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エピローグ3

「誰かと同じである必要はないわ。モーリスにはモーリスの、愛し方があるはずよ。瞬間的に燃え上がるような恋ではなくても、穏やかに積み重ねていく愛もあるわ。一緒に生きてきて良かったと、死ぬときに思えるような」


 私もそうでありたいと思い描く。モーリスがふっと息を吐くようにして笑った。


「そうだな。妹のように思っていた君が、すっかり人生の先輩だ。言葉に重みがあるよ。いまだから白状すると、私の初恋は亡くなられた王妃さまだった。エルドレッドさまの遊び相手として、頻繁にお城へ呼ばれていた頃に、療養中の王妃さまと幼い君に出会ってね。美しい女神が可愛い天使を抱いている光景に出会って、天啓を受けたようだった」


「母と私にお城で会ったの? 全く記憶にないわ」


「君は二歳くらいだったから、覚えていなくて当然だよ。私がエルドレッドさまより王妃さまと君に関心を持ったことに、エルドレッドさまがひどく気分を害されてね。玩具の剣でぶっ叩かれて、それがトラウマになったよ」


 モーリスは苦笑した。妹に構ったら許さないぞと叩かれながら脅されたトラウマで、私とは距離を取ろうと幼心に決めたそうだ。

 私の知らないところでそんなことがあったとは、つゆ知らず。


「あっ、おとうさーん! おとうさんだあ!」


 ご機嫌でブランコに揺られていたララが叫んだ。


「ブランコ、おりるー!」


 ブランコの揺れを止めて、ララに手を貸すモーリスに、近づいてきたウェズリーが挨拶をした。


「モーリス卿、ご無沙汰しておりました。お変わりないですね、遠目にもすぐに分かりました。またお会いできて嬉しいです。今日すぐに帰られるのでないなら、滞在中にどこかでゆっくり話したいです。ね、ジェラルディン。我が家にご招待する?」


「するー! きてー! ララのおうち、すてきよ」


 一番にララが答えた。


「ララのたからもの、みせてあげるの!」


「それは楽しみだなあ」


 とモーリスが応じた。


「明後日まで滞在予定です。明日は新魔法陣の常設展示を見学させていただこうかと」


「魔法研究所の常設展示ですね。明日は私も研究所にいますので、所内をご案内した後に、我が家へお連れする、というのは?」


「良いわね、モーリスの都合がそれで良ければ。ていうか二人とも畏まりすぎよ。もっとフランクにいきましょう。聞いてると緊張しちゃうわ」


「確かに。あまりに立派な大人になってるもんで、距離感が分からなくて」


 モーリスが笑った。


「昔が黒豹なら、今は百獣の王ライオンだ」


「えっ俺、そんなに太った?」


 ウェズリーが目を丸くした。


「全体的に大きくなったわ」


 モーリスと並んでも遜色ない。あれから更に背が伸びて、しっかりした筋肉がついた。研究の傍ら、身体が鈍らないようにと運動を欠かさない。

 少し癖のある黒髪は今日のためにきちりと整えられて、三つ揃えのスーツをバシッと着こなしている。普段はもっと緩くて、寝癖があったりするけど。


 モーリスと約束をして別れたあと、家族三人で帰路に着いた。パーティーの主役なのに、しれっと抜け出して帰るのがウェズリーだ。

 奇才なので多少変わり者なのは仕方ないと、周囲に認められている節はある。


「良いの?」と送迎馬車の中で尋ねると、ウェズリーは寝てしまったララを支えながら、「もちろん」と答えた。


「ジェラルディンが帰ってしまったあとのパーティーに居残ったって、ろくなことはないからね。ララの寝顔も見たいし」


 発明品の実績を上げて発表会で忙しくなった頃から、ウェズリーに近づいてくる女性が増えた。割り切った付き合いで構わないと申し出る女性もいるようだ。

 しかしウェズリーはそういう女性を毛嫌いし、一貫して塩対応だ。と魔法研究所の友達が教えてくれる。


「いつもありがとう。愛しているわ」


「こちらこそ。俺こそ愛しているよ」


 ウェズリーの手をそっと握った。私たちの手には今もあの日のブレスレットが輝いている。



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