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MAX HEART!  作者: ユウ
――リトルウォーズ開幕編!
1/58

赤いハチマキの男!

挿絵(By みてみん)

 ――MAX HEART(マックスハート)――

 それは全力の心。――全ての物事は全力でやればできぬ事など何もない。

 この物語の主人公「(ひびき )ワタル」の絶対に揺らぐ事のない一つの正義である。

 


 現代から少し、近未来のお話。

 世の中では「ちゃんばら」に注目が集まり、本格的なスポーツ格闘技として人々がプレイヤーとしての活動をするようになった。

 しかし世界に認知されるスポーツになったとはいえ、知名度は野球やサッカーに比べても、いまだに低いのが現状である。特に大人の目はまだ「ちゃんばら」というものを認めていない人が多く、いわゆるプロスポーツとしての活躍は皆無に等しい。

 そんな中、現在最もこのスポーツ格闘技に力を入れている年齢層がある。

 それは高校生であり、ちゃんばらスポーツは「高校ちゃんばら」として太陽の熱を発しているかの如くの熱さを出している。

 高校ちゃんばらは、野球の甲子園のような形で、「リトルウォーズ」という名の大会が設けられる。

 リトルウォーズ(子供達の戦争)と銘打たれた戦いは毎年夏の時期に、名プレイヤーを生み、幾多の名勝負を送り出してきた。いわばプレイヤー達にとっては真夏の登竜門。


 響ワタルは毎年のように、この大会を見てきた。

 子供の頃から戦いを見て、いつしか自分もこの舞台で戦いたいと願うようになる。

 いつしかワタルも高校生になり、リトルウォーズの参加資格を得られる。しかしワタルには参加したくても参加できない理由があった。

 それはリトルウォーズの登録における決まり事――参加はチームとし、最低三名と最大五名のメンバー構成でなければならない。

 この最低条件がクリアできずに高校生活三年目の夏を向かえてしまう。



 ――七月九日。

 気合いの入った赤いハチマキをした少年、響ワタルが二人の少年と戦っていた。

「良いかマサ、それにケン、オレサマに一本でも太刀を浴びせられたらマックスハートのメンバーにしてやるぜ!」

「よーし、いくぞー!」

 ワタル、それにマサとケンは木刀を持っている。まずはマサという少年がワタルに立ち向かっていく。

「いやあぁぁぁぁぁ!」

「おっせぇぞ、マサ!」

 勿論、マサという少年は剣術など習った事もない。我流といえば聞こえは良いが……つまりはめちゃくちゃである。

 マサの一太刀を、ワタルは軽くいなし、鋭い一撃をあたえる。

 当たっても良いようにマサの尻におもいっきり木刀をたたき込む。やや鈍い音がその攻撃の痛さを物語っている。

「ぐふっ、……いてぇ……」

 情けなく倒れ込んでしまうマサ。もう既に半べそをかいている。

「次はテメーだケン、容赦なくかかってきやがれぇ!」

「ひぃぃぃっ!」

 情けないマサに呆れた為か、ワタルはケンに声をかけた。

 だが既にケンはマサの姿を見て脅えて腰がひけてしまっていた。ワタルは深い溜息をついた。

「はぁ~……、おめーら、そんなんでリトルウォーズに優勝できっと思ってんのかっ!」

「い、いやー、実は参加できれば良いかなーって……」

「そ、そうそう……」

 マサとケンに対し鋭い眼光を放つワタル。マサとケンはその眼光に畏縮してしまう。

「ブワッッッカヤローォォォォォォ!!!」

『ひぃぃぃぃ……!!』

 ワタルは感情のままに言葉をはき出した。

 そのあまりの声の大きさに辺り一帯にワタルの言葉がやまびことなり響いた。

「そんな根性だから何もできねぇんだ、良いかテメーらマックスハートは全力の心だ!」

『ぜ、全力の心?』

 二人で脅え、二人で聞き返すマサとケン。

「そうだ、何事も全力の心を持って物事を成し遂げるっ、オレサマのたった一つにして揺らぐことのない正義だ!」

『……』

 燃え上がるワタルに対してマサとケンは呆然としている。

「つまりっ、全力の心を持って戦えばリトルウォーズ優勝も目じゃねぇぜ!」

「いや……そんな事言ったってさぁ~、なぁ?」

「だよな~」

 マサとケンはお互いに目配せしあう。それに対してワタルは二人の態度に顔をムッとさせる。

「なんだよ、言いたい事があるなら言えってんだコノヤロー!」

「ひぃぃぃぃぃぃ、言うから怒るなよぉぉ!」

「そ、そうだよ、ワタルはただでさえその気合いがおっかないんだからさ」

「良いからさっさと喋れっての!」

「怒るなよ?」

 いつ手が出てきてもいいようにマサとケンは二人揃って、自分の手で壁を作っている。

 マサはワタルに注意を促し喋り始める。

「だってリトルウォーズって言えば高校格闘技スポーツの中じゃ今の時代の激戦区になってるんだぜ?」

「それがどうした!」

「ワタルだって知ってるだろ、三年連続優勝をしている強豪チーム「絶対王者の松原( まつはら)」率いるT,O,テイカー、それに去年の「MVPプレイヤー二之宮小次郎(にのみやこじろう )」のいるライジングス、そしてあの「天才・三崎(みさき )」の率いるF(フォーチュン)エンゼル……優勝するにはこいつらと戦わなくちゃいけないんだぜ……」

