剣聖
瀕死状態の帝都民が騒ぎ立つ。
「あ、あれは聖女様だ!!」
「剣聖様もいるぞ……これで助かった……」
「ミニ様!! おい、みんな! 英雄様を応援するぞ!! ミニ様、ガルド様!!」
「「ミニ! ミニ! ミニ! ミニ! ミニ!」」
「「ミニ! ミニ! ミニ! ミニ! ミニ!」」
――おいおい、聖女しか応援されてねーじゃねーかよ?
魔法少女の様な服をひるがえして、聖女ミニが俺たちに杖を向けた。
「あんた達がテロリストね! この私が来たからには……? ……もしかして……あなた……あの時の!? あ、ああ……あの時の事を思い出すと胸がうずくわ……ふふ、私の元へ帰って来たのね? さあ一緒に素敵な夜を過ごしましょう!!!」
ミニの目が俺を捕らえた。
俺はあの惨劇の日々を思い出す。
コイツは笑いながら俺に拷問をした。
皮を剥ぐ、目を潰す、内蔵をひねり出す、全身に針を刺す、四肢を切り裂く、身体を燃やされる……
そして、死にそうになるとヒールをかけて、また最初からだ……
俺は一生忘れない。
コイツは俺と同じ苦しみを味わってもらうぜ!!
俺は恍惚としているミニを無視して、刀を構えた。
剣聖が先に動く。
その動きは老人とは思えないほどの速度。
腐っても英雄。
神速の剣が俺に襲いかかった。
「ひょふぉふぉふぉ!! ちいとジジイじゃが範囲内じゃ! 儂の慰み者にしてやるワイ!!」
剣は俺に届かなかった。
シズエの太刀が剣聖の剣撃を止める。
二人の力は拮抗していた。
「……なんと!? 儂の剣撃を止めるじゃと? レオンハルトでさえ避けるというのに……主ら何者じゃ? ……くっ! 圧が!」
シズエは徐々に力を増やしていく。
その力は鬼の力。
人ごときでは勝てない物理系最強の異能力。
シズエが叫んだ!!
「ふふふっ! 軽いぞ……軽いぞ!! この糞ジジイが!!! お前の魂はこんなものか!! 死んでノワールに償え!!」
――あ、ビルドは結構どうでもいいんだけど……まっいっか! どうせ英雄は全殺しだ!
「ビルド! 強化魔術を使うわ!! ――バーサク!! ……あれ? 発動しないわ?」
聖女ミニが魔術でビルドを支援しようとしたが発動しなかった。
突然リスコはミニの顔を平手うちした。
「ひぎゃ!? ……しょ、庶民の分際で! ひぎゃ! ……や、止めて」
エンドレスにリスコが平手打ちをする。唯の平手うちだ。
女の子の平手うちだから通常ならダメージは無い。
……だけど今のミニは唯の女の子と変わらない。
少しの痛みがある。
それをずっと続けられると気が狂いそうになる。
今この帝都は、俺の異空間が全域で浸透し始めた。
こいつらが俺たちのところに到着した時辺りから、魔術やスキルが使えなくなっているはずだ。
剣聖がミニに吐き捨てるように言った。
「おい、役立たずのミニ! 早く援護するのじゃ!! そ、そろそろヤバいのじゃ……」
シズエの剣が剣聖の肩に届きそうだ。
俺はシズエに告げた。
「そいつはシズエに任せる。適当に殺していいよ」
「了解だ!! ――巻き打ち!! からの――コークスクリュー!!!」
剣聖の剣とシズエの剣が空高く飛んでいった。
そして、ごつい装甲に包まれたシズエの拳が剣聖の腹を突き破る!
「ごふっ!? わ、儂の装甲を突破するじゃと……ぐ……まだ……」
シズエは拳を引き抜き、気合を入れた。
「きえぇぇぇ!!」
飛んで行った二つの剣が意思を持っているかの様に動き出す。
恐ろしい勢いで二つの剣が、剣聖の身体を串刺しにする。
まるで二本の串に刺さった焼き鳥のようだ!!
剣聖は力無く呻いた。
「……のう……儂……ちょっと家に用事があるのを思い出したのじゃ……帰っていい? え、駄目? ……お主が好きそうな儂の可愛い男の娘を紹介しても駄目?」
「…………」
シズエは無言で剣聖の顔を掴む。
「ふん!!!」
剣聖の顔がトマトの様に潰れてしまった!
ミニの方を見ると、今だに平手打ちが行われている。
無表情のリスコは平手打ちをしながら、半裸でおしっこ漏らしたミニの写真をスマホに収めていた。
「レ、レオンハルト……あぶっ!? レオン……ハルト……た、助けに来きなさい……ぐっ!? や、止めて……そ、そんな写真取らないで……おしっこ……痛い……」
そろそろか。
俺は刀を地面に刺した。
「――召喚炎獄!!」
リスコとシズエが召喚したドリームと新鮮組の遺体が突然燃え上がった!!
それは黒い炎。生半可な力では消えない炎。
帝都は黒い炎に飲まれていった!!!
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