狙いは?
バスに揺られること7時間。
ようやく目的地の別荘《お城》にやって来た。今、ここにいるのは3人だけ。その他の生徒は、ここに来る前に下りていた。
どこへ向かうのかを知らなかった私とディアは、呆然としながらこの建物とマギア王子を見比べた。
「王子殿下。ここは、まさか王族の別荘っと言う物ですか?」
彼は得意気に
「そうだ。ここは、王族がお忍びで来る別荘だ。」
私とディアは再び回りを見渡した
深い森に囲まれそこに佇む豪邸《別荘》
完璧に周囲から浮いてる。それなのに物語を連想させる不思議な感覚。
自国にいるような感覚さえもする。
「何故ここにされたのでしょうか?」
と私も不思議に思ってた事をディアが聞くと
「ただ、静かなところで森林浴をしたかっただけだ。」
「そうですか。」
「そんな冷たい目で見るな。別にヘイルが居ようが居なかろうが、お前達をここに連れてくることは決まっていたからな。」
「王子殿下。私にはとても嫌な予感がするのですが……。」
彼は苦笑いを浮かべ
「さぁ、中にはいるぞ。」
彼が中に入った後に続き足を踏み入れた
結論から言うと別荘の中には誰も居なかった。王子が来るなら料理人や侍女・従者・護衛の兵 の人達が居てもいい筈なのにだ。
ディアにアイコンタクトを送ると
「王子殿下。少し外します。」
「その王子殿下 って言うのやめろ。マギア と呼べ学園に居る間だけでいいから。」
あまりにも寂しそうに言うためそう呼ぶことにした。
再びディアが
「マギア様。」「マギアだ!」
ディアが頭をかきむしり
「あ~あ。面倒だテネブレ、もういいだろう?」
「はぁ。ディアにしては持った方じゃない?もう良いよ いつも通りで。」
「サンキュウ~。」
困惑しているマギア王子に
「ごめんなさい。マギア君?元の彼は荒っぽい性格でああ言う話し方が苦手なのよね。これが本当のディアだから気にしないで。」
「おっ!テネブレも話し方が少し戻ってるぜ!」
「誰のせいでこうなったと思っているの?」
「わるいわるい。流石に間違えそうになってきたから」
「帰ったら、私達怒られるわよ。」
「まぁ、何時もの事だから今更ながらどうでも良いじゃん。」
「私は良くないの!」
「ぷっ アハハハっ!」
ディアと私は揃って忘れていたマギア王子の方を向いた
マギア王子は口許を押さえながら
「わ 悪かった。あまりにもギップか有りすぎてっ~~」
マギア王子は深呼吸してから涙をとりながら
「ふう~久しぶりに大声で笑った。お前たちは本当に仲がいいな、羨ましいよ。そうやって言い合いできる人なんかいないからな。」
「ヘイル?だったけなとは仲が良いんじゃないのか?」
「そうだな。ヘイルとは幼馴染みで昔はよく遊んでいたが、俺がふざけて木登りをして落ちて怪我をした辺りから今のように壁を作り始めた。幼馴染みの友達からいつの間にか主従関係に厳しくなってな。」
「その様なこと私達にお話ししてもよろしいのですか?」
「お前達を信頼しているからな。それよりディアーブルはさっき、俺の元を少し離れたいと言ってたな。」
「少し森の中を見たいからな。」
「それじゃ、俺も行く。」
「だめです。マギア君は、私とお留守番です。」
「何故だ?」
「この森にある果実を取りに行ってもらうだけです。」
「それなら俺も着いて行った方が、迷子にならなくてすむ。」
「ディアは、足が早いから追い付けないのです。それに彼が行っている間に夕食の準備をしないと間に合いませんよ?」
「それにテネブレ一人置いていくのは、いろいろと危ないからな~。」
「ディア!私は危ないことなんて有りません!」
「この前、料理を任せたら食材を取りに行くだけなのに30分もかかってたじゃん!」
「あれは、お肉の種類て悩んでいただけです!」
「じゃぁ、知らないおじさんに道を聞かれたとき一緒に着いて行こうとしたのは?」
「あれは!市場まで案内しようとしただけです!」
「確かにテネブレを一人にしておくのは危険だな。」
「そうだろ?じゃぁ テネブレの子守りよろしくな~マギア。」
「あぁ。任せろ!」
ディアと目線を交わし
『上手くたぶらかせたな。』
『えぇ。確認を頼んだわ。』
『了解。気を付けろよ』
『分かってるよ。』
ディアが森の中に駆けて行ったのを見届けてから
「調理室はこっちだ。」
マギア王子に案内されながら料理法を考えた
「そう言えば、マギア君は料理出来るの?」
「いいや。盛付けしかやったことがない。そう言うテネブレは?」
「私は、一応料理は一通り出来るかな。でもディアの方が上手く作るけどね。」
「そうか。」
料理室の中を見るなり不自然さに気がついた。
