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5月9日 朝



屋上へ続くはずのドアがない。逃げ道のなくなってしまった私は、追っ手である彼女に突き落とされる。暗い笑みを浮かべた彼女は呟く。


『そう、あとはただ歪んでいくだけ…』










「…っ!」


体が落ちていく感覚にはっとして起き上がり、時計を見ると6時48分をさしている。もうあと2分もすれば起きる時間だ。


にしても、我ながら凄い夢を見た気がする。変だといえば変だけど、まとめたら一冊本が書けてしまいそうな夢だった。最後にバッドエンドみたいな感じだったのが、後味が悪い理由かもしれない。更に面白い事に、瀬川さんが出てきた。昨日の夢の話といい、不思議な事もあったもんだ。




「よし、この夢は誰かに話そう」


洗面所で身支度を整えながらそんなことを考えていた。間に受けたわけではないにしても、昨晩の夢が現実になってしまうのは嫌だった……というよりも、話のタネになりそうだったので話すことにしたのだ。



朝食を食べながらテレビをつけると、最近良く見る顔が映っていた。画面には、

『女優の岡田葵さん(17)が、昨晩から行方不明』

の文字。確かこの子私と同学年だった気がする。なかなか世の中も物騒になったなぁなど他人事のように思いながら、母特製のエッグマフィンを食べる。




朝食をとり終え、自宅を出る。部活は午後からなので、今日は午前中は予備校の自習室へ寄っていこうと思っていた。


外に出ると突然影が横切り思わず空を見上げれば、カラスが一匹去っていくところだった。そういえば今日は燃えるゴミの日だから、多分カラスがもう待っているのだろう。今日も今日とて雲ひとつない空。最高気温は28度。何の変わりもない朝だった。




予備校で2時間半程勉強をして、12時45分発の電車に乗る。今日の車内は家族連れやカップルが何組か乗っている。土曜日の昼なんてそんなものだ。世の中カップルなんかに対する当たりが強いけど、私はこれといって恋愛願望もないし、リア充爆発しろ!と思ったこともない、というか興味ない。私にとって大切なのは、部活と自分の趣味についてくらいだ。


学校の最寄りを降り、改札をくぐる。すると突然後ろからドンと誰かに体当たりされた。部活の友達だろうと振り向くと



「わ、瀬川さんじゃん」


「おはー」



またまた瀬川さんと遭遇したのであった。二日連続で登下校で一緒になるのは珍しい。



「よく合いますな。今日は何かあるのかも」


「人を疫病神のように言うなし!」



私の学校は最寄りから10分程離れていて、通学路として決められている道を通ると公園の脇を通る。いつもは犬の散歩をするお年寄りくらいしかいない園内も、今日は子供達がたくさん遊んでいる。若いねーなんてことを二人で話しながら学校の前の信号をわたる。



「あ、そういえば」


「ん?」



「今日さ、変な夢見たんだよねー」


「え、うちにそれ話すの?やだよー続き見たくないよ!」


「あ、やっぱり覚えてるか」


「自分の話くらい覚えてるわ」


「それが、学校の正門くぐったとこから始まるんだけどさ…」


「話すんかい!」









そんなたわいもない話をしながら、あははと二人で笑いながら学校の正門を何も気にせずに通った。






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