追われ人
初めてのファンタジーです。小学生から温めてたネタの復活です
慎は独り荒野を歩いている。相変わらず、黒雲が空を覆い、陸上には太陽の温かい光が降り注ぐことはない。その結果草木は枯れ、葉っぱを付かせていない木は、妙に目立っていた。乾いた風が仕切りに吹き、慎の黒いマントのフードを揺らした。
「はぁー…」
ついつい溜め息をつく。いつまでこんな景色を見なくてはいけないのだろうか。五日前にこの広大な広野に入ってから食料はおろか、水までそこをきらしてしまいそうだ。もって、後一日といったところだろう。果たして、食料が底を迎える前に人が住む町に着くのだろうか。または、運良くあいつに会えるだろうか。
慎は思った。このまま、後四日、着くことがなくあいつに会う事もなかったら、俺は確実に餓えで死ぬことだろう。死んでしまったら一族を裏切って出てきたのが無意味になってしまう。それだけはなんとしてでも防がなくてはならない。
慎は悪い夢を振り払うように首を横に振り水を一口身体に取り入れ、走り出す。
慎の一族は闇の使者と呼ばれている。理由は簡単だ。この世界は俺ら闇の使者によって支配されている。光嫌いな俺の一族は空を黒雲で覆った。もう一つ理由がある。それは光一族の存在だ。彼らは太陽の光でエネルギーを作っている。太陽がみえては奴等はエネルギーを得て、闇一族に反撃するだろう。だが、今はその光一族も闇一族の支配下となっているらしい。細かいところはよくわからんが。
細い谷が見えてきた。立ち止まり、前方にそびえ立つ谷をみつめた。いや、崖といった方が正確かもしれない。高い。15メートルは軽くあるだろう。自然の力によって大きく削られ、くの字型に曲がっている。それは、昔ここに川が流れていたことをもの語っている。水の力によって削られたということだ。
慎は再び大きく溜め息をついて、谷の間を進んだ。 谷は昔川だっただけあってくねくねしていた。この先に、この谷の先に果たして町は存在するのだろうか。不安があったが今更引き返しても意味がない。それに闇一族の追手がすぐそこまで来ているかもしれない。
谷の間をゆっくりと歩く。進めば進むほど谷は高くなり黒雲から出てくる僅かな光が届かなくなる。普通の人間がここを通ると前が見えなくなることだろう。しかし、慎は例外だった。いや、慎だけじゃない。闇族全ての者が前が見えることだろう。
息が白色に染まった。それだけでここがとても寒い所だとわかる。マントのフードを深く被った。
「ん?」
何処からか人の声がしたような気がして足を止める。しかし、いくら耳を済ませても通りすぎる風の音以外何も聴こえてこない。やはり気のせいだったのだろうか。
再び歩き出した時それは確かに聴こえた。どうやら上の方から聴こえてきたようだ。何を言っているのかはわからなかったが確実に人の声だ。
俺は真上を見た。白色に光る何かがすごい早さで落ちてくる。俺は咄嗟に落ちてくるものの落下速度を抑える為に、右手を上に持ち上げて呪文を唱えていた。
白く光ものを紫色の光が下から包み込む。次第に落下物のスピードは遅くなり、地面にふわりと優しく
俺は荒くなった息を整えながら落下物を見た。
落下してきたもの。それは人だった。眩しい光を全身に帯させた女の子だ。どうやら傷をおったみたいで、意識はあるが息が荒い。腕に紫色の切り傷がある。そこから数量ではあるが赤い血液が流れ出ている。他にも痣や傷が付いた部分が沢山あるが、いずれもすぐに命に関わる事は無さそうだ。それにしても眩しい。目がやられそうだ。
慎はフードを今まで以上に深く被り、少女を背負って歩き出した。
数分歩くと崖は低くなり上がどの辺かわかるくらいにまでなってくる。いつの間にか夜になっていたらしく、元々黒い空がますます黒く染まっている。夜になると闇の一族の力は増す。それに背中に背負っている娘も心配だ。今日はもうこれ以上進むのは危険と判断。どこか休める窪みがあればいいが。周りを見渡す。すると三メートル先の所に小さな穴が開いているのが見えた。半ば走りながらそこへ入る。そこは人、二人入ってもまだ何人か入れるくらいの幅の横穴になっていた。
慎は背中に背負っていた娘を下ろし、もう一度傷を見る。この傷は闇族が付けた傷であることは間違いない。それは、傷の付き方ですぐに判断できる。普通に刃物で斬って出来た傷もあるがそれとは別に、さっきも言ったようにどす黒い紫色に染まっている傷が腕に2,3ヶ所ある。これは、呪文で出来た傷だろう。そして、紫に染まった傷からは赤い血と混じってドロドロとした紫の液体が流れていた。毒性のある傷だ。どのくらいの毒かはわからないが。このてのものは、体力低下や手足の麻痺などの症状がある場合が高い。その他にも追跡とかもできてしまう代物だろかもしれない。追跡機能はあると厄介だ。ちなみにこの手の呪文は今は闇一族しか解除不可能だ。
「仕方がない」
