パーティから追放され川で流されました。
「この恥さらし!さっさと私達の目の前から消えてくれない。」
えっ…俺が何をしたというのだろう。
今までの行動を思い出してみたが思い当たることはなかった。
でも、言っている意味はわかる理由がわからない。
「いやいや、なんで出て行く必要があるんだよ。」
「はぁ?何言ってんの。アンタ正気?誰のせいで今日のクエスト失敗したと思ってんのよ。」
一瞬何が起きたかわからなかったが、立っていた俺は後ろから膝の後ろを蹴り飛ばされ床に這いつくばるような姿勢をとらされた。
「アンタが」
ガン!!
「魔物を!!」
ガン!
「犠牲にすれば!」
ガン!
「私が怪我することはなかったのよ。」
ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!ガン!…。
床に這いつくばり身体を丸めながら頭を抱える俺に容赦なく攻撃が加えられる。
装備していた皮の鎧は壊れすでに役目を果たしていなかった。
それでも執拗に蹴り上げ、踏みつぶされる。
一生懸命逃げようとするも、俺を蹴り、踏みつける足の数が増えていき耐えることしかできなかった。
「リーン、そのあたりでやめとけ。そいつの血で床が汚れたらばどうする?俺は掃除しないからな」
「はぁはぁ。」
俺をまわりから見下ろす仲間たち。
いや、本当に俺の仲間だったのだろうか。
もしかしたらば夢を見ていたのかも知れない。
「いやだってさ、アル!この使えない魔物使いが自分の従魔を助けるのを優先させたから魔物に逃げられてクエスト失敗したんでしょ!?それにさっきの態度見た?私たちを舐めているのよ。私たち『銀色の翼』の名前に泥をぬったのと同じよ!そんなの許せるわけないでしょ!!」
俺を執拗に蹴り飛ばしている戦士のリーンがまわりに私は悪くないとアピールをしながら、俺を踏みつける。リーダーのアルは
「リーンの言うことはわかるよ。」
そう言って俺に笑顔をむけてくる。
助けてくれるのか?
そんな甘い期待を一瞬頂いたが、アルの言葉に絶句する。
「こんな魔物使いなんかとパーティにいれた僕の判断が間違っていたよ。みんな悪かった。魔物使いといいつつコイツ自身は全然活躍をしていないからね。でも、だからと言ってリーンがここでこんなゴミを蹴り殺したとしても、なんのメリットもない。」
「でもアル!こいつのせいで私は怪我をするし、クエスト失敗したんだよ。どこにこの怒りをぶつけたらばいいのさ!」
「アハハハ!リーンそんなの簡単だよ。」
アルの変わりに答えたのは魔法使いのミシェルだった。
先ほど俺の膝を蹴り砕いたのがコイツだ。
俺を生ごみでも見るような目でみながら
「こんなのすまきにして川に流してやればいいのよ。存在する価値すらないんだから。」
そういうと俺の顔に向かって唾を吐きかけてきた。
「こんな真冬の川に捨てるなんて本当に死んでしまう。頼むからそれだけは辞めてくれ。」
膝と背中、腹部の痛みに耐えながら、やっと立ち上がろうとしたところにリーンがこん棒で膝をフルスイングした。膝が変な方向に曲がっている。
痛い痛い痛い。
「あっ?じゃあ今すぐ装備を置いてでていけ。その汚いパンツだけは選別にくれてやるから。早く消えろ。お前に生きている価値はないんだよ。」
急いで装備を脱ごうとするも立ち上がることもできない。
はって入口へ行こうとするも、
「装備品は置いていけって言っただろクズ。お前言葉つうじないのか?どうりで命令通りに動けないはずだよ。」
腹部にもう一発蹴りがはいった。
肋骨にヒビが入っているかも知れない。
呼吸が苦しい。
「はぁ。最後まで手間かけさせるなよ。ミシェル魔法でぶっ放せ!もう装備はいい。」
アルがそう言うと、
「ごみはゴミ箱へ。でも生ごみは魚の餌だね。」
「じゃあね。クズくん。」
「もう二度と姿を見せないでね。」
「お前が存在するだけで社会悪だから早く俺達が知らないところで死んでね。」
彼らの別れの言葉を聞き終わる前に逃げようとするも膝に力が入らない。
なんとか立ち上がって扉をあけたところで、
「ウィンドウアタック!」
背中から風魔法をぶつけられさらに、外に飛び出したところで、
「ファイヤーボール!」
俺は火だるまになりながら家の横の川に飛び込んだ。
最後に聞こえたのはあいつらの笑い声だった。
意識が遠のいていく中で思い出されていたのは奴らとの旅の思い出だった。
俺はずっと仲間に憧れ、初めてできた仲間が彼らだった。
でも、彼らからすると俺はただのかえのきく部品だった。
『誰かに必要とされたい。』
そう願っただけだった。別に世界を変えたいとか、勇者になりたいとか思ったわけじゃなかった。
ただ、誰かの役にたって認めてもらえるだけでよかった。
魔物使いとして魔物の仲間を増やし、ずっと一人で面倒をみてきた。
今日だって沢山の魔物の仲間が傷つきながら一生懸命戦ってくれた。
だから若きドラゴン討伐クエストも誰一人死ぬことはなかった。
でも、それよりも自分が怪我をしたから。
クエストをこなせば怪我くらいは誰だってするのに。
魔物たちはあいつらが使えない魔物に餌なんかやるだけ金の無駄だといいスライム1匹を残してすべて解放させられた。スライムは俺が初めて仲間にしたものでずっと一緒だったし食費もかからないからと手元に置いておくことを許された。
でも、こんなことになるならば解放してやるべきだった。
最後は魚の餌か。
背中にうけたファイヤーボールのおかでげレアくらいには焼けているかもな。
美味しいかどうかわからないけどせめて骨も残さずに食べてもらいたいものだ。
水の中を流されながらも俺の目からも涙があふれた。
あまり、いい人生とは言えなかった。
魔物使いという職業は前衛で戦うことは少ない。
だからこそ、魔物使いとしての職以上に魔法の勉強もした。
剣も覚えようとした。
みんなの足を引っ張らないようにできる限りサポートもした。
でもなんで最後はこんな最後になってしまったんだろう。
「人に必要とされたかったなぁ。誰かに生きていることを認めてもらいたかった。」
川の濁流が俺の意識を刈りとろうとする。
口の中に水が入ってきて苦しくなってくる。
身体中が痛くて冷たくて背中にあっては感覚がない。
その時何か柔らかいものが川の下から俺をのせて陸地へ飛び出した。
その衝撃で俺は地面を2転、3転と転がる。
「痛い…あれ?もしかして。」
そこにいたのは従魔のスライム、ミルクだった。
ミルクはいつも俺の持っていた鞄の中に入っていたが、どうやらあの家から俺を追いかけて川の中に飛び込んだらしい。
身体をフルフル震わせながら俺を動かそうとするがミルクの力では俺を動かすことはできなかった。
「ごめんな。従魔の契約を解除してやるからお前だけは元気に生きてくれ。」
俺はミルクの頭をなでながら最後の力を使って従魔の契約を解除してやる。
ミルクはスライムとは思えない程かなり頭が良くて強かった。
これでミルクも元気に野生に戻れるだろう。
最後にミルクを助けられたという安心感から俺の意識は遠のいていった。
俺の最後の目に入ったのはミルクだんだんと俺から遠ざかっていくその後ろ姿だった。




