表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
diabolus ex  作者: さくら
dies festus
5/43

quinque

 爽やかな朝の日差しにそぐわない表情と様子をした兼続が、校門をくぐった。次々とかけられる朝の挨拶に反射的に応えながら、玄関へと向かう。靴箱の前に辿り着くと数人のクラスメートがおり、兼続に視線を向けてきた。

「おはよ」

 朝の挨拶が人数分、投げかけられた。

「おはよー」

 先に声をかけてきたクラスメート達に少し遅れて、兼続は挨拶を返す。

「何? 寝不足? 体調悪いとか?」

 どんよりとした兼続の様子に、クラスメートの一人が声をかける。

「あーうん。寝不足……かな……」

 寝癖の残る頭を掻きながら、ばつが悪そうに兼続が答える。去り際の一花の言葉が耳に残り、何度も脳内で反芻されて兼続の睡眠を妨げたのだ。

「何? また犬の散歩コースで悩んでたとか?」

 少しからかうような口調で、クラスメートが問いかける。学校での兼続の評価は、"色々と勿体ない犬バカ"である。せっかくの見た目の良さも宝の持ち腐れのように構うことなく、口を開けば犬の話ばかりという状態だ。

「あーいや……その……」

 戸惑い言葉を濁す兼続の様子に、クラスメート達は特に気にすることもなく次々と靴を履き替えていく。それに続き、兼続も靴を履き替えた。他愛もない会話を交わしながら、兼続とクラスメート達は教室へと向かいだした。すぐに上着の裾を引かれ、兼続は立ち止まる。そして、背後を確認しようと振り返った。そこには、小首を傾げながら兼続を見上げる一花の姿があった。

「い、いいんちょ?」

 勝手に口から出た言葉を慌てて飲み込むかのように、兼続は口元を手の甲で押さえた。

「えーと……その……」

 名前で呼ばなければ、不本意な呼び方をすると言われていたことを思い出し、兼続はどう対応するべきか判断がつかずに悩む。少し悪戯っぽい表情と視線を向けながら、一花はゆっくりと口を開いた。

「おはよ。浅井くん」

 予想とは違った普段と変わり無い一花の様子に、兼続の表情が安堵の色を浮かべた。

「お、おはよ……」

 挨拶を返したは良いが、その先の対応に戸惑い兼続はそのまま黙ってその場に立ち尽くす。突然、首に何かが絡まるのと同時に兼続の身体に重みがかかった。

「何? そこの二人、なんかあやしくない?」

 いきなりなクラスメートの行動と言葉に、兼続は戸惑い、言葉が上手く出てこなかった。

「挨拶をしていただけよ」

 一花が兼続の背後にしがみついている相手に向かい、事も無げにそう告げる。

「あ、そうそう。挨拶」

 一花とは違い、兼続の様子や言動は明らかに不審を伺わせる物であり、クラスメートは疑いの視線を向けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