慎は右手の掌を左手の手の甲に重ね、紫に染まった傷口にそれを添える。ゆっくりと息を吸い込み、目を閉じる。この呪文を解除するには精神統一が欠かせない。まず、この呪文が何なのかを分析する。この呪文は結構強力な毒素型だ。彼女の体力を奪い取っている。彼女はじわじわと死に向かっている状態だろう。次に自分の覚えていて使える解除呪文を必死に探す。頭をフル回転させる。一分もたたないうちに的確な呪文を見つけ出した。オレはゆっくりと口を開け呪文を唱えた。強力な毒素呪文には強力な癒し呪文を。しかし、強力なだけにオレの体力も一気に奪われていく。紫色の光を全身に解き放つ。ゆっくり目を開けて、傷口を見た。紫色の傷口は見る間に塞がっていき、最後にはまるで何もなかったかの様に消え去った。荒い息を整えて、立ち上がった。あと、一つやらなければならないことがある。
洞窟を出ると右手に何か細い物を持つかの様に手を丸める。黒い光がその右手に集まり、一本の細い長剣を作り出す。作り出された長剣を刃を下に向け前に両手に持つ。その手を上へ持ち上げ、勢いよく地面へ突き刺した。ガツンという鈍い音が鳴り響き、そこから薄黒い光が洞窟とその周辺を囲う。次の瞬間、薄黒い光は消えた。光は消えたがこれで差した長剣から外側から此方を見るとただの岩にしか見えないはずだ。彼女にかかっていた呪文も解いた。追跡はないだろう。慎は再び洞窟へ足を踏み入れた。
私は目を覚ました。
風の吹き抜けるような音が耳に届く。上半身をゆっくりと起こそうと身体に力を入れる。その瞬間激痛が走る。
「う…」
激痛に耐えながら起こす。状況を確認すべく周りを見渡すがあたりは暗く目が慣れないと見えそうにない。どうやら今いる所は洞窟の様だ。
足音が聞こえてきた。その足音は洞窟内で反響して方向が良くわからない。恐怖を感じて身構えた。もしかしたら自分は脱獄に失敗し捕まったのかもしれない。
「なんだ、起きたのか」
低い何者かの声が聞こえた。その瞬間足が震え鼓動が高鳴る。何処かで感じたことのある鋭いオーラとでも言うのだろうか。私はそれを感じた。
間違いない、雰囲気が、怪しい話仕方が闇の者だ。そう思った瞬間恐怖が全身を走り身体が硬直する。
「ん?どうした。寒いのか?」
(奴はまだ私が誰なのか気づいてない)
私は鼓動を必死に落ち着かせる。そして、思考を回転させた。
(ばれていないなら利用してやれば良いのよ)
無理やりそう考える。
だんだん目が慣れてきた。闇一族だと思われる人の事も見えてくる。彼はフードを深く被り青く光る目だけを此方に向けていた。鋭いがどこか懐かしく、優しい目。その目を見ていると自然と彼に対する恐怖も消えていくようだった。
よくはわからないが寂しそうな目をしている。そう思った。
「あ、あの…その」
何かを言おうと思ったのだが言葉が出てこない。何を話していいのかわからない。
彼は、私から目を離し洞窟の入り口へと目を向ける。
「お腹とか、減ってないか」
「あ、大丈夫です」
私は反射的に答えていた。答えた後少し後悔した。実際お腹減は減っていた。もうこれ以上ないというくらいに減っていた。なにしろ、昨日の夜から何も食べていない。追ってに追われて食べる暇がなかった。それに、食料も持っていない。
「ならいいが」
その瞬間。私のお腹は高々になった。頬を赤らめて視線を下に下げる
「今、お腹」
「聞き間違いです」
なんだか恥ずかしい。彼の視線が此方を向いているのが見なくてもわかる。
「はぁ~」
ため息が聞こえた。呆れられたのだろうか。
「ほら」
私はゆっくりと顔をあげる。
「これ、食え」
そういって差し出されたのは、パン。私は戸惑った。
「いや、大丈夫です」
その時もう一度鳴るお腹の音。なんていうタイミング。
「いいから食え」
私は渋々受け取り、彼の表情を確認しようと彼を見たがフードで隠され横顔しか見えなかった。
私は仕方なく手に持った食料を見る。見れば見るほど食べたくなり生唾を飲み込み。も一度彼を見た。今度は目が合った。洞窟内にうっすらとした光が入ってきて彼の目がよく見えた。優しそうな目をしている気がする。私は反射的にパンを一口かじりうつ向く。口の中のパンを噛むと久しぶりの食事に心が満たされ。ついつい微笑んでしまう。そして、また一口。
「お前って光の者だろ」
その一言に全ての動作が停止した。彼は気づいていたのだ最初から。身体が再び震え出す。ゆっくり顔をあげる。彼は真ん前の入口を見ているようだった。
「よく、出てこれたよな」
生唾を飲み込む。彼は私をどうする気だろう。
「ん?どうした」
彼は私の異変に気づいたのか私の方に目だけを向けていった。
「あ、いや…」
言葉が上手く出てこない。身体は完全に固まってしまっている。
「別に、俺はお前を捕まえようとも殺そうとも思ってないぞ」
落ち着いた声だった。彼は「それに」と続けた。
「それに、俺だって追われてるんだ」
言っている意味がわからない。どうして同じ種族の人に追われているのだろう。聞いてみたかったがぐっと堪えた。なんとなく言葉にしちゃいけない気がしたから。
私は静かにもう一口かじった。
今回はここまでです
読んでくださりありがとうございます




