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号外

 朝食を終えると、「ちょっと外の様子を見てくる」とウェズリーが言った。


「昨日の大騒動があって、町の様子が変わっているのか、いないのか、ざっと見てくるよ」


「大丈夫?」


「気を付けるよ。すぐに戻る」


 帽子を被り、ストールをぐるぐる巻いて顔を半分隠したウェズリーが言った。見るからに怪しいが、歓楽街では見るからに怪しい人が大半なので目立たないだろう。


 出て行ったウェズリーは、十五分ほどで戻ってきた。


「お帰りなさい。どうだった?」


「閑散としてて、静かなもんだった。歓楽街が賑わうのはやっぱり夜だね。でも収穫はあったよ」


 ウェズリーがポケットから取り出したのは、くしゃくしゃに皺がついた、新聞紙だった。丸めて捨ててあったのを拾って、小さく畳み直したようだ。

 それを広げて見せてくれた。


『エリオット・イーモン・マクスウエル国王陛下 ご逝去』


『聖女クリスティアナ嬢の祈り虚しく』


『暗殺実行犯の近衛兵は現場で自害』


 緊迫した文字が大きく並んでいる。目をみはった。詳細を目で追う。王太子である兄が、順当に国王の座につくと書いている。


「民間の新聞社の号外だ。国が正式に公表したものじゃないけど、昨日の大聖堂前広場には記者も多く集まっていたようだから、信憑性はあると思う」


 ウェズリーが言った。

 確かに、あの場には多くの目撃者が存在した。英雄としての威光を見せつけるために、父が大勢の観客を呼び集めていたからだ。

 本来、都合の悪いことは隠蔽して、体裁を整えてから公表する王家だが、この情報の流失は止めようがなかったのだろう。


 第二の魔王を討ち取った英雄王、という見出しが華々しく新聞を飾るはずが、皮肉なものだ。


「…………亡くなったのね」


 きっと命に別状はないと思っていたため、動揺は大きかった。

 ウェズリーがそっと私の肩を抱いた。

 そして十分な間を置いてから口を開いた。


「暗殺実行犯の近衛兵って書いてあるから、糸を引いた黒幕がいると思われている。反勢力の存在は国王陛下も口にしていたし」


「そうね。その反勢力と結託していると、ウェズリーに言いがかりをつけていたわ」


「改めて俺たちに疑いがかかるかもしれないな。黒幕とまでは言わなくても、一枚噛んでいてもおかしくはないと。早めに王都を離れたほうが無難だ。もしサガミタ王国への亡命が叶わなかったとしても、モーリス卿には頼らないほうがいい。なるべく早く王都を離れて、自力で遠くへ行こう」


 そうね、と頷いた。公爵家に迷惑をかけてはいけない。それに、ドランスフィールド公が全く無関係ではないかもしれないのだ。

 父は公爵を裏切り者呼ばわりしていた。もし公爵が謀反に関わっていたとしたら、なおさら関わり合いになるわけにはいかない。


 いざとなったら自力で王都を離れる、というウェズリーの考えに同意した。

 どこか遠くの田舎町で仕事を探してもいいし、人里離れた奥地で自給自足の生活をしてもいい。

 そういう物語を読んだことがある。あらぬ疑いをかけられて婚約破棄された貴族令嬢が、追放先の田舎生活を満喫するお話だ。


 実際はそう簡単なことではないだろうが、ウェズリーと一緒なら、何でもできる気がする。



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