商人との遭遇
リウスとの旅はかなり順調だった。
旅を始めてすぐに、
「荷台の荷物もマイルさんの鞄の中に入るのかしら?」
そう聞かれたので、何かあったときの為のダミーの荷物以外すべての荷物を俺のマジックボックスに収納したせいもあるだろう。
馬車は軽くなった分スピードがだせるようになった。
そして、いくつかの村を通過しあと少しで王都というところでゴブリンの群れに襲われている商人らしき一団に遭遇した。
「リウスさんあれ助けてきてもいいですか?」
この世界では人を助けることが必ずしもいい結果になるとは限らない。
実は自作自演で襲われた風を装い背中から攻撃をうけるなんてこともあるのだ。
そんなことがあってもリウスさんはいつもの優しい笑顔で、
「もちろんです。私も離れたところから弓矢でサポートしますね。」
そういうとリウスさんは馬車をとめ天空の弓をとりだした。
この弓はリウスさんの家に代々伝わる特別な弓らしく、魔力を与えることでスピードがまし自己回復までする優れものだということだった。
リウスは遠距離からの攻撃も近接も両方できる。
ただ、今回は数が異常に多いので距離を置いての援護に回ってもらった。
普通の弓使いでは50m先のマトに当てるのが精いっぱいだが、リウスは300m先のマトでも余裕で当ててしまう。天空の弓の効果ですよ。と笑ってはいたがそれだけではないだろう。
「ミルク行くよ。」
そう言って俺とミルクは商人たちを助太刀に行く。
ミルクはプルプル震えて嬉しそうに俺についてくる。
かなり数が多い。
「これだけ数が多いと少し面倒だな。ミルク悪いが氷と風をお願い。」
そういうとミルクは小さいとがった氷を作成しそれを風魔法にのせ竜巻を作る。
この魔法のスゴイところは風を強風にしなくても氷魔法で魔物を倒せるため、魔力消費と無関係な範囲への攻撃を防げることだった。
大型の風魔法はまわりに仲間がいる場合に被害を拡大させやすい。
この魔法は他にや炎魔法でもつかうことができる。
ただ、土魔法だとどうしてもまわりの土を削っておこなうため素材が汚れダメになりやすいのと炎は燃えてしまって回収できないためおもに氷と一緒に使われることがおおい。
俺はミルクが狩り残したゴブリンを狩っていく。
数は多いようだが、かなり弱っているようだ。
ゴブリンたちはみなガリガリに痩せている。
これはもしかしてゴブリン行進の前触れだろうか?
ゴブリン行進とは、簡単に言ってしまえば洞窟などのゴブリンの大量発生のことだった。
ゴブリンたちは異常に繁殖力が強い。
ただ、普通は他の魔物に殺されたり、冒険者が定期的に狩っているためそれほど爆発的に増えることはない。
ただ、例外があり、ゴブリンキングやゴブリンロードなどの上位種に進化したゴブリンがでてくるとかなりの問題だった。
そいつらはかなりレベルも攻撃力も強くなり、繁殖力がいっきに2倍に膨れ上がる。
その中で強いゴブリンのみを手元に残し、弱いゴブリンは積極的に狩りにいかせる。
その結果、弱いゴブリンは飢えながらもまわりの村や街に被害をだす。
師匠が昔言っていたがこのゴブリン行進で大きな街が1夜にして滅びたことがあるらしい。
その時は夜間でまわりの街に助けを呼ぶこともできず、生き残った人もわずかしかしなかったそうだ。
『痩せたゴブリンの大量発生時は街に近づくな。』
それが師匠の教えだった。
もはや個人でどうにかできるレベルではないらしい。
そんなことを考えながら剣をふるう。
ゴブリン単体はそれほど強くない。
商人側の方を見ると護衛のハンターらしき人たちも戦っている。
どうやら前衛のみで魔法を使えるハンターなどはいないらしい。
だが急がないとだいぶ厳しそうだ。
ミルクは大技を放ってある程度片づけた後は一緒に俺の背中を守りながらゴブリンを倒していく。
馬車があるためかなり手前で魔法を止めたようだ。
ミルクがサポートをしてくれるから背中を気にせずにゴブリンたちの中へ切りこんでいくことができる。
このままハンターたちと挟み撃ちにして倒していくのもいいが、どうやらハンターたちはそれほど長くはもちそうになかった。
ハンター側にさえたどり着くことができれば気兼ねなくミルクの特大魔法が使える。
俺とミルクは歩きながらゴブリンをほふっていく。
俺の魔物使いの能力の魔物の威圧というスキルのおかげで雑魚魔物は睨まれただけで一瞬動きを止めることができる。
ダンジョンなどにいる強い魔物には効かないが平原のゴブリンくらいには十分力を発揮してくれる。
どれくらいゴブリンをほふっただろうか。
ゴブリンの死体の道が10mくらいできた頃やっと商人たちの馬車へたどり着くことができた。
ミルクはついた途端に風氷旋風を巻き起こす。
今度はこっちの馬車を台風の目のようにしてまわりをまき散らすだけなのでミルクも手加減はしない。
次々に緑色の星になっていくゴブリンたち。
俺は馬車の仲間で入り込んだゴブリンを切り捨てる。
馬車には残念ながら生き残っている人はいなかった。
最後に残ったハンター2人もかろうじて呼吸はあるが助かりそうもない。
「最後になにかいい残したいことはあるか?」
「これを妻に。」
そう言って金の入った袋を俺に渡してきた。
「わかった。冒険者ギルドから必ず届けてもらうように手配しておこう。」
「あっ…りが…とう。」
もう一人若いハンターに聞くと
「兄弟たちに最後まで一緒にいられなくて…ごめんって。次はヨンルがみんなの面倒を頼む…」
そう言って二人は永い眠りについた。
2人のハンターのうち一人はまだ若かった。10代くらいだろうか。
装備もそれほどいいものではない。
ベテランハンターに習いながらきていたのかも知れない。
ミルクがゴブリンをすべて薙ぎ払ってくれるとリウスさんが馬車を操縦しながらやってきた。
俺はリウスさんと目があったため首を横に振る。
それだけでリウスさんはダメだったことをさっしてくれた。
「街で冒険者ギルドに行ってこれと伝言を頼まれた。」
リウスさんはうなずき、
「大丈夫よ。」
そう一言だけ言って彼らの冥福に祈りをささげた。
悲しいことにこの世界では非常に命が軽い。
明日は俺がこうなっていてもおかしくはない。
俺は亡くなった人たちの為に手を合わせる。
襲われたハンターたちの死体はそのまま近くに土葬をおこない、荷物はすべて回収する。
ゴブリンの戦利品を集めている途中で商人らしき人を発見した。
その商人は豪華な服をきてかっぷくのいい様子だった。
ふと見ると着ている服より何か手紙のようなものがでていた。
俺は一応それと金品も回収しておく。
この世界ではこういった場合にすべてのものを回収冒険者ギルドに持って行くと家族へ届けてくれたりする。ハンターの階級書もあわせて回収しておく。
さて、いろいろな片付けや戦利品の回収などをしていたらばいつのまにか数時間たってしまっていた。
一応リウスさんにゴブリン行進についても話をしておく。
リウスさんは悩みながら、
「それはどれくらいの期間で暴走が始まるの?」
と聞いてきたが正直俺にもわからない。
リウスさんは、
「急いで冒険者ギルドに行ってそれを報告しましょう。そして他の人が生きているうちに妹のことを聞かなくちゃ。」
俺達はそのまま休みもせずに王都を目指す。
王都はもうすぐだ。