一葉のような探検スキルを持った者がいないため、斎藤一郎はライトのほか、ディテクトトラップの魔術を探検用魔術として習得している。これは神殿がわざわざ『赤き旋風』の魔術師エウレカ・コーラルを神殿に招いて斎藤一郎に習得させたものである。


 ディテクトトラップは狭いレンジだが、レンジ内の罠は確実に見つけることができる。しかし、三千院華のディテクトアノマリーほどの広いレンジも汎用性もない。


 ライトの光に照らされて出入り口の正面の壁に扉が現れた。その扉を無造作に山田圭子が開けようとしたので、


「山田さん、ちょっと待って。今ディテクトトラップをかけるから」


「ここには何度もきているけれど、この扉には罠なんてないの」


「それでも念のため、ディテクトトラップ。

 罠はなかった」


「わたしの言った通りでしょ!」


『ふー』。斎藤一郎はまだダンジョンに入ったばかりなのにため息をいてしまった。


『一郎くん、ガマンだよ』


『うん、分かってる』



 山田圭子は最初の石室の扉を開け、その先の300段の下り階段のある部屋に向かって歩いていった。


「待って、山田さん。まだ通路に罠があるか確認していないから」


「ここも何度も通っているから罠なんてないの。何度言わせるの!」


 山田圭子はそう言って、斎藤一郎の制止の声に構わず前に進んだ。


 山田圭子に激しい言葉を浴びせられた斎藤一郎だが、それでもディテクトトラップを目の前の通路に向かって唱えた。


「危ない!

 そこは罠だ!」


 山田圭子が斎藤一郎の警告を耳にしたとき、左足をかけた床が消えてなくなってしまった。バランスを崩した山田圭子は穴に落ちながら、穴の向こう側の床の端に手をかけようとしたがうまく手がかからず落とし穴の中に落ちていった。


「キャーー! ……」


 山田圭子の悲鳴が徐々に小さくなっていきやがて聞こえなくなった。


 穴の深さは数メートルとかという感じではない。少なくとも数十メートル。悪くすれば100メートルを超えるかも知れない。


 二人は山田圭子の落ちた穴の上から下を覗いてみたが、ライトの光に照らされているはずの穴の中がなぜか暗くて何も見えなかった。


「おーい」。斎藤一郎が穴に向かって声を出した。


 ……。


 わずかに自分の声が響いただけだった。



「一郎くん。どうする?」


「とにかく急いで神殿に戻ってこのことを知らせよう」


「そうだよね」



 二人はダンジョンの黒い板を通って、揺らぎの外で待つ神殿兵に急を告げた。



 二人がダンジョンを出た後、落とし穴の口は少しずつ小さくなっていっていき、やがて完全に閉じてしまった。




 斎藤一郎と鈴木茜は馬車に乗って神殿に急いだ。


 1時間ほどで、神殿に帰り着いた二人は、神殿兵によって急を知らされた大神官に勇者の遭難を説明した。


「勇者がダンジョンの落とし穴に落ちた。しかも底も見えないような大穴とは。……。

 フー。諦めるしかないのか? 何か手立てはないか?」


「大神官さん。僕たち二人じゃ、おそらくどうにもならないから、誰かすごい人に助けを求めたらどうですか?」と、斎藤一郎が大神官に提案した。


 斎藤一郎も冒険者ギルドというものがあると神殿の侍女から聞いていたし、凄腕の冒険者パーティーのうわさも聞いていた。


「以前、ダンジョンでの勇者の護衛として冒険者パーティー『赤い旋風』を雇ったのだが、契約を延長することなく1カ月で護衛を辞めてしまった。その際、勇者の悪い評判が流れてしまったのか、冒険者を雇うのが難しくなったのだよ」


 二人は口には出さなかったが、あー。やっぱり。と、二人そろって思ってしまった。


「仮に、優秀な冒険者を雇えたとしても、勇者が無事とは限らないし、無事でもこれから1

日や2日で救出できるとは思えない。

 見殺しにはできないし、どうしたものか」


「大神官さん、神殿の侍女の女性に聞いたんですが、いまギルドには凄いパーティーがいるそうです。今まで空席だったギルドのAAランクにあっという間に上がっていったパーティーだとか。そのパーティーに依頼してはどうですか?」


「そんな、パーティーが。

 ギルドに人をやって指名依頼を出してみよう。そのパーティーが依頼を受けてくれれば儲けものだしな」



 大神官は、冒険者ギルドに人をやり最近AAランクに昇格したパーティーに対して破格の依頼を出した。もちろん要救出者の容姿の特徴や身に着けていた装備品なども冒険者ギルドに知らせている。


「ダンジョンで行方不明となった1名の救助。成功報酬金貨2000枚。死体または死亡が確認できる装備の回収。金貨1000枚」というものだった。


 さっそくその指名依頼はバレン冒険者ギルドとバレン冒険者ギルドのバレンダンジョン支部の掲示板に貼り出された。



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