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辺境ギルドの解体部へようこそ【連載版】  作者: I/O
第一章 辺境の村の解体部へようこそ
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4話 鍛冶工房『酒と鉄』

 馬車に揺られ、リナトの町に到着する。


「二人とも、リナトに着いたぞ」


 俺とアルルは馬車を降りて門で身分証を見せる。

 俺はギルドの職員証、アルルは教会の身分証だ。

 勇者が所属する教会の身分証はどこかになくしてしまっても念じれば手元に現れるらしい。


「じゃあなバラシ。また夕方にここでいいか?」


「はい、よろしくお願いします。」


 ホーベックさんに運賃の銀貨1枚を渡して別れる。

 これから市場へ農作物を卸しに行くのだろう。


「アルルも気を付けてな。縁があったらまた会おう」


「いろいろありがとう。バラシも元気でね」


 少し長めの握手をして別れた。

 サハテイ村より栄えているとはいえリナトも大きい町ではない。

 繁華街をぶらぶらしていればまた会うこともあるだろう。

 俺の用事は郊外ばかりではあるが。


 リナトの町のはずれに工房が集まる区画がある。

 工房の多くは景気よく燃料を燃やすため、どの街でも住宅や商店のある中心部から離れた場所にあることが多い。その中の1軒、看板に『酒と鉄』と書かれた工房に足を踏み入れる。

 工房の奥からリズミカルに金槌を打つ音が聞こえる。


「こんちわー、ガイエル兄さんはいます?」


「おう、バラシか。ちょっと待ってろ。」

 工房の奥から返事がある


 金槌の音が止み、奥から小柄なひげ面の男があらわれる

 ドワーフの鍛冶屋のガイエルだ。


「こんちわガイエル兄さん。今日は一段とヒゲの艶がいいね。手入れ油変えました?」


「おっ? わかるか? ってそれはいいんだよ。

 預かってたブツは出来てるぜ。」


 ガイエルはまんざらでもなさそうに自慢のヒゲを撫でてからショートソードをカウンターの上に並べる。アングリーボア製のショートソードだ。

 刀身と拵え(柄や鞘)は自前で用意できるが焼き入れと研ぎは専用の設備が必要なのでガイエルに依頼している。ガイエルは腕がいいのはもちろんだが、高温炉も扱えるので無茶な依頼ができて助かっている。


「相変わらずいい仕上がりですね。助かります。

 今回も1本でいいですか?」


 6本仕上げてもらう代わりに完成品1本を工賃として渡す。


「それでいい。といっても店に並べるとすぐ売れちまうんだがな。」


「売れないよりはいいじゃないですか。うまいこと儲けてください。」

 売れ行き好調なのは俺も嬉しい。


 仕上がった剣を受け取り、仕上げ前の刀身をバッグから取り出す。

 今日の依頼分だ。

「今日もアングリーボアの剣6本です。焼き方はいつも通りで研ぎもお願いします。

 受け取りもいつも通り6日後の予定です。」


「うむ。まかされた。」

 ガイエルに預かり証を渡される。

 昨日今日の付き合いではないので不要ではあるのだが念のためだ。



「あとはいつも通り鉄のインゴットをもらえますか?」


「それなんだが」


 ガイエルが言葉を濁す


「最近鉄の値段がかなり上がっていてな。10kgで銀貨20枚だ。」


「え? いきなり倍ですか? 一体何があったんです?」

 さすがに跳ね上がりすぎだ。これは事件ですよ奥さん。


「聞いた話だが北の国境がきな臭い事になってるらしくてな、武器の需要が増えているそうだ。その影響で鉄も値上がりしていると言っていた。」


 北となると帝国との国境。帝国は鉄の輸出国でもある。

 逆に、ここカミューデン王国は鉄の産出がとても少ない。

 そりゃ値上がりも納得だ。


「仕方ないですね。その値段でお願いします。」


 鉄のストックはあるが今後はさらに値上がりも予想できる。

 あるうちに買っておこう。



「じゃあまた。」

「おう。ショートソードじゃなくてたまには面白い仕事持ってこい。」


 予想外の出費に懐の寂しさを感じながら俺は工房を後にした。


初ブックマークと初評価いただきました。

家宝にします。

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