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第147話 北のダンジョン第4階層、フレイムタン


 第4階層まで50段ほどの階段を下りていったが、他の冒険者に出くわすことはなかった。


 階段の降り口では手を抜くことなく華ちゃんはデテクトアノマリーをかけ異常のないことを確認している。


 階段を下りた先はこれまでと同じ広い空洞だった。空洞には俺たちのほか、冒険者はいなかったので、華ちゃんはライトの明かりをともし、デテクトライフをかけたが、モンスターは潜んでいなかった。


 今までは階段を下りた先は一本道だったが、ここでは3方向に洞窟が延びていた。階段の正面が本道なのだろうと勝手に決めつけて、俺たちは右手の洞窟の中に入っていった。


 そこからはいつもの探索モードだ。華ちゃんは再度デテクトアノマリー、デテクトライフを唱えた。


 デテクトアノマリーでは赤い点滅はなかったが、デテクトライフで洞窟の先に緑の点滅が見つかった。


「何だろうな」


「まずは斃して後から確認しましょう」と、華ちゃん。


「待て待て、動きは遅そうだからスライムかもしれない。近づいて、できればキリアに斃させたい。危なくなったら華ちゃんがファイヤーアローで斃してくれ」


「はい」


「キリア、いいな?」


「はい。やってみます」


 キリアは鞘から剣を引き抜いた。華ちゃんのライトの光でキリアの剣が光るのだが、ちょっと迫力がある。


 俺も如意棒を構えて、先頭に立ち、


「いくぞ!」「「はい」」


 俺たちは俺を先頭に緑の点滅に近づいていき、緑の点滅の方は比較的ゆっくり俺たちの方に近づいてきた。


「見た目は、スライム? ちょっと違うか。

 あっ! こいつ、ナメクジだ」


「うわっ、

 キリア大丈夫?」


「大丈夫です。

 斬りつけていいですか?」


「俺たちが見てるから、いってみろ」


「はい!」


 キリアが左手に持った丸盾を顔の高さまで上げ、ナメクジに向かって一歩踏み込んで右手に持った剣でナメクジを突き刺した。


 ジュー!


 キリアの剣で突かれたナメクジの胴体から、アイロンをかけたような音がして、そこから湯気が立ち上り嫌な臭いが漂ってきた。しばらくナメクジは体をくねらせていたがすぐに動かなくなってしまった。


 キリアはナメクジを突き刺したあと、そこで止まらずすぐに剣を引いて後ろに下がっている。いい動きをしていた。



「鑑定!

 ケイブ・スラッグって名まえでした」。華ちゃんがすかさずキリアが斃したナメクジを鑑定した。


 俺はナメクジをアイテムボックスに収納し、キリアに向かって、


「キリア、でかした!

 しかし、その剣、普通じゃないな」


「軽く突き刺しただけだったんですけど」と首をかしげている。


「キリア、ちょっとその剣を見せてくれるか?」


「はい」


 ナメクジに突き刺したのだから粘液の跡くらい付いていてもいいものだが、キリアから受け取った剣の切っ先や、刃先には粘液の跡など残っていなかった。


「こいつは間違いなく魔法の剣、魔剣だな。

 よーし、俺がこいつにカッコいい名まえを付けてやろう。

 お前の名まえは、ナメクジキラーだ!」


「岩永さん、キリアが悲しそうな顔をして見てます」と、華ちゃん。


「ナメクジキラーじゃだめ?

 それなら、ぐっと中二病的なカッコいい名まえを授けよう。

 炎は見えなかったが、熱気は感じた! おまえの名まえは『フレイムタン』だ!」


「ご主人さま、それはどういった意味なんですか?」


「炎の舌という意味だ。どうだ、気に入っただろ?」


「は、はい」


 普通、『はい』の語尾は上がってしかるべきものと思うが、今の返事の語尾は若干下がり気味だったような気がする。ここのところ俺の頭の中で、華ちゃんが口にしたように聞こえる幻聴も多いから、今回もそのたぐいなのだろう。


「よし、剣にも良い名まえが付いたことだし、先に進もう」


「はい」「は、はい」


 魔剣『フレイムタン』をキリアに返し、俺は先頭に立って歩き始めた。


 ナメクジを斃した俺たちはそれから5分ほど洞窟を進んだところで、華ちゃんがデテクトアノマリーとデテクトライフを唱えたら、今度は空中に緑の点滅が躍っていた。数は3だ。動きの感じから言って大コウモリだろう。


「おそらく大コウモリだ。3匹いるから一人一匹ずつ斃そう」


「「はい」」


 大コウモリが近づいてきたので俺たちはその場にとどまって迎撃することにした。すでに1匹の大コウモリは華ちゃんのファイヤーアローで頭を撃ち抜かれている。おそらくその大コウモリの頭は吹き飛んでるだろう。


