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辺境ギルドの解体部へようこそ【連載版】  作者: I/O
第二章 魔王の国の解体部へようこそ
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28話 葛餅と竜田揚げ

 作業場に戻ったところで親方に魔道コンロを1つ使う許可をもらう。


 解体部は常にお湯を沸かしていると以前にも言ったが、お湯を沸かす方法は主に2つある。

 薪などの燃料で火を起こすか、魔道具を使うかだ。

 魔道具の方が効率も性能もいいが魔道コンロも燃料の魔石も基本的にお高いので裕福なギルドにしかない。おそらくソトの村のギルドの場合は魔石が豊富に手に入るから手軽に使えるのだろう。


 ふと横を見るとスピネルの赤毛の頭が見える。

 あ、こいつ錬金術師じゃん。魔道具作れるじゃん。

 魔物の情報と交換でコンロの1つや2つプレゼントしてそうだ。


 話を戻そう。

 コンロを借りて何をするかと言えば晩飯と手土産を作るのだが、材料がちょっと足りない。


「スピネル、この辺で手に入りやすい食用油って何かな?」


「んー、油は獣脂が一番お買い得や。あとは森に落ちてるアコンの実から取れる油も安めやね。」


 これやでーとアコンの実の油というものを渡してくれる。

 匂いはちょっと香ばしい感じ。ナッツ系の風味だ。

 油はそれを借りるとして、下ごしらえをしよう。



 材料はシンプル。

 キングチキンのモモ肉、ローズマリー、塩、片栗粉だ。

 ローズマリーはスパイシーな香りが肉料理によく合う。

 モモ肉は5kg全部を一口大に切り分け、ローズマリーの葉と塩を振ってよく混ぜて木のボウルに入れてちょっと寝かせる。寝かせると下味が染みてよりおいしくなる。


 5kg分は多いかもしれないがお裾分けすればすぐになくなるだろう。

 揚げ油も一度で済ませた方が無駄がないしね。



 寝かせてる間に挨拶回り用の手土産を作る。

 用意するものは小さい鍋、水、片栗粉、とても甘い森の王の蜜少々だ。


 鍋に材料をぶち込みかき混ぜながら沸騰させ、沸騰したら火から離して練り混む。

 十分練ったら浅底の器に移して解体部の冷蔵倉庫に入れて冷やせば、わらび餅あるいは葛餅と呼ばれるスイーツの完成だ。

 森の王素材を使ったからか半透明の葛餅の中で琥珀色がラメのようにキラキラしていて高級感がすごい。


 今回は手持ちの片栗粉を使用したが、片栗粉はジャガイモをはじめ、温暖な地方なら葛、寒冷地ならカタクリの根から取れるので入手にはそれほど困らないはずだ。



 葛餅ができたので次はチキンを揚げていく。

 今回は片栗粉をまぶして揚げるので厳密にはから揚げではなくて竜田揚げになる。


 まずは低温で4分ぐらいじっくり揚げて、一度取り出し余熱で中まで火を通した後に高温で1分程度揚げなおして表面をカラっと仕上げる。


 揚がった竜田揚げを味見してみる。

 サクサクの衣にローズマリーの香りが移ってショウガとレモンとミントを足したようなスパイシーな清涼感がある。キングチキンの太い筋線維のギュッとした歯ごたえもいい感じ。二度揚げなのでカラっと揚がりながらも肉の柔らかさは残ったままだ。

 さすがだ。さすが俺。


「おお。うまそうっすね。」


 心の中で自画自賛していると若者らしく食欲旺盛なのかジャンくんとポールくんが匂いにつられて様子を見に来た。


「そっちにあるのは完成したやつだから味見してみてください。熱いので気をつけてね。」


「「あざーす!」」


 二人が竜田揚げを口に入れる。


「サクサクでやわらかくてうまいっス!」

「おいしいですーおかんに食べさせてあげたいなー」


 母親思いのコメントを残したのはヒョロことポールくんだ。

 別にお土産に持って行ってもいいぞ。いっぱいあるし。


「あ、こいつ美味いもの食うといつもこうなんで気にしないでほしいっス」


 そうなのか。ポールくん変わったキャラしてるね。

 つまみ食いの様子を見て親方とスピネルも竜田揚げに手を伸ばす。


「ほう、これは美味いな。風味もいいが肉が固くないのがいい。マユゲ、ヒョロ、後で作り方教わっとけよ。」


 フフフ。魔族も人間族の秘術二度揚げを前に白旗のようだ。


「さすがバラシはん。解体屋より料理人やった方がえんちゃいますか?」


 スピネル、お前はもうちょっと素直に褒めろ。



「お近づきの印にみんなで食べてください。どんどん揚げていきますからね!」


 一度揚げてある竜田揚げを次々鍋に放り込む。


「よーし、ヒョロ! マユゲ! 倉庫から酒持ってこい!」


「了解っス!」


 やっぱり親睦を深めるにはメシと酒が手っ取り早いね。

 体育会系ならなおさらだ。


 魔王の国と言われて多少ビビったけど、なんとかやっていけそうな気がする。

 人間族が迫害されてるわけでもなさそうだしね。


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