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とばされた日1
あれは初詣の人々がちらほらと行き交う夜更けだった。
高校最後の年明けだからと理由を付けて友人達との初詣へ行き、いつもよりテンションが上がって盛り上がった夜だった。
友人達と分かれて帰路につく途中、それは前触れもなく起きた。
大通りから住宅街の筋に入り、たいして役に立っていない街灯の暗い明かりだけの寂しい道。
俺の10メートルほど先を、同じ初詣帰りの若い奴が歩いている。
それは前触れもなく起きた。
突然街灯の光がなくなり、大通りから届いていた賑わいの声も消え、都会の空の微かに見える星さえもなくなって、辺りは闇に包まれた。
「な、なにこれ?」
すぐ近くで声がした。
さっき前を歩いてた奴だ。
俺は声を掛けようとした。
俺も突然の闇に不安になったからだ。
しかし、俺が一歩前へ出ると同時に地響きが鳴り、地面が崩れたかと思えばそのまま落ちてゆく。
「ぅあぁぁぁぁぁぁぁ!」
これは俺の叫びではない。
またしても先を越された。
さっきの奴が叫んでいる。
きっとあいつも落ちているんだろう。
と、自分も底のない暗闇に落ちているというのに冷静なことを考えていた。