表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
154/526

第154話 火器によらないモンスター退治の検証2


 ダンジョンの第1階層を進んでいき、2匹のスライムに遭遇した。自衛隊員たちは危なげなくスライムをめった打ちにしてどちらもスライムを斃したのだが、少々時間がかかっていた。


 5人の侍たちが持つ武器のうち、3人が刀と槍なのであまりスライムには有効でなかったようだ。しかも、スライムを突き抜けた刃先がそれなりの力で洞窟の岩に当たっていたので、刃も相当傷んでいると思う。


 その点メイスの方は少々傷んでも威力が落ちることはないので、いまのところ武器としての総合力は優れているようだ。


 しかし、相手が形のあるケイブ・ウルフとかになってしまうと、刃物の方が有効のような気がする。



 本部のある広間から300メートルほど進んだところで最初の枝道があったが部隊は枝道に入ることなく本道を進んでいった。


「枝道を過ぎたから、後方注意な」と、俺は再度華ちゃんとキリアに注意しておいた。


「「はい」」



 そこから200メートルほど進んだところで、さらに枝道があった。その枝道を過ぎたところで、後ろから何かが迫ってきた。


 後ろを振り向いた華ちゃんが「ディテクトライフ」を唱えたら、大蜘蛛が二匹、音もたてずにこっちに迫ってきたいた。


「後ろから、大蜘蛛が二匹迫ってきてるんで、斃しちゃいますね」


 そうひとこと言って、


「華ちゃんやっちゃって。なるべくきれいに」


「はい。ファイヤーアロー」


 華ちゃんの右手から白く輝く糸が放たれ、一匹目の頭に命中した。それで、蜘蛛はひっくり返って動かなくなった。


「うまくいったから、もう一度、ファイヤーアロー」


 2発目のファイヤーアローも糸のようなファイヤーアローで、二匹目の蜘蛛の頭部を撃ち抜いた。


「華ちゃん、ナイス。今度のファイヤーアローも凄かった」


 華ちゃんに声をかけた後「二匹とも仕舞っちゃいます」と、前を向いてひとことかけたら、ライトの逆光の中なのに11人の自衛隊員たちの驚いたような顔が見えたような気がした。



 その後、部隊は前進を再開し、200メートルほど進んだところで、華ちゃんがデテクトライフを唱えたら前方に緑の点滅が2つ並んでいるのが見えた。


 今回の探索は豊漁だ。大きさと動きから言って大ネズミと思う。


 そいつらが近づいてきたところを、5人の侍たちがめった打ちだか、めった切りにしようと囲んだのだが、今回は一瞬で片が付いたようだ。


――ここらのモンスターに対してはオーバー・キルみたいだな。

 もっと、骨のあるモンスターじゃないとな。


 などと、不謹慎なことを考えていたら、今度は前方から3つの大き目のシルエットが迫ってくるのが見えた。ケイブ・ウルフだ。この階層でケイブ・ウルフが出現するということは、このダンジョンがニューワールドのダンジョンと比べ難易度が高め設定なのか、まだ新しいので、ダンジョンの上層部からそれなりのモンスターが駆逐されていないからなのかはわからない。


 5人の侍は、盾を持つ2人を前面にその後ろに刀を持つ佐高隊長、その後ろに槍を持つ2人が固まって、ケイブ・ウルフを迎え撃つようだ。後ろに控える6人は射線が侍たちに重ならないよう少し横に広がって小銃を構えた。


 ケイブ・ウルフは移動の際ほとんど音を立てないのだが、かなりのスピードで近寄ってきている。重さが100キロを超えると思われるケイブ・ウルフのぶちかましを盾で受け止められるのかどうかが、この戦いの帰趨を決めるのだろう。


 いずれにせよ乱戦になれば、華ちゃんの魔法攻撃は制限されるので、5人の侍に何かあれば小銃を構える6人に頑張ってもらうほかない。今回侍たちの装備に弓矢のような飛び道具があれば、一撃で仕留めることは無理でも突進の勢いを殺せるので、遠距離攻撃用の武器、中距離の槍、そして、至近距離の武器の組み合わせが有効そうだ。


 などと解説者ぼうかんしゃになり切った俺は、自衛隊の侍たちがどうケイブ・ウルフを料理するのか注目していた。


 ドン!


 先頭のケイブ・ウルフが腰を落として盾を構える最前列の自衛隊員に衝突した。衝突の寸前、盾の後方から2本の槍が突き出され、左右の首筋に槍の穂先は突き立っていた。


 それで、ケイブ・ウルフの勢いは相当殺せたのだろうが、それでも十分な勢いがあり、盾に正面からぶちかましを受けた隊員は後方に、槍を持った隊員を巻き込んで吹き飛ばされてしまった。


 これはマズいか? と思ったところ、佐高隊長の刀が横合いからケイブ・ウルフの首を断ち切ろうと一閃した。刀は、ケイブ・ウルフの首を切り飛ばすことができず、首の真ん中あたりまで切断してそこで止まってしまった。切られたケイブ・ウルフの首からはものすごい量の血が噴き出し、そこで、ケイブ・ウルフの動きは止まりその場に倒れてしまった。


 


 その後に続いた2匹のケイブ・ウルフはどちらも、後ろに控えていた6人の自衛隊員による射撃を浴びて、侍たちに到達する前にこと切れていた。


 小銃の連続した発射音とマズルフラッシュの光にキリアはかなり驚いていたようだ。俺だって初めて小銃の射撃を近くで見たわけで、その迫力に驚いたのだから無理もない。とはいえ、華ちゃんはいたって平気のようだった。さすがは、一心同体のリーサルウェポンである。



 ケイブ・ウルフに突き飛ばされた盾持ちの隊員と、巻き込まれた槍持ちの隊員も何事もなく立ち上がったところを見ると、さすがは空挺隊員と感心してしまった。


「ケイブ・ウルフも収納しちゃいまーす」


 今の戦いを見届けた俺は、後ろの方から隊長さんに一声かけて、3匹のケイブ・ウルフを収納しておいた。


 先ほど倒れるケイブ・ウルフから刀を何とか引き抜いた佐高隊長は真っ赤な血を大量に浴びたようで、隊員たちに5分の小休止を告げて、刀を血振りして鞘に収めた後、背嚢からタオルを取り出して顔を拭いていた。


 佐高隊長のケイブ・ウルフへの刀の一振りは見事な一閃だったが、一撃で首を切り落とせなかったのは、刀が刃こぼれしていたからに違いない。


 

 短い休憩の中で、自衛隊員たちは腰を下ろして、水筒の水を一口だけ口に入れていた。俺はコーラのボトルを出そうと思ったのだが止めておいた。俺は空気を読む男なのである。


 あと1時間くらいは水を飲まなくても大丈夫だが、喉が渇いてきたら何か飲まざるを得ないのでその時はコーラではなくそれらしいボトルに水を入れて、華ちゃんとキリアにも渡すことにしよう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ダンジョン発生という特殊状態が起きていたら、超法規的措置を許可する人が要ると思うから政府首班内に対策担当部署が省庁横断的に設置されてると思います、先ずは何ができるかはわからないだろうか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