「ねぇ、マギア君。冷蔵庫どこにあるか分かる?」
「?冷蔵庫ならあの赤褐色のが冷蔵庫だ。」
「…そう。マギア君 こっちに来て?」
マギア王子と私の間が人2人分開いているので来るように言うと
「……いや。女性と二人っきりならこの距離を開けるように習った。」
私は彼の手をとり体を寄せ会うような感じになった瞬間。何処からか刃物が飛んできた。マギア王子に抱きつくようにしながら懐刀をとり出し飛んできた刃物を払い落とした。
その音に気づいたマギア王子から驚きの声が上がった
「なっ!」
「大丈夫。マギア君に傷一つつけさせないから。」
と微笑んでから刃物が飛んできた方向を向き変わらない声で
「貴方達の狙いはマギア王子ですね。」
一人で男性が中央の屋根から降りてきた。ボロ布の忍の装束姿で
「そうだ。それにしても、よく我のクナイに気づけたな。お前は何者だ?」
「名のる程の者では、有りませんよ。」
「ふん。まぁいい。その男を我によこせ さすればお前ともう一人の男の命だけは助けてやる。」
大袈裟に
「あらまぁ!お優しいことで。」
「我は寛大だからな。」
声を落とし
「所詮シノビ崩れ。私と契約している者を渡すと思うとは、呆れてものが言えないわ。そこまで落ちぶれてしまったのね可哀想な子たち。」
「!?シノビ崩れだと!?」
彼らより先にマギア王子が反応した。
目の前の男性は隙間からでもわかるように顔を真っ赤に染め上げ他のところから殺気が駄々漏れにたった。
ふふふ。こんな挑発に乗るなんて郷で何を学んだのかしらね?
「マギア君。少しだけこの中に居てくれる?直ぐに終わらすから。」
「駄目だ!俺も闘う。女のお前が勝てるわけがない。」
「はぁー。分かりました。援護をお願いします。 おいで!オピス」
『我が主。お呼びでしょうか』
オピスが出てきた瞬間シノビ崩れは驚愕しマギア王子は、後ろへ一歩下がった
「えぇ。契約者の彼を護ってちょうだい。」
『我が主の命ならどんなことでも致しますが……。また変わった者と契約を結びましたね。』
「数日のみの契約だから安心して。」
『諾。』
先に硬直から溶けたのはマギア王子だった。
「なっ!そいつは話せるのか!?」
「えぇ。この子は 白蛇オピス、彼は第二王子。」
『はい。存じ上げております我が主。』
「そうたったわね。」
シノビ崩れも硬直から抜け出し
「白蛇ってことは!!」
シノビ崩れが私の正体を明かす前に無慈悲に
「さようなら」
と言って首を落とした。
返り血を拭くこともなく次々とかかってくるシノビ崩れ達を相手にしていると、窓からまたシノビ崩れが入ってきた。
忍び本来の動きを見せてはいけないって、ハンデ多すぎだよ!
「オピス!彼に当たらないように気を付けてよ!」
『分かってますよ。ハンデもつけているのでさぞ殺り辛いでしょうが主なら簡単ですよ。』
「ふぅ。少しの間任したわ」
『諾。』
オピスとマギア王子の元に下がり
氷魔法で彼らを氷漬けにした。
マギア王子はいつも以上魔力を使ったようで、立っているのがやっとの状態だった。彼に掠り傷一つないことを確認してから
「マギア君?ディアのところへ行く?それとも別室でディアが戻るのを待つ?」
「……流石に疲れた。お前は何でそんなに平気なんだ?」
「何が?」
話をそらしたいとかではなく本気で分からなかった。
マギア王子は言い辛そうに
「体力もそうだし。何よりも襲われ返り血を浴びているのに何故何事もなかったように平然としている?本当に同い年か?」
「そうですね………。一つだけ今、答えておきますね。私達とマギア君は、同い年ですよ。来て黒トラ《ヘイアン》」
『呼んだが?』
「えぇ。彼を休める場所に運んで。オピスは、王子の寝室を見つけ出し安全を確認できたら戻ってきて案内して。」
『分かった。』『諾。我が主。』
「マギア君。彼の上に乗れる?」
「あぁ。」
ヘイアンに腰を低くしてもらいそこにマギア王子を乗せその後ろに私も乗った。
そろそろオピスが戻ってくるかな?
『主。見つけました。案内をさせてもらいます。』
「ありがとう。オピス。」
『我が主の命なら。』
「ふふふ、さて行くわよヘイアン。」
『分かった。』
運んでいる最中やけに静かだなぁとマギア王子を見ると心地良さそうにヘイアンの首に抱きついて寝ていた。
寝顔は年相応で可愛いのにね。なのにどうして目を開けるとあんなに口が悪いのかしら?
マギア王子が落ちないように支えながら彼の寝室をにたどり着いた。
マギア王子をヘイアンとオピスに任せ私は、手こずっているだろうディアの元に忍び装束を着て本来の姿で、シノビ崩れ狩に出かけた。