第152話 温泉旅行準備。新3人組
そういった感じで和やかにその日の会議も終わり、最後にポーションを卸して俺たちは撤収した。撤収先は俺のアパートのある街の隣り街。ここのところ忙しく飛び回っているのだが、転移があるから移動で消耗しない。スタミナポーションを飲めば気力も回復するとはいえ、これが大きい。
俺は、先週卸したポーション代金21億円が口座に振り込まれていることをスマホで確認して、証券口座に20億だけ振り込んでおいた。振り込みが確認出来たら超優良銘柄を買いに行こうと思ったが、その前に、
「華ちゃん、今週末は熱海に旅行だから、旅行で必要なものを揃えた方が良くないか?」
「そうですね。でも、必要なものはホテル、今回は旅館にたいていの物は揃ってるんじゃないですか?」
「確かにそうか。じゃあ、心配はいらないな。
そうだ! 旅館の中でみんなでゲームして遊ばないか?」
「ゲームというと?」
「8人だから8人でできるゲーム。そうだなー。人〇ゲームとかいいんじゃないか?」
「あれって、8人で遊べたかな? 確か6人までだったような」
「あれ、そうなんだ。いちおうおもちゃ屋にいって調べてみるか。どういったゲームでも誰かちゃんとわかってる人間が必要だもんな。
確か駅前のデパートの中におもちゃ屋があったはずだからいってみよう」
「はい」
デパートに入って、エスカレーターで上に上りながら、階ごとの案内板を見ていったら、かなり上の階でおもちゃ屋を見つけた。
「売ってる、売ってる」
さっそく並んでいた人〇ゲームの箱を手に取って説明を見ると、2人から6人までと書いてあった。人〇ゲームには種類が何種類もあったのだがどれも同じだった。
「残念だな。俺は観客でもいいが、それでも7人か」
「わたしも観客でいいですよ。見てるだけでも楽しいし」
「何回かゲームをすれば、交代してもいいから、とりあえず、このオーソドックスな人〇ゲームを一つ買っておこう。いや、こっちのスペシャルバージョンにしてみるか」
「お金の単位がドルだけど平気でしょうか?」
「みんな数字は分かるから、問題ないだろ。多ければ多いほどいいって分かってれば」
「それもそうですね」
「おっと、この積み木を重ねるゲームは面白くないかな? 俺はやったことないんだけど、何人でもできるんじゃないか?」
「そうですね。ルールは簡単だし、崩れたら崩れたで面白いから子どもたちが喜びそうです」
「こいつも買っておこう」
「岩永さんは将棋とか、チェスってされますか?」
「将棋はちょっとだけ、チェスは全然。ついでに囲碁は完全にわかんない」
「へー、そうなんだ」
「華ちゃんは将棋できるの?」
「少しだけ」
「少しだけって言うけど、実は相当な将棋実力者と見た! 俺は自慢じゃないが、弱いということだけが自慢だ!」
「岩永さんらしいですね」
ラシイとまで言われてしまった。ということは、将棋の弱さは俺のアイデンティティということなのか?
将棋の弱さはどうでもいいが、他にも面白そうなゲームはないかと店の中を見渡してみたものの、これと言ってピンとくるものはなかったので、人〇ゲームとジェ〇ガを精算して店を出た。
「さて、こんなところか。夕食で腹いっぱいになったら、ゲームをするよりそのまま寝ちゃう可能性もあるしな」
買い物を終えた俺たちは、デパートの階段の踊り場に出て、そのまま屋敷に転移して戻った。
その日はそれくらいで、変わったこともなく終え、その翌日。
明日の自衛隊の検証の立ち合いに備えて、一心同体3人揃って、南のダンジョンの第1階層の未探索部分の探索を続けることにした。今回も最初に楽園に跳んでピョンちゃんと合流してからの探索だ。
キリアはもちろん石組型ダンジョンは初めてだったが、確かにキリアには冒険者としての才能があることがよーくわかった。しかし、ここの第1階層はかなり広い。未探索部分をこの日もかなり探検したのだが、まだ未探索部分は相当残っている。それでも、300階段の下の4面に扉のある部屋の単調さに比べればよほど探索に身が入る。俺たちはそれでいいのだが、ただ一人残った女子高生の勇者が仲間を募ってこの第1階層を探索したとして、罠だらけのこの階層を踏破するのは容易ではないだろう。
洞窟型ダンジョンでは宝箱をいままで一度も見なかったが、石組型ダンジョンではそれなりの頻度で宝箱を見つけることができている。これはダンジョンの仕様なのかわからないが、今回も、金貨のほか、複数のスキルブックを見つけることができた。
魔術×1
体術×1
斬撃武器×1
両手武器×1
弓術×1
魔術と弓術は初めて出てきたスキルブックだ。魔術のスキルブックがあるということは、そのうち日本でも魔術師が誕生するということだろう。
それはそれとして、スキルブックは持っていても仕方ないので、魔術は華ちゃんに、斬撃武器はキリアに渡し、両手武器は俺が持ち、それぞれ折って、それぞれのスキルレベルが上がった。でき上りのスキルはこんな感じだ。
華ちゃん、
スキル:魔術:Lv5、錬金術:Lv1、鑑定Lv1、片手武器Lv1、打撃武器Lv2
キリア、
スキル:斬撃武器Lv3、盾術Lv1
俺、
スキル:錬金術:LvMax、アイテムボックス:LvMax、転移術LvMax、杖術:Lv3、人物鑑定、第2職業選択、オートマッピング、両手武器Lv4
俺の人物鑑定では他人の職業が分からないので、キリアに職業は付いたか? と聞いてみたのだが「ご主人さまの奴隷?」と答えが返ってきた。おそらく剣術とか、魔術とかのスキルを持った上で意識することで剣士や魔術師などの職業が付くのではと思っている。実際のところ、そういったスキルがなくても、自分が剣士だと思って剣を振れば十分なのかもしれない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
こちらは、神殿の新3人組。
顔合わせを終えた3人は、軽く南の荒れ地でお互いの役目の確認をすることになった。彼らの後方には神殿兵が6名ほど付き従う。
神殿から3人で馬車に乗って移動しているのだが、馬車の中で、山田圭子は終始無口で窓の外を見ていた。斎藤一郎と鈴木茜は二人並んで山田圭子の向かいに座っている。
向かいの山田圭子の雰囲気が悪いためしばらく二人とも会話のないまま馬車に揺られていたのだが、そのうち二人は小声で会話するようになった。たまにくすくす笑いなどが漏れてくる。
「あなたたち、少し静かにしてくれる!」
とうとう山田圭子は二人に向かって大きな声を上げた。
「ごめん」「ごめんなさい」
斎藤一郎と鈴木茜が山田圭子にすぐに謝ったが、その声が重なっていたことに山田圭子はますます苛立ってしまった。




