誓約
王子と護衛の事はディアに一旦任せ私は着実に郊外学習で決行する準備を進めていった。
そして郊外学習の翌日の夜
ディアに作戦の変更がないことを伝え明日に向けて早めに寝ることにした。
決行日。
私とディアはいつも通り学校へ向かった。正門では自家用車に乗って登校してくる人や私達のように徒歩で来る人とそれぞれだった。
門を潜ろうとすると
「おい!テネブレ」
と聞き覚えがあり今回の作戦のターゲットの一人が車から降り私のもとに来た
「おはようございます。マギア第二王子様 それで朝からなんのご用でしょうか?」
といつもと変わらない受け答えをしながら一向に降りてこない第二王子の護衛であるアゾットさんに疑問を覚えた。
「今日はお前達に頼みがある。」
見開きながらディアと目を合わせた
「 ただの一民でしかない私達にどの様なお頼みでしょうか?」
と聞くといつもよりおどおどしながら中々話さないのでディアが
「この様なところでは話辛い事ですか?」
「……いや。そうだな。車に乗ってくれないか?」
再びディアと目線を交わし
「分かりました。テネブレ、貴女も良いですか?」
「はい。私は構いません。」
「二人とも助かる。」
マギア王子のあとに続き真っ黒の高級車に乗り出された紅茶を受取り一息ついた。そして決心したように
「今日に限ってヘイルが風邪を引いて、寝室から出られない。ヘイルは、無理してでも俺に着いてこようとしたが熱が上がり倒れた。」
下を向いたままポツポツと話す内容を聞きながら何故アゾットさんがこの場にいないのかがわかった。
「それで、貴方様はどうされたいのですか?」
とディアが嘘を見逃さない様に第二王子を見ると彼は自嘲しながら
「散々お前達に喧嘩を売ったり探ってたのにこんなこと言うのは、虫がいい話だと分かっているが……どうか受け入れてほしい。」
しおらしいマギア王子を見ると気持ちが悪かった。何を企んでいるのか 全く分からない。
「俺の護衛をして欲しい。ヘイルのように四六時中側に居なくても良い。もしもの時は自分を優先してくれたら良い。この郊外学習の2泊3日だけ頼む。」
と頭を下げられたそれを見てディアは、私の耳元でマギア王子には聞こえないように
「やるんだよな?それなら行動していたら不味いんじゃ。」
「やるけど、その方が把握できていいと思う。」
「お前は頭脳派だもんな。」
「それならディアは、行動派だね」
「俺はお前に従う。」
「わかった。」
「第二王子様が仰ることは分かりました。お請けするに当たってお願いと約束があります。それを飲んでいただけるのであればお請けいたします。」
顔を上げたマギア王子は
「本当に受けてくれるのか!?」
「はい。その代わり願いと約束さえ守ってくだされば……ですけどね。」
「ああ!!お前たちの願いはなんだ?」
試すような笑みを浮かべ
「金輪際私達のことを嗅ぎ回らないで下さい。そして、私達の情報を何処まで集めたのかを教えてください。
これが約束と願いです。守っていただけるなら」「あなた様の血を一滴と魔力をこの石に加えてください。」
私の言葉を繋げるようにディアが言うと第二王子はすぐさま誓約書とその対価を払ってくれた。
誓約書を私が
魔力を込められた石をディアが
「これを身につけておいてください。」
と懐から私の魔力の入った石の欠片をネックレスにしたやつを渡した。ディアは、己の対になる勾玉の鉱石をチェーンに通した物を渡した。困惑する王子に
「これは誓約が完了したらお返しください。もしもの時は2回だけ貴方を無条件に助けてくれるでしょう。それと、こちらの願いと約束を破れば、それなりの罪が貴方様に与えられるでしょう。」
私達は、契約者に向ける礼をしてから
「「我らは、この誓約により本日より3日間この者を主と認め守ると誓う。」」
声を合わしながら誓約完了を示した。
それから体勢を変え今度は騎士のように方膝をたて、隠し短剣をマギア王子の前に二本出し私から
「私は、貴方様の剣であると同時に盾でもある。」
「僕は、対が剣であるならその時は盾で貴方様を守り、対が盾であれば剣となり守って見せましょう。」
「「私(僕)は二対で一つ。我らの忠誠をお取りください。」」
と更に剣を持ち上げると
「余は、そなた等を我が剣と盾と認める。その身を我が預かる。」
とマギア王子が掌から短剣をとりそのの変わりに魔力石を掌においた。それを受け取り己の愛用剣にはめ込んだ。
「約束だからこれからは、探らない。そして何処まで知っているかと言うと。
この街の奥にある森に住んでいること、両親が居なく何処かの貴族の館で働いていると言うことだな。」
「……………」
「………………」
私達の沈黙に気づかないまま
「後はテネブレは、何処かの貴族または王族出身。ディアーブルは、何処かの平民騎士または貴族騎士だと言うことぐらいだな。」
「「…………………」」
「おい。大丈夫か?」
「はい。お気になさらず。」
まだ納得いってなさそうなマギア王子をスルーしてクラス事に分けられた学園バスに乗り込みやっと出発した。
さすが許嫁 兼 幼なじみ。
二人とも目だけで会話が成立する
マギア王子の回りを警戒しながら
『肝心なところがばれてるぞ!?』
『それは私も予想外!』
『どうすんだよ。』
『まぁ、誓約しているから大丈夫だと思うよ』
『本当に大丈夫か?』
『破ったら、破滅が待っているだけだしね』
『……まさか、古代魔法を発動するようにしたのか!?』
『だって、かれに知られたら厄介だしね。』
『お前本当に末恐ろしい。』
『ディアには言われたくない!』
「テネブレにディアーブル 見つめあってどうかしたか?」
「何でもありませんわ。」「見つめてなんておりません。」
「まぁいい。頼むぞ。」
「「はい。」」