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1 発見

 母は乳がんを患っても、早期発見のお陰で治療し、1年半の休暇はあったものの仕事に復帰。


 乳がん治療が始まる前も、そして現在もとにかく活発で、毎日を楽しんで生活しているような人で、そして、かなり大雑把な性格。


「家計簿つけるために、毎日チマチマ計算なんて、やってられないよね~」と言い、日々の振り返りと細かい計算はしないのですが、興味があるものや、仕事で必要な事を調べたり、勉強することは嫌がらず、本やテキストが多くあるため、母専用の本棚がある。


 Microsoft関連の知識が必要になったので、母にテキスト等を借りていいか確認して母の本棚内を探す事にした。

 上段に置いてあるのが最近のお気に入りのようで、鉛筆画の書き方関連、仕事で使うRPA関連とコミックの「ミステリと言う勿れ」、中段以下は過去に没頭していた手芸、園芸、文庫本、パソコン関係、古いコミックで「あさきゆめみし」、フィフティシェ・・・ うーんこれは官能小説じゃなかったっけ?いろんな分野にまたがってまとまりがないなぁ。


 そんないろんな本の中に紛れるように置いてあるライフノーブルノートを見つけた。

 これ、ノートなのに本棚に立てておく?それに使い込んだ感があるし、わざわざ本棚に置いてあるって事は、何かのレシピ集かな?


 内容が気になり、最初のページを開けた。間違いなく母が書く文字が目に入ってきた。


---

 乳がんサバイバーとなった私は、がん闘病中に、若かった頃の無茶や悪行を悔やんだ。

 今更こんなに後悔しても遅いのだけれど、その事は家族や友人に言えないくらいの事だったから、過去を悔やみ改めるために、パソコンとかスマホに記すのもいいけど、やっぱり自分の手で文字に書き起こして、そしていつか焼いて捨ててしまえるよう、乳がんを克服しちゃるぞ~!

---


 えっ…


 家族に言えないってどんな事をしたの?抗がん剤治療している時は見ていられないくらいに嘔吐したり、食事もとれずフラフラしてて激やせもしたし「昨日もあまりよく眠れなかったから、みんなが帰ってくる頃にうたた寝してるかもしれないから、晩ご飯が作れてなくても許してね。」という日が多くあって、この様な書き物ができるような余力もなさそうだったのに、いつこれを書いていたの?今は元気でこの日記?の事なんて忘れてるかのように生活しているのに?


 続きが気になりページをめくってしまった。


---

 世間一般からすれば不良と言われる行いの数々、迷惑をいっぱいかけた人が多くいるから、恨まれていて当然だと思う事がある。


 体に悪いと知っていても惹かれる嗜好品、まず、タバコ、いきがって高校生の時からたまに吸っていた。飲酒、これもタバコと同じ頃からかな?不良だからだけど、周囲には真面目とは言えない人が多かった。


 社会人になってすぐに付き合った年上の彼から「ちょっと普通のタバコとは香りが違うけど、美味しさが断然違うから。」と、勧められたタバコを吸った。そのタバコを勧められたのは数回だけど、その時の感覚をはっきりと表現できないけど、めっちゃ高揚して気付けば、ええっ?こんなはずい事したの?とか、ありえん!最悪や… という事もあった。あれは何だったんだろう?でも体に悪いものだったんだろうな、という不確かな感覚はある。

---


 ええっ!いきなりこんなヘビーな内容ってありえんくない?不良だったと聞いた事はあったけど。

 続きが気になるのだが、いつ母が「欲しい本あった?」なんて、部屋に入ってくるのかわからないため、いけないなぁと思いながら数ページだけスマホで撮影し、本棚に戻して必要な本だけを手に取り私の部屋に戻った。


 もう一度、読んでもいいのか悩んだのだが、やっぱり続きが気になってしまいスマホを見てしまう。


---

 その人が私と別れてから数年後に新聞に載った。大麻密輸をしていたグループの一員だったと…

 私と付き合っていた頃からだったの? いや、数年前だし、その頃に海外に行ったという話なんて聞いた事もなかった。あの人と別れた理由はその事件に繋がるような気がする良くない人が関わる私にとって壮絶な事だったから。

 さらに、数年後にこんな事実なんて知りたくもないわ!なんて怒り狂った事を鮮明に思い出す。


 しかも良くないお付き合いって続くんだよね…

 次の彼も、私と別れた後でまた新聞に載った。記事は週刊誌にまで掲載されるような事件だった。その事件も、この人と別れるきっかけも、前の人とは比べ物にならないような事だったから、頭を整理してからじゃないと… それに、書いてもいいと心に踏ん切りがついてから書こう。

 とにかく、これから少しずつまとめてみよう。

---


 父は娘の私から言うのもなんだけど、真面目で優しくて、ごくごく平凡なサラリーマンなのだ。そんな父とこの日記?に書いてある人達とはどう考えても共通点が見つからない。きっと母が更生してから出会ったんじゃないのかな?と良いように想像しながらだけど少し安堵した。


 続きには、私が知ってはいけないもっと悪い事が書かれていそう?

 実は、母のフィクションで、小説っぽく書いていたものかもしれない?だけど、あのお母さんんがコツコツと小説なんて書くのかな?


 母の性格や、今までの母の行動を振り返ってみた。妹が幼い頃に自動車事故にあい、救急車で運ばれ病院に到着した時に妹に掛けていた言葉。


 姉が反抗期に家出しようとしているのを発見して説得した時。


 健康診断で乳がんの可能性があるので精密検査して検査結果一人で聞いてきて家族に報告した時も「乳がん確定でした。全摘は免れないんだって~ あなたたちを育てた胸は、もうお役御免だからすっぱりと取ってもらっていいよね~」と笑顔で話していた。

 抗がん剤の副作用で、どんどん髪が抜けていった時も取り乱したりせず、妙に落ち着いていて冷静だったのは、日記?に書いてある様な過激な経験をしてきていたからなのかもしれないなぁ… と、なんとなく納得できるのでした。


 日記?が置いてある本棚のある場所は両親の寝室だから、そんなに頻繁に出入りが出来るわけではない。私の勤務先は、母より遠いため家を出るのが母より早い。帰宅もどう頑張っても、やっぱり母より早くは無理だ。休日も同じだし。


 続きは母がいない時に、また盗み読みさせてもらうことにしよう。

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