とばされた日3
ドタドタと、何人か走ってくる足音が近づいてくる。
ついでに叫び声もする。
男の声だ。
何事かと振り返れば、そこには兵士がいた。
兵士は古代ギリシャのような甲冑を身につけている。
兵士を従えるように、中心にはヒラヒラした服を着た男がいた。
あいつはなんか偉い人そうだな。
服が他と違って小綺麗だからだ。
そいつらは俺のいる群衆めがけて突進してくる。
「ッ!**、******!?」
小綺麗な男は、群衆の中心の俺を見つけると何やら叫んだ。
すると俺を支えてくれていたおっちゃんが俺から手を放し、数歩下がってひざまずいた。
周りにいた奴もみんなひざまずいたかと思うと、小綺麗な男に向かって頭を下げた。
やっぱりあの人身分が高いんだ。
俺もまねした方がいいのかな?
どうしようかと迷っていると、とうとう小綺麗な男は俺の目の前にたった。
近くで見た小綺麗な男は、顔も小綺麗で、30代前半の濃いブロンドの髪をしていた。
小綺麗な男は、灰がかった緑の瞳をめい一杯見開いて俺を見ると何やら呟いた。
あ、やっぱ俺が目的?
俺も頭さげてないから?
もしや俺ってばくせ者?
疑わしい奴?
でも俺のせいじゃないし。
ってか俺も分かんないし。
俺、どうすれば良いでしょう?
戸惑って回りに視線を伺わせると、俺を取り囲んでいた群衆はみんな頭を伏せて目も合わせられない。
どうやら俺たちの様子を伺っているようだが、俺としては俺がお伺いしたいのですよ。
「****。**********。******、*********?」
と、小綺麗な男が平常心を取り戻したように、でも緊張した面もちで声を掛けてきた。
何か言ってる。
でも何云ってんのか全わからん。
「あ~…スイマセン。あなたが何を云ってるのか判りません。気がついたらココにいました。俺、何かやっちゃいけないこと、しました?」
で、とにかく云ってみた。
心臓バクバクいってます。
俺は小綺麗な男がどう反応するのか待ってみた。
小綺麗な男は一瞬目を見開いたが、すぐに元の固い顔に戻ると納得したように頷いた。
あの、何を納得したんですか?
俺の云ったことわかったのかな?
やっぱ俺は捕まるのでしょうか?
そういや俺パスポートなんか持ってないよ。
いきなりこんなトコにいんだもん。
すると小綺麗な男はすっと手を俺に差し出した。
「*****」
え?
俺、あんたに付いていけばいいの?
俺は差し出された手と小綺麗な男の顔を交互に見た。
この手を取ればいいのだろうか。
小綺麗な男を見返すと、男は俺を安心させるようにフッと微笑んだ。
俺はその微笑みにつられて、男の手をそっと取ったのだ。