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こんな夢を観た

こんな夢を観た「誕生日のプレゼントをもらう」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/06/23

 差出人のない封筒が届いていた。

 中身は手紙だったが、読むのにも苦労するほど字が汚い。


 〔 拝啓 むぅにぃ様。あなたに すごいものを ぷぜれんとしよと 思います。 つきましては 3丁目の「1本松公園」の 「ゾウのすべりだい」 の前まで 来てほしです。 ただし 必ず 1人で来ること。 お待ち してるます。 かしこ 〕


 見るからに怪しい。「すごいプレゼント」って、いったい何なのだろう。本当にあげたいと思うのなら、手紙なんか書かかず、そのまま送ってくれたらいいのに。

 それに、「1人で来い」とは、いかにも物騒な。まるで、身代金目当ての犯人と取り引きでもするみたいだ。


 わたしは手紙を破って捨てようとした。

(「1本松公園」って、確か角を曲がってすぐの公園だったっけ……)

 駅に向かう途中にあるので、よく脇を通る。その真ん中には、ピンク色の「ゾウの滑り台」があって、とても目立っていた。

「あそこか。ちょっと、のぞきに行ってみようかなぁ」手紙を折りたたんで、ポケットにねじ込む。


 公園に行ってみたが、誰もいなかった。普段なら、小さい子を連れてお母さん達が数人集まっているのだが、猫1匹見当たらない。

 「ゾウの滑り台」のすぐ下には、アタッシュ・ケースほどの小包が置かれていて、あの下手くそな字でメモが貼られていた。


 〔むぅにぃ様へ。 このぷぜれんとを 受け取てくさい。 〕


 どうしようかなあ。中を開けたら、ドカンッていうのは困るし。

 でも、名指しでメモを貼られていては、このままほったらかし、というわけにもいかないしなあ……。


 5分くらい悩んで、持って帰ることにした。運んでいる最中に爆発するかもしれないので、できるだけ人通りの少ない道を選びながら。

 

 部屋に戻ってからも、小包の前で考え込む。耳を当てても、カッチコッチどころか、うんともすんとも言わない。振ったり逆さまにしたりとするが、コトリともしなかった。

「よーし、勇気を出して開けてみよう」ゴクリとつばを飲み込むと、一気に包みを剥がす。

 中から現れたのは、ワープロだった。バースデー・カードが添えられていて、ミミズの這ったような字で


 〔はっぴぃ・ばぁすでぇ、むぅにぃ!〕


 と書かれていた。


 ああ、誰かがわたしの誕生日を覚えていてくれて、それでこれを贈ってくれたのか。

 それにしても、今どきワープロって。

 ノートブック型のワープロだったが、キーボードは一切排除され、代わりにタッチパッドが付いている。付属の専用ペンで入力するらしい。

 わたしは、マニュアルにざっと目を通す。

「なになに、『このワープロは手書き入力専用です。それ以外の方法では、絶対に使用しないで下さい』」


 それ以外に選択なんてないだろうに、わたしは心の中でつっこむ。

 しばらくいじり回すうち、あることに気づいた。


 このワープロには変換機能がないのだ。「こんにちは」と入力しても、「今日は」にはならず、ひらがなのまま。

 それどころか、文字の認識すらしてくれず、ただペンで綴ったその通りを表示するだけだった。

 当然、誤字は誤字のままである。

 試しに入力して、印刷ボタンを押してみた。


 〔なに このワープロ。 ぜんぜん 使えないじゃん。 これなら いちいち ワープロなんか使わなくたって 手書きでもいいと思う な。 〕


 お世辞にも、上手とは言えない字で出力される。見慣れたわたしの字だった。


 わたしはワープロを箱に戻し、拾ってきた公園に返すことにした。


 〔はいけい おくりぬす様。 わたしの誕生日を 呪ってくさだって ありがおうごぜます。 この ワプーロは わたしには もたいないと思いますので お返し するします。 どか お持ちかりえ ねがます。 むぅにぃ。〕 


 まるで幼稚園児の書いたようなメモを、箱の上にテープでしっかりと貼りつけた。 

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