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MAX HEART!  作者: ユウ
――不思議絵師編!
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不思議絵師 三筆!

 意識不明になる程の重体となる虐めの結果、私は親の意向もあり転校という事になりました。虐めグループと「あの子」のその後はわかりません。そもそも意識が無くなった私を、誰が病院に運んだのかもわからないのです。いずれにしても転校してしまえば、その学校の事は私とは一切の関係が無くなります。

 転校した先の学校でも、私に友達ができる事はありませんでした。その代わりというべきなのか、虐められる事もありません。残りの中学生活である二年間、人との付き合いも無いままに過ぎていき、そして私は中学を卒業しました。卒業式の日、卒業生のほとんどが友達と記念撮影をする中で、私だけがたった一人の卒業式でした。

 ただ一つ。転校してからの中学生活の中で、わかった事がありました。それは具現化した絵の事。小学生、中学一年と通して、具現化させた絵が見えないのは、大人であるからだと判断していました。しかしそれは違ったのです。正確には純粋で信じる心が無ければ、具現化させたモノは見えないのです。中学生活の中で具現化させたモノを見れたのは、たった一人だけです。学年が上がるにつれて、私の具現化させたモノを見れる人は少なくなりました。恐らくはもう一緒に見れる人は、滅多な事では現れないのでしょう。


 ――そして高等学校への進学。父と母は、とても心配していましたが、将来的にも安心させる為には、高校、そして大学へと出ておきたかったのです。

 それに高校になると、人間的にも落ち着きが出た為か、あるいは偶然的にもそういう事をしない人が集まった為か、虐めをする人はいなかったのです。虐めは無くなったものの、小さな頃からの一つのトラウマでもあった人見知りが、ここに来て最大の敵となりました。高校生活を送って半年が過ぎても、私には友達と呼べる人間はいませんでしたし、クラスメイトの人達とも喋る機会はありませんでした。

 私は既に当たり前となっていた、逃げるように教室を出て、一人太陽の照りつける裏庭に立っていました。時期も六月の中旬を過ぎ、そろそろ夏の太陽が顔を出す季節。暑さにやられないように、日陰へと移動し、誰にも目のつかないように、小さくその場で絵を描いていました。最近ではあまりやらなかった、具現化をして自分の描いた絵と遊んでいました。私は何故か小さな頃から、像が好きだった事もあり、下手な像の絵を描いては、その像と遊んでいました。

「君は可愛いよね。私とは大違い……」

 何も喋らない像に話しかけるのが、いつしか癖になっていました。むしろ何も喋らないからこそ、何でも話せたのかもしれません。

「…………!!」

 すると、突然遠くの方から大きな声がしました。しばらく聞き耳を立てていると、その声の主はどんどんこっちへ近づいているようでした。声だけではなく、足音も聞こえ、足音から来るのは二人だとわかりました。近づくにつれ、声の内容も掴めてきました。

「オイコラ、待てぇ!」

「やだよ、だって……僕が……!」

 どうやら大きな声の人が追いかけているみたいです。二人の声から察するに男の人でした。少しずつ近づいてくる二人に、私は見つからないように身を潜めていました。

 すると追いかけられている人が、そこを通過しました。見た目は非常に優しそうな人です。そして、それを追いかける大きな声の人が通る瞬間でした。

「あっ、ぞうさん、だめ……!」

 私の描いた像は、勝手に歩き出し、今そこを通ろうとしている人の前に出てしまったのです。

「うわっ、なんだコイツ!?」

 像を避ける為に、急ブレーキする音が聞こえ、その瞬間に大量の砂埃が舞っていました。

「ケホッ、ケホッ」

「ん……?」

「……あ……!」

 咳き込んだ為に、その人に見つかってしまったのです。幼い頃からの人見知りと、中学の頃からの虐めにより、私は人と接するのが恐くなっていました。できれば今も見つからずに過ぎてほしいと、切に願っていました。

 砂埃が晴れてくると、その人の姿が確認できるようになりました。とても元気そうな印象で、特徴的なのは額に赤いハチマキを巻いていた事です。そして手には木刀を持っていました。私は過去の体験から、その木刀で暴力を振るわれるのではないかと、心臓が爆発するのではないかと思うほど、脈打っているのがわかりました。

