雑貨屋「夜露堂」 #2
いらっしゃい。おやおや、これはまた、随分と降られてしまったようで。風邪をひいてしまいますから、早くこちらへいらっしゃいな。
すぐにストーブを焚きましょう。タオルが必要ですね。温かい飲み物も用意しないと。そんなに気を遣ってもらわなくても大丈夫? そんなわけがありますか。風邪を引いてしまっては大変です。はい、このタオルを使ってください。
……よい、しょっと。ストーブはこの辺りでいいですかね。申し訳ないですけど、寒かったら近づいてくださいな。服も用意できればいいのですが……あいにくうちには和服しかないものでして。この頃の方は着慣れないでしょうから……本当、すみませんね。あぁ、ここにタオルを置いておくので、好きに使ってくださいね。
さて、飲み物をご用意いたしましょう。何がいいですか? ……えぇ、わかりました。すぐにお出ししますね。それまで、ストーブにあたっていてくださいな。
しかし、今日は少し冷えますねぇ。
はい、お待ちどうさま。……美味しいですか? それは良かったです。
それにしても、あなたとは雨の日にご縁があるようで。私、少し心躍ってしまいました。……まだ2度しか会ってない、ですか? いえいえ。一度は偶然としても、2度は必然……そうは思いませんか? はぁ、思わない、ですか。あなたとはなかなか意見が合いませんねぇ。ちょっぴり残念に思ってしまいます。
そういえば、本日はどうしてこちらに?
いや、お客さんの事情に首をつっこむ趣味なんてこれっぽっちも無いですが。少し、気になってしまいまして。近くはないところに、どうしてやってきたのか。
……いや、やっぱりやめておきましょう。不要な詮索は不評にもつながりかねませんしね。
それにしても、今日はやけに雨が強いですねぇ。
おや、暗い顔をしていらっしゃいますね。どうかなさいましたか? ……やっぱり雨は嫌い、ですか。うーん、また嫌われてしまいましたねぇ。え、私のことじゃない? アハハ、そのくらい、ちゃんとわかっていますよ。
それより、よく私が店主だとわかりましたね。……他に誰もいないみたいだから、ですか。
……あぁ、なるほど。そういうことですか。でも、いないことはないんですよ? ホラ、今だってそこに……。フフ、からかっているわけではないですよ。ほんとです。そんなに怒らないでくださいな。
それより、今日も素敵な雨の日ですよ。あなたにとってはそうでなくても、私にとっては素敵な日です。ぜひゆっくりしていってください。
雨が、止んでしまうまで。
不気味、ですか? ……フフ、ずいぶん面白いことをおっしゃる。
私は向こうにいますから、何かあったら呼んでくださいね。
それでは。
色々あって機会を逃し続けてましたが……夜露堂の第2話です。
これほどに自己満足度の高い文章を読んでくれる方がいると思うと、とてもありがたいです。その上で、私が書く文をほんの少しでも気に入ってもらえたのなら、これ以上嬉しいことはないです。なんて、贅沢ですかね。
相変わらずの稚拙さですが、今後も精進していくので温かい目で見守っていただけると安心して執筆に取り組めます。
最後に。ここまで読んでくださり、ありがとうございます。現在、別の超短編集も作成中ですので、公開されたらそちらも読んでいただけると……なんて。ワガママは良くないです。
またいつかの雨の日に、あなたに会えることに期待を込めて。
夜露堂はあなたのご来店をいつでも心より歓迎致します。