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8 平常心

 あの日記?を読んでしまったダメージは、かなり大きい。いくらなんでも想像を超えた内容だったから、日帰り温泉旅行から帰ってくる両親を迎えるまでに気持ちを落ち着かせないとまずい。勘のいい母に何かがおかしいと絶対に気付かれる。それが何故なのか、理由まではわからないにしても、怪しまれる。何か気持ちを落ち着かせる安心材料を見つけないといけないと思った。


 そうだ!校閲するつもりで読むって決めていたんだから、間違いや矛盾点がないかという観点で考えればいいんだ。


 最初のページにあった「高揚した」って文字がとても気になったけど、次の内容では「嬉しいものではなかった」って書いてあったから、矛盾してる・・・


 その次に気になったのは「良くない人が関わる」っていうところだった。でも、登場したのは「先輩に部屋を貸していた後輩」だけだった。その後輩が良くない人に繋がっていたんだろうか?でも逮捕されたメンバーの中にいたような気がするって書いてあったから、やっぱり関りがあるのか・・・


 うーん、やっぱり創作されているのかな?それに、その後に付き合った人はもっと良くない人で、あの新聞記事だけでも衝撃的だったのに、その後の事件は週刊誌にまでって書いてあったから、もう私の想像力ではついていけない。あーーーほんとに厄介な物に興味を持ってしまったよぉ。


 他の安心材料を見つなきゃ!楽しい思い出を振り返ってみよう!


 妹が事故の入院から帰ってきた翌朝に、私たち姉妹がいる和室に母が静かに入って来て、寝ている妹の顔を優しい顔で見ている。姉と私はそれに気が付き、起き上がらないで母の動きを見ていた。私たちと目が合ったので、母がしーという仕草をしながら小さな声で

「顔の腫れが少しひいてるね。傷も髪で隠せるし、女の子だから丸坊主とかにならなきゃ目立ったりしないだろうしほんとに良かった。」

「お母さんは澄香が可愛くて仕方がないんだよね?」姉が昨日の私たちの会話で知った誰が一番可愛いのかを確かめようとしている。

「そりゃー末っ子だもん、花梨よりずっと小さいんだから。」

「ふーん、小さいからねぇ・・・」

「なに?焼きもち?」と言いながら姉が寝ている布団の上にささっと覆いかぶさった

「やっなに? 重ーーい!」

「ふふっ動けないでしょ、あなたは大きくなったからこんなの嫌がるからしなかったけど、チュー攻撃だ!」


 姉の両頬にキスの嵐


「やだっ! まじでキモイ! やめて!」嫌がる言葉を口では言っているのに、姉の顔は嬉しそうだった。


 母の動きが止まった。そして私の方を見た。嫌な予感。


 はぁ・・・ 私もチュー攻撃を受けたのだ。


 姉妹の誰が一番可愛いとか、どうでも良くなった。私が思うに分け隔てなく可愛がってくれていたんじゃないのかな?と感じる行動だった。


 そして、あの日記?の内容が本当なら、あんなに明るい人になれるんだろうか。やっぱり母の小説なんじゃないかな? あの臨場感は気になるけど、一般の人が遭遇するにはかなり確率の低い事ではないだろうか。矛盾点もあるし。恋愛ドロドロ系のドラマを好んで観る人ではない。どちらかというとアクションとかミステリーが好きなんだけど、実は普通に考えたらあり得ないシチュエーションが好きだったりするのを隠してたりする?


 がん闘病中に創作するにはヘビーな内容だけど、一人で寝室でふらふらになりすぎて、反対に振り切ってたんじゃないかな。お母さんファンキー過ぎるよ。


 徐々に気持ちが落ち着いてきた。これなら両親が帰宅しても普通に迎えられる。

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