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エピローグ2

「君とウェズリー、両方に似ているね。威勢が良くて可愛い子だ」


 幼児向けの低いブランコに座るララの背中を優しく押しながら、モーリスが言った。


「幸せそうで嬉しいよ。後悔はしているけどね。もっと強く君たちを引き留めていたら、ちゃんと支援していたらってね。特許の魔法陣以外にも、ウェズリーが発明した新魔法と魔法道具は多くある。私たちは本当に惜しいことをしたよ」


 苦笑するモーリスの言葉に、今までのことを振り返った。

 ウェズリーもサガミタに来てすぐに順風満帆だったわけではない。外国人だからと差別を受けたり、若くて生意気だと風当たりが強かった。

 ウェズリーは言動が直球でストレートゆえ、気に入られる人には気に入られるが、合わない人にはとことん嫌われる。幾度かの衝突を経て、最終的にはウェズリーの情熱と粘りが勝った。


「公爵家の皆様はお変わりない? 父が急逝し、若い兄が国王になって、周囲も大変だったわよね。私たちは私たちで、ここでの礎を築くのに必死だったから、その後のことに関知しなくて……兄やモニークは元気にしてるかしら?」


「我が家は皆変わりなく元気にしているよ、ありがとう。実はエルドレッドさまに打診されて、モニーク姫との結婚話が進んでいたんだが、事情があって破談してね。聖女クリスティアナさまと婚約したんだ」


「え!? モーリスが聖女さまと? 兄との婚約は破棄されたの?」


「ああ。実はクリスティアナ嬢が先代の国王陛下の命をお助けできなかったことで、彼女を非難する声が強まってね。直前に反逆者の嫌疑があったウェズリーを助けておいて、陛下を助けられなかったことが問題視されたんだ。ウェズリーの怪我は肩の刺し傷であったのに対して、陛下は首の頸動脈をスッパリと斬られて、首の皮一枚で繋がっていた状態だった。いくら聖女の治癒能力でも、首を繋ぎ直すなんて到底無理な話だったんだがね」


 そこまで話してから、モーリスははっとしたように謝った。


「申し訳ない、ご遺族に配慮のない話をしてしまった」


「いいえ、話してくれてありがとう。それで兄も周りの声に流されて、聖女さまとの婚約を破棄したのね。クリスティアナさまを守ることができる唯一の立場なのに。ひどい仕打ちだわ」


「いや、違うんだ。私も直接抗議したんだが、エルドレッドさまは、次の世代のことを考えられていた。聖女が非魔法使いの王と結婚するよりも、魔法使い同士で子をもうけたほうが国のためになる、と。両親が魔法使いであれば、確実に魔法使いの子どもが生まれるからね。国の未来を考えてのご決断だ」


 兄の決断に納得はいく。魔法使いの血は希少で崇拝対象だ。中でも希少な治癒魔法の使い手の聖女さまの血は特に。だからこそ、求心力が低下していた王家に取り込みたいと父は考えていたのだ。

 父は王族の保身を考え、兄は国のためを思い、父の意向をひるがえしたということか。


「じゃあ、それで丸く収まったのなら、いいんじゃない。クリスティアナさまとのご婚約おめでとう。兄よりお似合いだと思うわ」


 祝福を述べても浮かない表情のモーリスに、


「モーリスは不服なのね?」


 と尋ねた。遠方の小国でなら本音も言えよう。


「私は、ただ聖女さまがお気の毒で。将来は王妃になるものだと教え込まれて育ち、エルドレッドさまとの親交も深めていらしたのに、一方的に婚約破棄されて。公爵家に嫁ぐなど本意ではないだろうに。大浮かれしているのは、うちの母と姉だけだよ」


「モーリスはクリスティアナさまをどう思うの? その辺りの事情は置いといて、恋愛としての話よ?」


「恋愛か……そうだな、君とウェズリーのあの大立ち回りを見たときに思ったよ。私はそこまで恋愛にのめり込むことはないだろうなと。一緒に死んでもいいと思えるほど、切実に誰かを愛することはないよ。冷めた人間さ」


 自嘲的な笑みを浮かべるモーリスには、疲れの色が見える。

 一目でララを虜にするほど麗しいが、眩しくて直視できなかったような強い輝きが薄れている。良く言えば、目に優しくなった。

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