「……ふむ。これ、お前のか?」

 赤いハチマキの人は、私の描いた像を軽く持ち上げました。

「……はっ……はい……」

 私の声はひどく上擦っていました。それ程の緊張が体に走っていたのです。

「ふぅん……可愛いゾウだな。でもちゃんと管理しとけよな。危うく踏んじゃうとこだったぜ?」

「は、はい……すみませんでした……」

「おう! ……さてヒロキの奴を追わないとな。今日はヒロキが弁当当番なのに逃げやがって。……それじゃあな!」

「は、はい!」

 赤いハチマキの人は、ヒロキという人を追って凄い速さで走っていきました。私はしばらく立ちつくしていましたが、体に走る緊張が取れませんでした。いえ、それどころか、ハチマキの人を見てから私の心臓は、うるさいぐらいに鼓動を刻んでいました。

「……響、ワタルさん、か」

 私はめずらしくクラスメイトに話しかけ、ハチマキの人の事を聞いた結果、その人の名前を知りました。

「織部さん、響先輩の事を狙ってるの?」

「えっ……そ、そんな事はない、です」

「うそうそ。織部さん、響先輩の名前を出してから顔が赤いよ? でも残念だよねぇ、無理だと思うよ。響先輩ってあんな性格してるから誤解されやすいけど、結構、学校人気ある方だからねぇ」

 その人の言葉に、少しの焦りの気持ちと、響ワタルさんが誉められて嬉しい感情があった。


 ――そして七月二十七日の事です。

 響ワタルさんは、学校の屋上でよく昼食を取るという事で、私は響ワタルさんを待っていました。像を避けてくれた事のお礼も言いたかったし、やっぱりもう一度会いたかったからです。それに夏休みが始まって、響ワタルさんも屋上へ来るのが不定期になっているらしいので、正直なところは会えるとは思っていませんでした。

 何もない屋上で待つのは退屈で、私はいつの間にかに眠りに落ちてしまっていました。次に目を覚ましたのは何分後かはわかりません。でもそう長くない時間だと思います。私は半ば日常になりつつある、像の絵を描き、それを具現化させて話し相手になってもらっていました。ある程度の話が終わっても来なかったら、帰ろうと思っていたからです。

 すると遥か後ろの方から、よく通った大きな声がしました。

「おーい、お前!」

「っ……!?」

 私は急に呼ばれた為、身を固くしました。本来は入ってはいけない屋上に、入ったのが先生に見つかってしまったのだと思いました。とりあえず逃げよう、と判断し、像の絵が描かれた紙を乱暴に掴み、出入り口に向かってできるだけ速く走りました。

「あ、おいっ!」

「ごめんなさいっ、勝手に入って、もうしませんからっ!」

 あと少しで出入り口に差し掛かるという所で、私は腕を捕まれてしまいました。

「別に何もしねぇよ。オレサマ達だって勝手にここ使ってるんだから」

「うぅ……!」

 腕を掴んだその人は、何かを言っていましたが、既にパニックになっている私には全く聞こえていませんでした。

「ほら、ワタル君ってやっぱりおっかないからねぇ」

「なんだと、かなっぺ!」

「ほらほら、そういう所とかね」

 男の人の声の他に聞こえた、女の人の声で、私は我にかえりました。何よりもその女の人が言った名前に反応したのでした。勇気を出して、私の腕を掴む人の顔を見てみました。

「えっ……響、ワタル……さん?」

「ん……?」

 私の腕を掴んでいたのは、響ワタルさんだったのです。私の中でそれまで体を支配していた恐怖が、消えていくのがわかりました。

「ごめんなさい!」

 気が付けば、腕が放されていて、私は流れ作業のように謝り、そして出入り口から階段を下りていました。ある程度下りた所で、私は息を切らせながら止まり、捕まれた腕を見ました。腕にはまだ響ワタルさんの暖かさが残っているような気がして、何故だか私の心まで、温かくなっていくような気さえしたのです。

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