そして伝説へ……
「ぐぼぼぼぼぉぉぉぉぉ!!! ――マ、マジカルバリア! あ、駄目! ――ああ、身体が……」
極大の光の柱がレティのマジカルバリアを消失させる。
レティの強大な魔力をものともせず、レティの身体を丸焦げにする。
――これ、聖属性だから、悪魔に効くんだけどな……、まあ悪魔みたいな女だしな!
光の柱が収束する。
そこに残されたのは、レティであった人の肉塊であった。
「ふん、これでこの世界も平和になるか……。レティ、俺の初恋の女。あばよ……」
俺は廃墟と化した帝都をバックに渋く決めてみせた!
吹き飛ばされたリスコとシズエが戻ってきた。
「ノワール……倒したのね!」
「ああ、さすがノワール……」
二人とも俺を見てうっとりとしている。
――さて
俺はスマートマジックを持ってへたり込んでいる犬獣人のテロリストの親分に話しかけた。
「これでお前が世界の王様だ。この世界を好きにしろ。だがな……もしもこの世界の平和を乱したら、俺達が成敗しにくるぞ!!」
わんこ獣人が恐れおののいた!
「ひいぃぃ!? わ、私がこの後始末を?? え、私の仲間は? 帝都はどこ?」
「知らん! 後は勝手にしろ!!」
わんこ獣人は呆然と立ち尽くしてしまった!
「さて、祝杯でもあげるか。俺たちは南にある『エルフの里』にでも居候するか。そこでのんびり余生を過ごすか……」
「はいさ!!」
「ノ、ノワール。ご、ご褒美は? い、いや無理ならいいんだが……」
「もちろん二人にはのぞみ通りの物をやろう!!」
「「やった!!」」
俺たちがぐだぐだ喋っていると、レティだった塊に何者かが接近した。
「む!? ――ガトリングガン!」
俺の銃が火を吹く。
だが、不可思議なバリアで全て止まられてしまった。
――この弾丸は特別だ。これを止められる者は……ちょっとしかいない。
「貴様は誰だ!!」
レティの塊を赤ん坊を抱きかかえるように胸に大切に収める女?
地味な顔。
貧相な身体。
男か女かわからん。
誰だこいつ?
男女が口を開いた。
「……私の計画をよくも……許さないわ!! 私はレオンハルトの秘書『ピーコ』よ! この世界を混沌へと導く邪神様の使い。あと少しで世界中が英雄によって裏切られて苦しみながら滅びる予定が……貴様のせいだ!!」
「え、黒幕?」
「そうだ!! 邪神様は人間の負の感情によって目覚められる。嫉妬妬み憎しみ悲しみ……せっかく英雄達がいい感じに育んできたのに、お前が全てふきとばしちゃったじゃん!!」
――この帝都の惨状は大丈夫なの? ていうか邪神? なにそれ?
「……帝都民は安らかに死んでしまった。もっと生の苦しみが必要なんだよ!! 邪神様は遥か昔、勇者と魔王によって封印された強大な神よ! 私はその一番使徒であるピーコ!!」
「心読んでるんじゃねえよ! おい、ふざけた名前のお前! 俺はもう静かに生きたいんだよ!! よくわからんが、そのレティの肉塊を置いて消えされ!」
ピーコが不敵に笑った。
「ひゃははは!!! この肉塊からは激しい負の感情を感じるわ。これがあれば……邪神様が復活できるわ!!」
「――エンシェントノヴァ!!」
光の柱がピーコに襲いかかる!!
「ちょっとあんた最後まで聞きなさいって!! ぎゃーー!! わ、私は神の使徒よ! こ、こんなものじゃ……か、身体が焼ける……焼けるわ! ……あんたもしかして……ゆ、勇者……いや、勇者は賢者の石を……身体に……」
まるこげピーコの出来上がりだ!
「ふう、これで一安心だな」
リスコが叫んだ。
「ちょ、ちょっとノワール! あれ浮いてるよ!!」
レティの肉塊がゆらゆらと宙を漂う。
「ていうかなんで消滅しないんだよ……あ、まてこら! 逃げるな!!」
肉塊が空高く舞い上がった。それは雲を超え、遥か空の彼方へと飛んで行く。
「あー、超やな予感がするよ……」
突然、世界中の空が闇に覆われてしまった。
闇の中から巨大な……何か降りて来た。
その大きさはサイコガンダムくらいだ!
大気を震わす甲高い声が響いた。
「ひゃっはーー!! これが邪神の身体ね!! 最高じゃない! これよ、これ!! 私が求めていた物は!!」
レティの形をした禍々しいなにか。
「これは……邪神だよな?」
邪神が地上に降りて俺の問に答えた。
「おほほほほ!! 私はレティよ!! 邪神に取り込まれそうになったけど、逆に食い尽くしてあげたわ!! 女の意地を舐めないでね!! ――召喚!!!」
レティ(邪神)が幾多の魔法陣を空に展開した。
魔法陣から邪神の軍勢が舞い降りる。
「異世界から来た最強の軍団と、神のしもべ達よ!! ノワール、あんたには飽き飽きだからまた今度ね! 私は西の聖女国家を拠点に世界を滅ぼすわ!!! ――慟哭!!」
「ういいりぃぃいぃぃぃぃぃぃぃぃいぃ!!」
俺が異世界で殺したはずのヒーローどもが襲いかかってきやがった!!!
「あはは!! じゃあね、生き延びたらまた会おうね!! さて、楽しくなってきたよ!」
「ま、待ちやがれ!! くっ!?」
レティと配下達の身体が魔法陣の中へ消えていく。
残されたのは俺たちと、異世界の数万のヒーロー達だ。
俺の身体がうずく。
――ああ、物足りないと思っていたよ。
リスコが俺の横に着く。その身体は機械のスーツに包まれていた。
――俺には最高の仲間がいる。
シズエが裸になって、回避力と攻撃力を全力全開準備OKだ。
――俺の大好きな仲間達と俺は生き残る!!
そして、テロリストの親分に無理やりブースト魔法をかけた。
「え、ええ!? わ、私関係ないですぅぅ!!」
――大丈夫、俺の信じろ。ていうかお前は王だ!!
俺の魔法力が仲間達を包み込む。
「さあ、裏切り者の邪神ビッチを討伐しにいくぜ!! 俺が世界を平和にする!! ――まずはこの雑魚どもを蹴散らすぞ!!!」
「はいさ!!」
「承知!!」
「え、あ、もうどうにでもなれ!!」
ここから始まる戦いは伝説になるだろう。
だがな、これは戦いじゃない。
これは復讐だ!!!
ありがとうございました!




