いいね!があるならよくねーよ!ボタンも作って欲しいわけで。
パリピの朝は遅い。
午前10時。もうとっくに日は昇り、8時にかけた目覚ましももはや鳴るのを諦めた。その時間になり、やっと俺は起床する。
「って、一限遅刻じゃねーか!」
俺は布団から飛び起き、急いで歯を磨きながら髪をドライヤーでセットした。それをワックスで固めて――おっと、もちろんひげ剃りも忘れていない。
◆
「間に合わなかった……」
俺は最近流行りのSNSに、『一限寝坊なう』と投稿した。するといつもつるんでいる仲間たちから次々『いいね!』の反応が来る。
この単位、必修だから落とすとヤバイんだよなあ。全く、何が『いいね!』だよ。
俺は神木雪也。私立K都大瀧大学の2回生だ。趣味は音楽鑑賞でバンドのフェスに行くのが好き。サークルは横文字の呼び名の付いた軟式テニスサークル、いわゆるテニサーだ。しかし、俺はテニスのルールを全く知らない。ただサークルの男女交えた飲み会や合宿が楽しそうだという理由だけで入部している。ちなみにサークルでの俺の役割はバーベキューの焼きと麻雀の点数計算だ。テニスとは。
そんな俺のことを、周りの奴らはこぞって『リア充』だと言う。だが言わせてほしい。リア充と言えば、電車内でイチャイチャ。学園祭でイチャイチャ。遊園地でイチャイチャだ。俺には、そんな女の子の存在は無い。
そう、俺には彼女が居ないのである。しかも、生まれてこの方そのようなご縁に巡り会えたことすらまったく無い。
俺は大学生になり、パリピ女子の本性を知った。彼女らは友達として遊んでいるには楽しいし、性格も良い子たちなのであるが、いかんせん、こう、お股が緩いというか――いや、これ以上はやめておこう。とにかく、俺の好みではないのである。
俺の本当の俺の好みは黒髪ロングで清楚。メイクは薄くて笑顔の可愛い、知性と優しさを兼ね備えた品の良い日本の美人である。
だが、そんな女の子が俺なんかと付き合ってくれるはずがない。俺はパリピで、金髪で、くるくるパーマで、なおかつテニサーのチャラ男なのだから。
ああ、茶髪にカラコンのパリピ女子、怖えよぉ〜。俺は、大和撫子が好きなんだよぉ〜。