復讐してやる!
いままで優しかった街の知り合いが悪魔のような形相で石を投げつける。
身体に当たると痛い。……痛いのは心だ。
レティに投げつけられた時、俺心が壊れたと思った。
……この力のおかげで俺の心は壊れなかった。
むしろ俺は身体が傷つけば傷付くほど、俺は英雄に対しての恨みがましていった。
俺の母さんと父さんを返せ。
俺の幼馴染を元に戻せ。
お前らは絶対許さない。
死んでも必ず呪い殺してやる……
俺は処刑台に上がるよう促された。
処刑に立ち会うのは聖女ミニと忍者ナードであった。
レオンハルトがマジックマイクを持って民衆を扇動する。
「帝国の皆様、帝都で悲し事件が起きました……私は悲しいです……このような痛ましい事件を未然に解決出来なくて……」
悲しそうな声色で民衆に訴えかける。
うつむいていたレオンハルトは顔を上げた。
「でも……私はこんな凶悪犯罪に負けません!! 私達英雄はあなた達を守る義務があります!! 私を信じて下さい……必ずあなた達を守ります!!!」
民衆のボルテージが上がる。
「うおぉぉぉぉぉ!!! レオンハルト様!!」
「きゃーー! かっこいい!!」
「そんなクズは早く殺して!!」
「はぁはぁ、ミ、ミニ様……萌……」
「渋いですわナード様!!」
――なんだこれは。この世界は狂っているのか? もしかして俺の力のせいで、俺だけまともなのか? ……いや流石にそれはないだろう。
だけどこの世界はおかしい。
こいつら英雄に虐げられた奴は俺以外にいるはずだろ?
……まさか、テロリストって? そうなると魔王討伐も怪しいものに見えてきた。
ナードが俺の首根っこを掴んだ。
「おい、なんか考え事してるけど、てめえはどうせ死ぬんだよ。ひひ、俺の刀で首を落としてやるぜ!!」
「あ、バカナード! 私のとっておきの魔術でバラバラにするんだから、もう!」
――ははっ……こいつらは本当に人の命をなんと思っていない。
――俺はこんなところで死ぬのか?
――いやだ。絶対俺は死にたくない。
――俺はコイツラに復讐するんだ。
――母さんと父さんの敵を打つんだ。
――どんな苦しみも耐える。
――俺は強くなるんだ!!!
俺は空に願った。
頭が割れんばかりの祈り。
俺の頭の中で不思議な声が聞こえた。
(――召喚転位プログラムが起動します。対象者を転位します)
奇跡が起きたと思った。
ナードが刀を振りおろした瞬間、俺は光に包まれてこの場から消えてしまった……
俺は目を覚ますと全く知らない場所にいた。
どこかの建物の中だろうと思うけど、部屋が鉄で出来ていて機械だらけだった。
変な白い服を着た人族がたくさんいる……
そんな中、俺の前に一人の女性が歩いて来た。
俺と同じくらいの年だろうか? 肌艶は恐ろしく綺麗だ。思わず状況を忘れて見惚れてしまう美貌。
その少女は柔らかい声で俺に話しかけてきた。
「……魔王様、この世界にようこそ。どうか私達を救って下さい!! お願いします!!」
どうやら俺は異世界に転位をしてしまったようだ……