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クロノツバサ  作者: 菅野いつき
旅立ちと生き残りのフェニックス
2/6

脱獄者と裏切り者

作り直しました

エルはとてもお腹を空かせていた。だからだろう。彼の分も残しておこうと考えていたのに全て食べてしまった。なんだか申し訳ない気持ちになりうつむく。少し風が吹いてきて寒さを感じる。その度に裸足の足を擦らせた。

「何だ、寒いのか?」

「い、いえ。大丈夫です」

 これは前回のように反射的反応で言ったものではない。ちゃんと頭で考えて出た言葉だ。彼にこれ以上お世話になるわけなはいかない。何しろ食料を全て食べてしまったのだから。しかし、彼はそんな私の気持ちを知ってか知らぬか自分の羽織っていたマントをエルに渡してくる。

「いいですよ!私寒くないです」

 そう一心に言ったが私の言葉は聞き入れず首を横に振った。

「お前は寒いと感じているだろ?」

 エルは首を降った。

「さっきから震えてるけどな」

静かな口調で淡々と言う。エルは負けじと口を開けた。

「でも、そしたら貴方が寒いじゃないですか?」

 彼は鼻で笑ってからマントをエルの身体上に投げた。

「寒くはないよ。俺は寒さに強い」

エルはそれを聞くと静かにすみませんと言ってマントを身体にかけた。これ以上戦っても無駄だろう。かけるととても暖かい。生地は薄いのに不思議だ。彼を恐る恐る見てみる。彼は変わらず入り口付近を見ている。さっきと違ってフードは被っていないので顔がよく見えた。綺麗な黒い髪をしている。男性にしては髪が長いように感じた。肩についている。目はどちらかというとつり目だがなんだか柔らかい。とても優しそうな悲しそうな目をしている。目の色は闇の中でもきらびやかに光る青い目だ。ここに降りてくる前にひっそりと闇の者について調べ種族や能力を頭にしっかりと入れたはずが、エルは彼がどの種族なのか全くわからなかった。エルが見つめているのに気づいたみたいで此方に向いた。エルは慌てて口を開く。

「あ、あの寝ないのですか」

「寝る必要はない。お前は寝ないのか?寝といた方がいいと思うが」

「なら、私も寝ません」

 何故か負けたくないと思い強気な発言んをしてしまった。彼が鋭いにらんでくる。

「寝ないと身体も体力も治らない」

「私は寝ません」

 彼は呆れたように溜め息をつき勝手にしろと言うように入り口に目を戻した。

それから何時間たったかはわからない。エルは眠気に負けじと頑張ってはいたがとうとう眠気に負けてしまった。



 絶対に寝ないと強がっていた少女はようやく眠りについたようで気持ち良さそうに寝息をたてている。寝ないと強がったのは自分は光の戦士で俺みたいな闇にはお世話になりたくないと思ったからかわからないが。

 慎は静かに笑う。それならかわいいものだな。おちょくったら面白い反応が返ってきそうだ。想像すると笑いがこみあげてくる。寝息を立てている記者な少女。それを見て慎は少しの間だけと目を閉じた。



 少し明るくなったような気がして目を開ける。洞窟内は優しい日の光がさしこんでいた。どうやら入り口方向は東のようだ。エルは横にいる少年に目を向ける。少年は目を細めて不思議そうにその光の先を見つめていた。これは太陽だとエルは確信していた。

「なんだ?この光」

 エルが起きたことに気が付いたらしい彼は静かに呟く。

「お日様です。太陽です」

 彼は驚いた顔をする。

「太陽だと?どういうことだ?」

「私のいた牢獄は朝だけお日様の光を拝むことができました。理由はわかりません」

 少年は静かにエルを見た。

「ここに天使が舞い降りたからか…」

 ボソッと言った一言はエルには聞こえていなかったようだ。その証拠にエルはキョロッとした顔でいた。

「そろそろ行こう。お日様が出た。すぐに見つかる」

 そういって少年は立ち上がった。言っている意味がエルにはわからなかった。だがあまり気にしないようにして、エルは彼の後に続くようにして立ち上がる。立ち上がると急に脚にかかっていた温かさがなくなる。エルはその時思い出した。マントを借りたままだったことに。

 先に出入り口付近に行って眩しそうに目を細めて空を見上げている慎に追いつく。

「あ、ありがとうございます」

 昨日借りたマントを彼の顎の前に差し出す。すると彼はそれを無言で受け取り羽織り、フードを被り、外に歩き出した。慌てて追いかける。お日様の日差しはもうすでに黒雲(こくうん)に隠れてしまった

 外は低い谷の底みたいな空間になっており、左側に行けばいくほど谷は低さを増す。一本の剣みたいなのが地面に刺さっていた。それを少年が一気に引き抜く。すると剣は黒い霧みたいなものになり彼の中へ一部が消えていった。少し残った黒い霧は彼の手に集まり形を形成させていく。それはどうやら黒いマントのようだ。出来上がると彼は振り返り出来上がったばかりのマントをエルに渡した。