「なんだ? 耳が痛いぞ。

 まさか、大コウモリの超音波攻撃なのか?」


 そう言いながらも俺は近寄ってきた大コウモリを如意棒で叩き落としてやった。もちろんそれだけで大コウモリの頭は潰れてしまった。


 最後に残った大コウモリは形勢不利を悟ったか、逃走しようと背を向けたところでキリアがフレイムタンを一閃。卑怯ひきょう傷ならぬ卑怯分割で、大コウモリは縦に切り裂かれて左右二つになり洞窟の地面にベシャリと落っこちた。


「いちおう、収納しておこう。

 しかし、キリア、今のは良かったというよりすごかったぞ。一気に剣の扱いが良くなったな」


「は、はい。夢中でフレイムタンを振っただけだったんですが、うまく切り落とすことができました」


「才能が最初からあったのかもな。

 いったん冒険者ギルドに戻って、バジリスクを卸してやろう。

 ちょっとした大物だからかなりいい値で売れるんじゃないか?」


「そうですね。それじゃあ、ディスペルマジック」


 華ちゃんのライトと緑の点滅が消え、俺とキリアの緑の点滅が消えたところで、二人が俺の手をとった。


「それじゃあ、転移」





 俺たちは、いつものように冒険者ギルドのわき道に現れたのだが、通りの方が前回の比ではなく騒がしい。いや、騒然としていた。


「まさか、バジリスクが出たとか言って大騒ぎしてるんじゃないだろうな」


「いえ、バジリスクがどうとか聞こえてきていますから、どうもそのせいで大騒ぎになっているようですよ」


「冒険者の生活がかかっている以上、仕方ないことだが、騒いでも仕方ないんだからもう少し落ち着いてもらいたいものだ。

 人にぶつからないよう気を付けてギルドまでいこう」


「「はい」」



 ギルドに入ると、ホールの中も騒然としていた。


 俺たちは人を避けるようにして、なんとか受付カウンターの前にたどり着き、奥の方で話し合いをしていたギルドの職員に向かって、


「あのう、バジリスク2匹斃したんで報告にきましたー」と、大声を出したら、騒然としていたホールの中が、少しずつ静かになっていき、そのうち物音一つしなくなった。


「バジリスク2匹、裏の解体場に持っていけばいいですかー? それともここで確認しますかー?」


 今朝俺たちを対応してくれた窓口の女性が血相変えてカウンターまで走り寄り、


「一心同体のみなさん。本当ですか?」


「もちろん。第3階層で2匹見つけたので斃してきました。

 ここに出しましょうか? かなり大きなトカゲだったからここに出すのはキツイかな?」


「一瞬だけ出していただけますか?」


「それじゃあ、ホールの真ん中あたりに出します」


「お願いします」


 アイテムボックスから2匹のバジリスクをギルドのホールに並べて出してやった。


 頭の先からしっぽの先は10メートルよりちょっと長いくらいだと思っていたが、もっと長くて、しっぽの先がギルドの扉から外にはみ出してしまった。アイテムボックスからだした拍子にしっぽが揺れたものだから、一瞬ホールの中は騒然となったが、すぐに収まった。


「バジリスク2匹、確認しました。

 アイテムボックスにおしまい下さい」


「これも裏の解体場に持っていけばいいんですよね?」


「申し訳ありません、このギルド支部ではバジリスクの解体はできませんので、引き取ることもできません」


「どうすればいいですか?」


「申し訳ございません。わたしでは分かりませんので、しばらくお時間をいただきギルドで調べさせていただきます。

 それで、一心同体のお三方は、これまで該当する者がいなかったため不在だったAA相当に昇格すると思います。これについては、後日お知らせすることになると思います。昇格が決定され次第、掲示板に貼り出しておきますのでご確認のうえ、窓口にお越しください。えーと今日登録された、……」


「キリアです」


「とりあえず、キリアさんはAランク昇格ということにしますので、冒険者証をいただけますか?」


 俺がキリアの冒険者証を預かっていたので、俺から、冒険者証を渡しておいた。


 3分ほどで冒険者証ができ上り、キリアが受け取った。


 華ちゃんの時も一気にAランクまで昇ったが、キリアも一気に昇ってしまった。


 俺たちは静かになったギルドホールを出て、まだ騒然としている通りを歩いてわき道に入り、屋敷に転移した。


 アイテムボックスに入っている2匹のバジリスクだが、何かの役に立つのだろうか?





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― 新着の感想 ―
[気になる点] どこでも良いけど、まずは自衛隊辺りに提供して、効果を見てほしいなぁ、子供達は異世界転移してない、、、あ、してましたね、 強力な個体の肉を食べたらレベル上がったり能力上がったりスキル覚え…
[一言] 日本に売りなさい。外貨も稼げるぞ
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