第118話 初めてのお買い物1
相変わらず誤字が多くて申し訳ありません。
田原一葉を日本に送り返し屋敷に戻った俺は、応接室の後片付けをしてそれから食堂に向かった。
「あれっ? 先に食べててくれって言ったのに」
みんな食事に手を付けず俺を待っててくれたようだ。
俺は急いで席に着き、
「いただきます」
「「いただきます」」
10分以上待たせたことになる。食事は冷たくはなかったがだいぶ冷めてしまった。
今回だけということで許してもらおう。
華ちゃんは何も言わず俺の正面で食事している。田原一葉のことを何も話さないのも変なので、
「田原一葉は日本に送り返した」
「そうだったんだ。田原さんがすんなり帰ったということは、日本の家庭の方が良かったんですね」
「神殿でどういった生活をしていたのかは知れないが、日本の方がいいと思ったんだろうな」
「山田さんは一緒じゃなかったわけだから、田原さんは山田さんを見限ったってことですか?」
「おそらくそうなんだろうが、詳しい事情は聞いていない」
「聞いたところで意味ないですものね。
でも、レンジャーの田原さんがいないと、勇者一人でダンジョンの探索などできないし、どうするんでしょうか?」
「さあな。どこかから人を雇ってくるか、俺たちの時のようにまた人を拉致召喚するか。どっちかじゃないか?」
なんだか、華ちゃんが元気になったようだ。そんなものなのだろう。
昼食を終えて、デザートのアイスをみんなに配り、
「明日、防衛省にいったら、田原一葉の件を話して、防衛省から警察へ連絡してもらった方がいいだろうな。失踪届は今日中に取り下げられるかもしれないが、『失踪中の女子高生』が見つかった。とか、マスコミが騒ぎ出す前に、俺たちにとばっちりが来ないよう動いてもらった方がいいだろう」
「そうですね。うちの親が田原さんに接触したら嫌だけど、おそらくそれはないから大丈夫でしょう」
何だか話が重くなりそうだったので、その話はそこで打ち切り、
「国語の勉強もみんな捗っているようだから、そろそろ真面目に温泉旅行について考えた方がいいな。
明日、とりあえず旅館の予約だけでもしておこうか? 来週か再来週末、2泊3日くらいで」
「いいですね。それじゃあ、先にみんなを連れて洋服を買いにいきませんか?」
「そうだな。華ちゃんが引率する分には違和感ないから、俺が外で待ってる間に買い物すればいい。
せっかくの遠出だし、スーパーで買うよりデパートの方がいいものがあるだろうから、隣町のデパートにでも行くか?」
「この前初めてスーパーの洋服売り場にいったんですが、デパートの洋服売り場と比べて人の数が少なかったので、最初はスーパーで普段着を揃えて、その後デパートでちゃんとしたものを揃えた方がいいと思います」
「確かに。じゃあ、そういうことにしよう。
おっと、明日は木内さんを連れて帰らなけりゃいけなかったんだ。
となると、今日の午後からのダンジョンはよして、買い物にいこうか?」
「そうですね。週末なので人が多いかもしれませんがそれほどでもないでしょう」
「みんな、そういうことだから、午後になったら、俺の国のお店にいって買い物をするぞ。服を買うだけだし、何を着ててもそれなりに違和感があるが、よそさまの子どもをとやかく言う連中はまずいないから今着ている服で大丈夫だ」
「「はい!」」
アイスクリームを食べ終えたところで、
「俺と華ちゃんは着替えてくるから、後片付けが終わったら居間で待っててくれ。
俺は先に居間に置いてた鎧の類を片付けないとな」
「岩永さんの鎧やヘルメットは岩永さんの部屋に運んでおきました」と、華ちゃん。
「サンキュ」
「それじゃあ、俺たちは着替えにいこう」
「はい」
俺と華ちゃんはお互いの部屋に戻ってワークマ〇スーツから日本用の普段着に着替えた。
居間に下りていったら、後片付けも終わったようで華ちゃん以外みんな揃っていた。しばらく待っていたら華ちゃんもやってきた。華ちゃんの格好はさっきの田原一葉と同じだったが、そこは仕方ないよな。
「それじゃあ、みんな俺の手を取って」
全員俺の手を取ったのを確認して、俺はいつもの大型スーパーに転移した。今回は人数も多かったので、スーパーのトイレに近い人気の少ない通路ではなく、スーパーの脇の小路に転移している。
「「大きな建物」」。スーパー脇の小路からスーパーの建物を見上げて子どもたちが驚いている。
小路からスーパー正面に回り込んだところで、正面の道を自動車が通った。
「ちっさいタートル号!」
「あっちにも!」
初めて見れば楽しいよな。
「中に入ろう。5人はエスカレーターが初めてだし、つまずいたりしたら危ないから階段で上った方がいいと思うぞ」
「そうですね」
「俺は、そこの出入り口の前で待っているから後は頼む。金は10万じゃ足りないだろうから、100万渡しておこう」
「100万円は多すぎじゃありませんか?」
「じゃあ、50万か」
俺は、アイテムボックスから1万円札を50枚取り出して華ちゃんに渡した。華ちゃんはバッグなど持っていないので、ポケットにそのままお金を押し込んだら、ポケットが膨らんでしまった。
華ちゃんが5人を引率して階段の方に歩いていったので、俺は食料品売り場に回って、牛乳や生玉子といった生の食料品を買い込んでいった。
その後俺は、食料品売り場の手前に文房具を売っている一角があったのを思い出したので、小型の白板と赤黒のマーカー、ちゃんとした鉛筆やら消しゴム、鉛筆削りに、ノートなどを買っておいた。
みんな自分のサイズを頭の上から足の先まで知らないはずだから、今回の買い物はかなり時間がかかりそうだ。
こちらは、三千院華に引率されたいわゆる異世界人5人。見るものすべてが珍しいのでキョロキョロしている。明らかに日本人ではないので、そういったところが逆に目立たないようだ。
「ハナおねえさん、ゴミ一つ落ちてなくて、床はツルツルだしすごいところだね」
「さっき見えた売り場?がすごく広かったよ。こんなに広くて大きなお店、初めて」
「天井の明かりがすごく明るい。屋敷にあるスタンドとおんなじくらい明るいね」
「ハナさんも、ご主人さまも、こんな世界で暮らしてたんですね」
階段を上がった2階は、衣料品売り場だ。種類別に商品は纏められているが、色違い、大きさ違いなど同じ商品でもたくさんの種類がある。
「まずは靴下からかな。その後は運動靴、下から順に買っていきましょう」
先頭の三千院華がカートを1台押して靴下売り場に。その後を5人がぞろぞろとついていく。
「そっちは男物だから、女物はこっちよ」
「足の大きさに合っていないと、脱げてきたり足が痛くなったりするから、だいたいでいいから足の大きさに合わせて選んでね。
わたしは、店の人にメジャーを借りてくるから、みんなはここで靴下を選んでいてね」
三千院華は店員を見つけて、メジャーを借りてきた。一人一人片足の靴を脱がせ、簡単に足の大きさを計ってやり、
「エヴァちゃんは、20-22て書いてあるのから選んで」
「オリヴィアちゃんは22-24ね」
……。
国語の授業で数字も教えていたのが幸いして、みんな言われたサイズの靴下を見つけることができた。これが善次郎だったら、好きなものを選ばせ、あとでサイズ調整したのだが、華はそのことを失念していたのでちゃんとしたサイズのものを各人に選ばせた。それでも善次郎が何でも簡単にコピーできることは覚えていたので同じものは1つだけしか買わないことにしている。