「特殊加工してある。お前が常に放っている光の効果を隠せる。そのままじゃ奴等にすぐに見つかるからな」

 エルはそれを無言で受け取りそれを羽織った。

「それに、俺が眩しい」

 その言葉を聞いてフードを被る。それを見届け少年は歩き出した。エルは慌ててそのあとをついていく。

 しばらく無言である程度の距離をとってうつむいて歩く。すると急に彼が立ち止まったらしくぶつかってしまった。この時初めて思ったのが意外と身長が高いということと固く立派な身体だということだ。百七十センチ後半くらいだろうか。身体は毎日着替えているのだろう。などと呑気な事を考えていると、彼の身体から黒い霧が出てきてそれが右手へと移動していく。それはみるみるうちに姿を変えて先程見た黒い剣へと姿をかえた。私は身震いをした。

「きおつけた方が良さそうだ。何か気配を感じる」

 彼は歩き出した。エルは生唾を飲む。

 やがてこの谷の出口が見えてくる。エルはなんとなくほっとした気分になり身体の力を抜いた。後ろを振り返る。その時。急に腕を引っ張られ、気がついたら尻餅を着くようにして転んでいた。目の前には黒い空をバックに二つの剣が重なりあっている。片方がエルを守るように剣を防いでもう片方が攻めている。勿論守るようにしているのは少年なのだが。その光景を見た瞬間恐怖が身体中を駆け巡った。身体が動かない。

「今は周りにこいつらの仲間があまりいない!早く逃げろ!」

 声は聴こえているが身体が震えて動かない。少年は腕に力をいれ、剣を降りかざしてきた者を投げ飛ばした。

「チッ。もう少しで脱獄者を仕留められると思ったのにシン様が邪魔しちゃなぁ。やっぱり裏切り者ってのは本当だったのかよ。なぁ?シン様よぉ」

 襲って来た奴は甲高い声を上げて言った。慎と呼ばれた少年は構わず剣を構える。

「ふ~ん。本当のようだね。シン様」

 そういって笑った。すると周りから続々と闇族の者が集まる。

「油断するなよ。相手はあのシンだ。何をするかわからねぇ」

 エルはやっとの想いで立ち上がった。すると急に慎が左手でエルの右腕を掴む。また、身体から黒い霧を発生させ、急に真正面に走り出した。後ろをなんとなく振り返ると黒い刃がエルのいたところをちょうど通りすぎるところだ。

「なんだ?彼奴血迷ったか?」

 闇族の者謎の接近に声に出して笑う。

 さっきの攻撃を避けるためとは言え相手に近づきすぎだ。後ろからも奴の仲間が接近している。

「ちょっ!危ないです」

 エルは叫んだ。

 もう少し奴等とぶつかる寸前で黒い霧がエルと慎のを包み込むように隠す。次の瞬間黒い霧は一気に濃くなり、濃くなったと思ったら、今度はすごい勢いで慎とエルから遠ざかっていく。

「ぎゃぁぁぁぁ!」

 何が起きたのかわからないが周りを囲んでいた敵たちは四方八方へ吹っ飛んでいくのがわかる。「はぁー」慎の息を吐く音が聞こえる。

「た、隊長大丈夫ですか?」

 闇の下っ端たちの慌てた声が聞こえる。

 隊長と呼ばれた男はむくっと起き上がる。それ以外の飛ばされた闇族は身体を痙攣させて苦しそうにもがいている。

「しぶといな…隊長」

 慎は呟きにたりと笑う。そして、空を見上げる。

 エルもつられて空を見ると一羽の鳥が空高く円を描きながら飛んでいるのがわかった。

「近くにあいつ、いるな」

 彼は小声で呟く。

「おい、お前。馬の鳴き声が聞こえたら何でもいい。叫べ」

 そう言い残して、慎は動揺したような闇の群れへと入っていった。

 慎の動きは俊敏で、彼らが剣を振っても当たることはない。見ていて安心できる。しなやかな動き。そして彼の動きは剣を振ってはいるものの攻めにはいかず、守りを徹底しているようだった。敵をこちらには近づけさせない。いったいどんな風に動いているのかよくはわからない。その時馬の鳴き声がしたような気がした。

「シ~ン!!」

 エルは慌てて声を張り上げた。

 慎はその声を聴くと真後ろに飛び、敵と距離を一気にとりる。エルの横に来た慎はエルの手を掴んだ。

「いくよ…」

 そういわれても何を準備していいのかわからない彼女は、慎が発生させた黒い霧に身を任せるしかなかった。強い風が吹く。息ができなく苦しくなる。ただ彼の手を離さないように握っていた。

 薄れゆく意識の中、地上が遠くなるのを見た。




 ーガタゴトー

 大きく揺れる揺れを感じて、私は目を覚ます。

 そこは、馬車の中だった。

 少し周りを見渡すと私を助けたシンは、少し離れた所で腕組をして目を閉じていた。寝ているのだろうか。

 他には沢山の荷物が置かれていた。中には食べ物もあった。右側の真ん中に穴が空いていた。人がしゃがんで通れるくらいの穴だ。その反対側には壁がなく布で中が隠されている。

「ん。起きたのか」

 不意に小さい穴の方から声がした。男性の声だ。男性にしては高い声をしている。

「だ、誰!?」

 エルは声を上げた。男性は振り返るようにしてこちらをみる。その顔はにやけていた。特徴的なツンツンとした赤紙額にまいた緑のバンダナそれにこの馬車、馬の声。間違いにい彼は闇の中でも絶滅寸前の種族馬とともに生き化け物を召喚するストームキーパァと呼ばれる種族だ。

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