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diabolus ex  作者: さくら
dies festus
3/43

tres

 名前から話題を反らすために、兼続は一花に対する疑問を口にした。それに対し、一花は少しふくれた顔をする。きれいな顔立ちに可愛さが加わり、僅かに高鳴る鼓動を押さえ込むかのように、兼続は軽く視線を反らした。

「さっきも、庭の処にいただろ?」

 思わず見蕩れそうになった事を隠すかのように、兼続は続けて質問を投げかける。

「そういえば、お庭きれいよね」

 兼続の質問に答えることなく、一花は庭の方へと視線を向けた。あまり捉えどころのないの無い一花の言動に諦めを覚えたのか、兼続は無言で庭へ向かって歩き出した。一花はすぐにその後に続く。

「ねえ。かーくんも神父さんなの?」

「へ?」

 唐突にかけられた言葉に、兼続は思わず立ち止まってしまった。

「いや……。っていうか、かーくんはやめてくれ……」

「一花って呼んでくれたらね」

 足を止めることなく庭へと向かいながら、一花が答えた。返答に困った兼続は、その後を追うように足を踏み出す。

 高校に入学してから約二ヶ月、目の前に居る一花と接触する機会は特に無かった。兼続の記憶にある限り、まともに話をしたのは今日が初めてになる。

 庭に足を踏み入れた途端、白い毛並み、黒い毛並みの二匹の狼にも似た大型犬が、兼続に向かって嬉しそうに駆け寄ってきた。

「シロ、クロ」

 名前を呼ばれた二匹は、更に千切れんばかりに尾を振りまくりながら、勢いよく兼続に飛びついた。

「うわっ!」

 二匹の大型犬の体重とスピードが乗った体当たりに、兼続は耐えきれずにその場に倒れ込んでしまう。そのまま、二匹の犬たちは兼続の顔を舐め始めた。兼続は二匹を引きはがしながら、一花の姿を探した。少し離れた場所にその姿を見つけ、近寄ろうと足を踏み出す。そのとたん、二匹の犬たちが兼続の前に立ちはだかり、低い唸り声を上げ始めた。

「シロ? クロ?」

 外見とは裏腹に、普段は番犬にならないほどの人懐っこい犬たちである。初めて見る二匹の様子に、兼続は少し戸惑う。

「やめろ!」

 二匹を押さえ込むように触れ、兼続は制止の声をかける。その言葉に二匹は唸るのをやめ、不安そうに兼続を見上げた。

「どうしたんだよ、お前達……」

 二匹の頭を撫でながら、兼続は呟くように声をかける。おとなしくその場に座り込んだ犬たちに安心したのか、兼続は少し離れた場所にいる一花に視線を向けた。

「ごめんな。こいつら、いつもは人懐っこくておとなしいんだけど」

 兼続の言葉に、一花は首を横に振った。

「その子達の所為じゃなくて、私、なぜか動物に嫌われちゃうの」

 少し悲しそうな表情を浮かべる一花に、兼続は胸に小さな棘が刺さったような感覚を覚えた。

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