悪魔の所業
「ていうか私飽きたわ。……その子で遊んでいいかしら?」
ミニ様が僕を指差して微笑んだ。
ナードが吐き捨てる様に言った。
「あん? 好きにしろよ。お前は趣味が悪いからな。あんまりぶちまけるなよ? 後処理が大変なんだよ……さて……」
ナードが母さんに近づく。
その時父さんが動いた。
「や、やめろ!! 妻に指一本触れるな!! お前らは偽物だろ! 英雄様なんかじゃない! うぉぉぉぉ!!」
父さんの手には短剣が握られていた。
短剣がナードの背中に刺さった。
「おいおい、どこ刺してるんだよ? ひゃひゃ!! こっちだバカ!」
父さんの短剣は母さんの胸を貫いていた。
「あ、あなた……いいのよ……これで幸せなまま……」
「あ、あああ、あああああ!!! クリス、クリス!!」
ナードは父さんの後ろへ移動していた。
「てめえ、英雄である俺を殺そうとしたな? それは罪だ。死んで償え」
その瞬間父さんの身体が爆散した。
母さんは目を開けない。動く気配がない。
俺は……わけもわからず叫んでしまった。
「うおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」
聖女がため息を吐いた。
「はぁ……後処理が面倒な事になったわね……まあ今回も大丈夫でしょ」
ナードが母さんの……遺体を蹴りつけた。
「くそっ! せっかくいい女だったのによ……死体とヤル趣味はないぜ。あー、俺娼館行ってくるわ」
「ふふ、いってらっしゃい。あんまり壊さないでね」
「……お前もな」
部屋には俺と聖女ミニだけとなった。
父さんだった物が散乱していて、母さんの遺体が転がる部屋で……俺は……聖女ミニに執拗な拷問を受けることになった。
「ここ刺したらどうなるかな?」
「うーん、とりあえず爪剥がそっか?」
「半分燃やしていいかな?」
「何本ささるかな?」
「薄皮むいたら全身真っ赤になるね!」
「目玉って美味しいのかな?」
「あ、やばいやばい、臓器がこぼれちゃうよ! ほい、『レッサーヒール』これでまた初めからだよ!」
地獄でもこんな苦しみはないだろう。
死ねると思ったら回復される。
俺は永遠に続くこの無限地獄を……
――絶対許さない。
――こいつらが英雄?
――そんなワケない。コイツラは悪魔だ。
――俺は絶対屈服しない。生き残ってやる……
朝日が部屋に入り込んできた。
「ああ〜もう終わりだよ……楽しかったね! また遊ぼうね! 最後にこれあげるね! 『リジュネヒール』『ホーリーファイア』」
光輝く炎が部屋を覆い尽くす。
俺は燃やされながら再生を繰り返す。
永遠に続く苦しみ……
母さんの遺体が炎に包まれて燃え上がる。
父さんが大事にしていた宿屋が燃え上がる。
この日帝都で有数の宿屋が一晩で消えることなった。




