魔物からの子供の救出依頼を受けることにしました。
リウスの妹はリリアという名前だそうだ。
リウスとリリアはこの街で薬屋と治療院を営んでいるということだった。
リウスが主に回復魔法で回復をさせ、リリアが回復魔法では治らない病気などを治すために薬草を処方していたそうだ。
俺達のパーティは今までギルドで紹介されたギルド割引のある治療院を使っていたり、リーダーがある程度の回復魔法を使えたのでリウスのことは知らなかった。こんなきれいなエルフの治療院があったならば男たちが別の目的で殺到しそうだが。
リリアは数カ月前までこの街に来ていた薬を卸す商人が来なくなり、薬の販売ができなくなったために、2ヶ月まえに王都スクルブルに買い出しにいったまま消息がわからなくなってしまったらしい。
リウスと違い、リリアの方が戦闘職よりだったので一人でも大丈夫だと判断してのことだったがそれが裏目にでてしまったようだ。
この街からは王都まではどんなにかかっても1ヶ月はかからない。
そう考えると途中で何かトラブルに巻き込まれたと考えるのが普通だ。
ここから王都までにでる魔物くらいならば大丈夫だろうとリウスは言っていたが、途中のヘルバ平原には結構危ない魔物が多かった気がする。
ヘルバ平原での魔物の討伐はだいたい、冒険者はBランク以上だったはずだ。
冒険者の基準は上からS、A、B、C、D、Eと6段階に分かれている。
パーティの場合は個人だけのランクではなく実績なども加味され、最初は平均よりも下のランクで設定されることが多い。
俺がいた銀色の翼はAに近いBランクの冒険者だった。
今回のドラゴン討伐でAランクになる可能性がかなり高かった。
俺個人のランクがDランクだったため足を引っ張っている感じだった。
多分、俺が抜けたおかげであのパーティはAランクにあがるだろう。
いくらエルフが長寿で戦闘に向いているとはいえ…。
そういえば、リウスは何才なのだろうか?
見かけはどう見ても15歳くらいで成人したてにしか見えない。
「リウスさん一つ聞いてもいいですか?」
「はい。なんですか?」
「リウスさんっておいくつなんですか?」
『パキンッ!!』
室内のガラス製品が急にヒビが入る音がした。
リウスさんのまわりに暗黒の闘気のようなものが見え空間が歪んでいる。
―――ダークエルフか!?
「あっ別に変な意味ではなくて、15歳くらいの若い人が冒険とか大変だろうなって思って。」
「えっ15歳!?」
暗黒闘気が霧散し急にもじもじしながら嬉しそうにこっちを見てくる。
「女性に年齢を聞くのはマナー違反ですよ。でも、私はエルフなのでちょっとだけマイルさんと同じくらいかちょっとだけ年上かも知れないですね。ほんの少しですけどね。」
ちょっとを強調しすぎておかしな感じになっているがツッコんではいけない。
一緒にいたミルクが恐怖でブルブル震えていた。
この時、一瞬人生で2度目の死の予感がしたが気のせいだということにした。
ただ、二度と年齢の話しはしないようにしよう。
★
それから、旅の準備をして王都へ向けて出発することにする。
リウスさんも冒険者ギルドに所属しているらしく、出発のあいさつをしてくるとのことだった。
俺は特にあいさつをする必要はなかったので家で待たせてもらう。
リウスさんの家の中はシンプルできちんと整理されていた。
かなり几帳面性格なんだろう。
リウスさんが家をでてからすぐのことだった。
治療院のドアを激しく叩く音がする。
勝手にでるのもどうかと思ったが、このままだとドアが壊れかねないのでドアを開けてやる。
「どうしました?」
俺がドアを開けると一人の男が慌てた様子でたっていた。
「リウスさんはいるか?大変なんだ。うちの子が。」
激しく動揺していて話を聞こうにも要領を得ない。
「リウスさんは今冒険者ギルドにあいさつにいきましたよ。」
「くそ!入れ違いになったか。」
そう言ってその男は慌ててでていってしまった。
いったい何があったんだろうか。
ここで待っていてもいいが、何か手伝えることもあるかも知れないので俺もその男について冒険者ギルドにいくことにする。
その男から話を聞いてみると、この街の近くでモデデビルという熊の変異種の魔物の群れが見つかり、男の子供が誘拐されたらしい。
モデデビルは普段は温厚な魔物で人を襲うことは滅多にない。
ただ、大人しいからと言って人間と敵対しないわけではない。
討伐ランクはBの下。
非常に硬い毛皮が普通の攻撃では受け付けず、一度スイッチが入ると狙った獲物を絶命させるまで攻撃をやめない。ただ、よほどのことがない限り人間を襲うなんてことはなかったはずだが…。
俺は銀色の翼の仲間から恥ずかしいから冒険者ギルドへは行くなと言われていたため、知らなかったがリウスさんはこのあたりでも有名な冒険者でありソロでBランクの冒険者だったらしい。
ちなみに妹の方はAランクということだった。
だから心配をしていなかったのだろう。
リウスさんは他のBランク冒険者がうけないようなめんどくさいもの(おもに金額が安いとか効率が悪いもの)でもうけてくれるということで街ではかなり有名な冒険者だった。
ちなみに、この街でBランクの冒険者である銀色の翼は今日の昼間に金払いのいい貴族の護衛任務でいないらしい。
冒険者ギルドにつくとリウスさんが俺を見つけて手を振っている。
「リウスさん、街の近くにモデデビルがでたらしいんですけど聞きました?」
「あっ今ちょうど旅にでる前に片付けてこようと思って依頼をうけてきました。マイルさん…もしよろしければ私と一緒にモデデビルからの子供の救出依頼なんですけど旅の前につきあってくれませんか?」
リウスさんはほんわかした感じでお茶でも誘うかのようにBランクの魔物からの子供の救出依頼を誘ってきた。俺には断る理由がない。
「もちろん。喜んでお供します。」
これが世界に名をとどろかせることになる二人の初めての冒険だった。