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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

撮り鉄

作者: 骸兎

 暑い日。旅行の帰りだったな。


 田舎の駅のホームの端っこでさ、大の男達が5人くらい集まってたんだ。三脚立てて、デカいカメラ持って。

 撮り鉄っていうんだろうな、って思いながら、俺はそいつらの背中をぼんやりと見てたんだ。そしたらいきなり騒ぎ出してさ。


「おい邪魔だ!」「なんだこのガキ!」「ふざけんなぶっ殺すぞ!」


 ここからじゃ見えなかったんだけど、子どもがカメラの前に居るんだろうなって、そんな騒ぎ方だった。迷惑な連中だなって、思ったね。

 そしたら


『――間もなく、回送電車が参ります――』


 ってアナウンスが。

 撮り鉄達もどんどんヒートアップして、


「おいはやくどかせどかせ!」「ぶっ殺せ!」「こいつひっぱりやがった!」


 俺も止めようかと恐る恐る近づいて、でも、子どもの姿も見えないし、声も聞こえないんだ。撮り鉄の連中が勝手に騒いで暴れてるようにしか見えないんだ。

 そんで、俺の足が止まってしまった。


 そのうちホームの外側に立ってた撮り鉄が、バランスを崩してさ。

 あっ。

 と思った時には遅かったよ。


 駅のホームが真っ赤に染まって、撮り鉄だったものの肉片がそこら中に撒き散らされた。眼鏡が壁に刺さってたよ。

 阿鼻叫喚ってのはああいうのをいうんだろうね。


 それで問題は、撮り鉄の見てた『子ども』ってのはなんなのかって事なんだけど。


 あれ、この世界に普通に存在しているものじゃ無かったんだ。カメラ越しにしか見えなかったんだよ。

 きっとあいつ、カメラに映りたかったんだろうな。


 なんでそう思うかって?

 だって俺も見たからさ。


 ぐちゃぐちゃに飛び散った死体と血の海になったホームを見たらさ、誰だってスマホを向けて、カメラを起動するだろ?


 そしたら見えたんだよ。

 画面いっぱいに、真っ赤な顔の子どもの笑顔が。

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― 新着の感想 ―
[一言] 画面いっぱいに、真っ赤な顔の子どもの笑顔が写ってた。 怖いな~。
[一言] >誰だってスマホを向けて、カメラを起動するだろ? 誰だってはしないんだよなぁ… でも現代日本だとする人の方が多いんですかね? 怖い怖い
[一言] いろいろと怖いんですけど、一番ゾッとしたのは見るもトラウマになりそうな事故シーンを撮りたくなる主人公の考えが……怖い。
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