逝きました
一式陸攻の狭苦しい機内
現実を受け入れられずに背もたれにどっぷりと持たれて意識を投げ捨てようとするがしかし、激しく揺れる機内はそれを許してくれない。
彼…
山本五十六は絶望していた。
今から7分ほど前
唇の違和感と生暖かい空気が肺に入る感覚で目が覚めると真っ先に飛び飛んできたのは軍医の弩拡大顔で人口呼吸をされている状態だった。
生暖かい息の嫌悪感からつい送り込まれる空気に咳き込んでしまった。
「長官!!大丈夫ですか!!」
軍医の隣にいた左官の
「なんで旧軍の服きてんの?」
お前だれ? ここどこ?… って俺指ないじゃん……えっ、この姿って山本五十六?
えっ…今何年?
昭和18年?
……元年が25だから43か………
えっ、死ぬじゃん俺…。
自分が置かれている状況に気づいた時には既に遅くP-38に発見されていた。
護衛機の零戦達がV字編隊を止めて一式陸攻から離れて上昇していく。
一式陸攻の上を取ろうとするP-38編隊に20mmの機関砲掃射をするが、すぐさまP-38は散開してそれをあっさりと躱す。
P-38は零を無視して一撃離脱戦法に基づいて一式陸攻に迫っていく。
多勢に無勢の中、六機の零戦は敵機を一式陸攻に近づけさせないように散開して個々に奮闘するが倍以上の敵機全ての相手をすることは出来ず、ほとんどのP-38の接近を許してしまう。
「くそっ!!発動機に被弾しやがった!!」
操縦手の怒声が狭い機内で響く。
日米の20mmや12,7mmの発砲音をかき消すほど轟かしていた双発の右舷側が炎上した。
激しく機体を揺らしながらエンジン音が小さくなり機体が失速し、高度がみるみる内に落ちていく。
そして島へ吸い寄せられるように機体はブーゲンビル島南部モイラ岬のジャングルに墜落した。