「そうそう……それが一般人同然の俺らがあいつらと戦うなんて夢物語さ」

 マサが解説をし、その内容にケンが頷く。

「だったらそいつらを倒してオレサマ率いるマックスハートが今年の王者になってやるさ!」

『ははは……』

 二人の他人事ともとれる笑いに、ついにワタルも頭に血がのぼってしまった。

「……もういい、おめぇら帰れ!」

「はっ……え、でもチームは?」

「ここはマックスハート、全力の心で戦う奴の集まりなんだよっ、おめぇらみてぇな奴等はとっとと帰れっ、コノヤロー!!」

『ひぃぃぃぃ……じゃ、じゃあ俺達は帰りまーす!!』

 ワタルに一喝されたマサとケンは逃げるように走っていった。ワタルは一人その場に取り残された。


 大声を出したおかげか少しだけ落ち着きを取り戻す。

「……ふー……、わかっちゃいるよ……でもガキの頃から夢見た舞台なんだぜ」

 ワタルは幼い時からリトルウォーズの戦いを見ていた。それこそ何回も何回も。

 見るたびにワタルは次は優勝の舞台に自分が立ってやると常に夢を見続けたのである。

 リトルウォーズの大会参加資格は高校在籍である事。ワタルは今年は高校三年で最後のチャンスなのだ。

「……」

 ワタルは一人手に持った木刀を見る。今まで自分が見てきた戦いの光景がよみがえる。

 有名な試合どころか前座的な内容の試合でさえ奔放し、戦いを見てきた。

 過去の高校一年、二年の時にも参加をしようとしたが人数不足の為に断念させられた。リトルウォーズは最低三人の人数で構成されたチームが必要なのだ。

「マサとケンが駄目となると……どうすっかなー……もうアテがねぇや」

 すっかり意気消沈したワタルはその場をあとにした。


 ――七月十日。

 マサとケンをチームに入れ損ねてから翌日。

 一応は真面目に高校生をやっているワタルは、普通に登校し普通に授業を受け、普通に昼飯を食べた。

 そんな昼休みの学校の屋上での出来事である。

「兄貴、マサさんとケンさんをチームに入れられなかったんだね……」

「うーむ、残念といえば残念だがなっ、でもあいつら参加できればそれで良いなんてぬかしやがったんだぞ!」

「……気持ちはわかる気がするよ」

 ワタルの事を「兄貴」と呼ぶ、やや小柄な少年。

 彼は同じ学校の高校一年生の十六歳、ワタルの舎弟で名を「川崎ヒロキ」という。そしてマックスハートのメンバーである。

「ヒロキっ!!」

「なっ、なんだよ兄貴?」

「じゃあ何かっ、お前も参加できれば良いなんて口か!?」

「いや……そうは言わないけど……さ……」

 煮え切らない態度のヒロキに対して頭にきているワタル。

「僕は兄貴の弟分だ、戦いが恐いなんて言わないさ」

「じゃあ…なんだってんだよ?」

「つまりこういう事さ、僕は恐くないけど、やっぱり他の人にとっては恐いよ」

「戦いがか?」

「うん、それもあるけど痛い目をみるのが嫌なんだと思うよ、リトルウォーズって大怪我する人が大多数だし、過去の歴史で死人も何人か出たって…兄貴だって知ってる事だろ?」

 最もな話だった。

 誰だって大怪我や下手すると死んでしまう事に首をつっこみたくはない。

 自分でやるのは嫌だがそれを見るのは良い。エンターテインメントはこういうものなのだと思う。

「知ってはいるが……でももう期限が無いんだぜ、リトルウォーズ参加登録まであと一週間しかないんだ、一週間後の七月十七日までに最低三人集めて登録を済ませないと今年も出場できなくなっちまう……そうなったらオレサマは……」

「兄貴…」

 期限が迫り、焦りそして落ち込む兄貴分のワタルを見てヒロキはどうにかしたいと頭を働かせた。

 この二人のコンビは基本的にはこんな感じなのだ。

 気性の荒さと持ち前の運動神経で喧嘩などの揉め事はワタルが解決する。逆に頭を使ったり作戦を立てたりするのは弟分のヒロキが担当するのだ。

「そうだ、兄貴!」

「どうしたー、弟よー」

 相当、落ち込んでいるのか返事には気持ちが入っていなかった。

「そんな悠長な返事してる場合じゃないよっ、思い出したんだよ参加してくれそうな人!」

「……本当か!?」

 落ち込んでいたワタルの顔が一瞬で喜びの顔になる。

「まぁ入ってくれるかはわからないけどね」

「それでどんな奴なんだ?」

「僕の覚えが確かならその人は蹴り技格闘技の天才と呼ばれている人だよ」

「蹴り技の天才だと?」

「そうさ、そんな人が仲間になってくれれば間違いなく大きな戦力になるはずさ!」

「それにメンバーも三人で出場資格も得られる……か、よっくやったなヒロキ!」

 ワタルに誉められ照れ笑いを浮かべるヒロキ。

「それで、そいつはどこにいるんだ?」

「えっ!?」

「えっ……じゃないよ、どこにいるんだっての!」

「いや……ごめん、噂を知ってるぐらいでどこにいるかは知らないんだ」

「はぁぁぁぁ!?」

「ごめんっ、一日だけ待ってよ、絶対に調べてみせるから!」

 やっと掴みかけたチャンスを手放したくないのはヒロキも同じだった。なによりワタルの為になる事、今の彼はそれが喜びだったのだ。

「よしっ、任せるぜヒロキ!」

「任せてくれよ兄貴!」

 二人はハイタッチを交わす。


 そのまま昼休みが終わり、午後の気だるい授業も終わる。そして放課後。

「じゃあ兄貴、明日には情報を掴んでみせるからね!」

「あぁ、お前のやる事になんの不安もねぇ、全力で探してこい!」

 ワタルとヒロキはそのまま別れる。

 ヒロキは一晩かけて「蹴り技格闘技の天才」の事を調べたのだった。

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