14話 赤毛の錬金術師
背後から声をかけてきた赤毛の少女。
なぜこんなところに!?
「お前は……!アホ毛の錬金術師!」
少女は頭のてっぺんから赤い髪をひと房引っ張り
「そーそー、直しても直してもここーの毛がピーンなってまうんよー
ってちゃうわ!赤毛やあ・か・げ!赤毛の錬金術師や!」
少女は笑いながらバックハンドでスパーンと俺の肩を叩く
華麗なるノリツッコミだ。
「久しぶりだなスピネル。お前王都からわざわざこんなところまで来たのか?」
王都で世話になった錬金術師ってのはこいつの事だ。
通り名は赤毛の錬金術師。
「いややわぁ。タマちゃんに会いに来たに決まってるやん」
「タマちゃんはやめろ。ここではバラシで通ってるんだ。」
「あらまぁ。切り裂く者はやめたんか
まぁなんでもええけど。」
いろいろ過去を知ってる奴が出てくるのはめんどくさいな。
別に困るわけではないが、めんどくさい。
「冗談はさておき、なんでここにいるんだ?まさか狩猟祭のためじゃないだろ?」
スピネルが言うには今は珍しい魔物を探すため王都を出て、とある貴族の世話になっていて、今日は黒い3人組の付き添いで来たらしい。ということは黒い3人組もその貴族のお仲間という事か。
「さすが錬金術師兼魔物研究家。王都で物足りないとは貪欲だな。」
「せやで。世のため人のため世界中の魔物を調べつくすのがウチの使命やさかいな!」
魔物研究家は魔物の生態や素材の用途などを調査し社会に還元するのを目的とした研究者で、俺達が魔物の肉を遠慮なく食べられるのも過去の魔物研究者がその肉が食用に足るか、害はないかと調べてくれたおかげだ。
錬金術師は生体素材の加工技術も高いため魔物研究との相性は抜群。
そして解体職人は研究者に素材を提供する立場なので自然と縁ができたわけだ。
しかしまぁスピネルが外に出るのをよく王都の連中が許したな。
研究結果というものはスポンサーに報告され、有用なものは秘匿されスポンサーが利用する。時にその情報は国の政治を揺るがす物となるため一流の研究家は情報流出を防ぐため好待遇で囲われるのが常だ。
なおさらここにいる理由がわからん。
「バラシ、知り合いみたいだけどどなた?誰かのお子さん?」
冒険者が森に入ってヒマになったからか受付のミセリと村長がやってきた。
「ああそうだ。こいつはスピネル、赤子の錬金術師と呼ばれている。」
「バブーバブーぼくさんさいでちゅー
ってええかげんにせえやこのカリアゲェ!赤毛の錬金術師や言うとろうが!」
「ゔっ……」
今度はボディに腰の入ったいいパンチをもらった
一連のやり取りをミセリはあっけにとられて、村長はにこにこしながら見ている。
「ウチはスピネル。タマ……バラシとはちょっとだけ昔からの知り合いや。」
よろしゅう、よろしゅうとスピネルが二人と握手する。
「あとな、よう言われるからええんやけど、ウチこれでも22やねん。あんましちびっこ呼ばわりせんといてな。」
腰に手を当てカラカラとスピネルは笑う
ミセリも村長も驚いている。俺も村長が驚くところを初めて見て驚いている。
「あっ、その、ごめんなさい。すごく、その、かわいらしかったので……」
あたふたと弁明するミセリ。
「ええって言うたやろ。気にせんといて」
「そうだぞミセリ。小さいのはこいつの持ちネタみたいなも゛ッ」
追加のボディブローをもらったのは言うまでもない。
関西弁警察さん!こっちです!
スピネルの関西弁は私の故郷である北陸系の訛をベースに関西弁に変換しているため間違ってる場合があります。ご了承ください。
今日中にもう1話追加する予定です。




