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4 活き活き

 抗がん剤の副作用の嘔吐も少なくなった頃、隣接県にラジウム鉱泉があると知り、車でしか行けない場所で3時間程かかるのだが、どうしても行きたい。でも、その時間を家族に付き合わせるのは悪いから一人で行く!と、かなり強く主張するので、何かあっても誰かが迎えに行ける週末にならいいんじゃないか?って事で許した父。


 嘔吐が酷かった時は、のどが切れて血液混じりだったり、胃の中で血液が変色して茶色くなった吐瀉物を必死に見られないようにしていたし、茶色くなっていたって事は胃からの出血もあったようで、夜中にお腹の激痛で体を丸めて動けないのに声も出さず我慢してるのに父が気付き、治療に通っている病院の夜間救急外来に連絡して、脱水症状緩和と痛み止めとビタミン補給の点滴をしてもらって明方に連れ帰って来るのが数回あった。


 その嘔吐ピーク時と比べると回数も減ってきていたし、食事もお粥やうどんを段々と量が増えていって、消化のよさそうなものなら普通に食べれるようになったから許可する気になったんだろうなぁ


 天気予報で明日が快晴となる見込みの金曜日に、明日はラジウム鉱泉に行く!と宣言して、ウキウキしながら準備している姿を見ていて、こちらも嬉しくなった。


 でも、3時間の道のりを一人で運転して行くって、やっぱり心配なんですけど。そんな家族の心配なんて何てことなく気にするような素振りもなく元気に出掛けて行った。


 父も心配しているからか、スマホの着信音を最大にしているから、アプリの通知音でビクッとしている。心配なら許可しなきゃ良かったのに。それか、一緒に行けば良かったのに。時間をもてあそんでいるからそのお陰で私の愛車の洗車をしてくれる事になったからいいんですけど。


 夕方になる頃に、これから帰りまーす!と家族グループLINEにメッセージが入ってきた。それから3時間半ほどで無事に帰ってきた。


 湯治場なので、髪がなくても恥ずかしくなくて堂々と入れたし。肺腺がんで余命1年と言われてから、うちはここから近いから毎週末に家族に送ってもらってここに通ってもう5年過ぎたのよ。私には抗がん剤治療と、ここのラジウム鉱泉が合っているんだね。と先生からも言われてるから、あなたも合ってるといいわね。またここで会えたら私も嬉しいから来れる時はまたいらっしゃいね。と言ってくれたサバイバー先輩に出会った話と、車の中って一人カラオケ状態にできるから、ガンガンに歌いまくっていたらあっという間に着いちゃったの!帰りもカラオケ状態、しかも、山の中は窓を開けて解放感満喫したった!と活き活きと話をしていた。


 嘔吐し過ぎて、のどがいたぁーい。酸っぱくない物でものどにしみるー!とか言っていたのが噓みたいなんですけど…


 それから天候が悪くない週末は温泉に行くようになってから、どんどん体力を回復しているように感じた。寝室で一人で過ごすよりも、外で生のサバイバー情報を得られるのはとても新鮮な様で、帰ってくると今日はどんな人がいて、こんな事があったんだよ。と、今日の報告をする小学生みたい。誰が親なんだかわかんないですけどぉ


 母が楽しそうだから聞いている父も嬉しそうだから、この家族団欒の時間を大切にするのもいっか。

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